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第二章:領主二年目第一部
町の拡張(三):イチャイチャ
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「エルマー様、私とも初めて会った時と同じようにイチャイチャしましょう」
「ごめん、言っちゃった。嬉しかったから」
「謝る必要はないだろう。言っていけない訳でもないしな」
城に帰るとさっそくエルザにそんなことを言われた。堀の作業の休憩中に、カレンと以前のことを思い出しながら抱きしめたりキスをしたり、そのようなことはした。そうやらそれをエルザが聞いたようだ。
ちなみに妊婦が相手だからそれ以上はしていない。人によっては妊婦が相手でないと興奮しないという趣味を持つ男もいるようだが、生憎と俺はそのような趣味は持ち合わせていない。他人にどう思われようが、俺は真っ当な性癖を持っているとはっきりと言える。
「しかし、イチャイチャと言ってもなあ」
「はい。イチャイチャです」
「私もしたいですっ」
「アルマもか」
エルザと初めて会ったときは、特に何もなかった。あれは俺が軍学校に入るために王都に来た時のことだった。父から「これが屋敷の管理を頼んでいるエルザだ。お前と同い年だそうだ。仲良くしてやれ」と紹介されただけだ。それからは雇う者と雇われる者という立場だったが、同い年ならお互いに気を遣うこともほとんどなかったと思う。
何かがあったとすれば、軍学校に入ってから半年くらい経って年明けだったか。毒を盛られることが多かった時期が過ぎて気を緩めた頃に、エルザに媚薬を盛られた。それで初めて彼女を抱き、それからはひどかったな。まだ若いのに、いや若かったからかもしれないが、あの頃は屋敷にいる時はほぼ盛っていた。
あれだけ毎日していたのに全く子供ができる気配がなかった。もちろん俺にだって責任感はあって、もし子供ができればエルザを連れて帰ろうと思っていた。さが幸いと呼ぶべきか残念と呼ぶべきか、そのようなことは起きなかった。
当時は子供ができないと思っただけだったが、そもそも体が悪いと想像したことなど一度もなかった。今はクラースの薬のお陰で無事に子供もできたが、もっと自分や周りのことを見なければいけなかったんだろう。
若いうちは、自分一人で何でもできると思いがちだが、今考えれば俺一人ができたことなんてほとんどなかった。日々の生活にしてもエルザに頼りっきりだったし、毒物の件でもカサンドラ頼みだった。
その状態が二年ほど続き、軍学校を卒業する時期が近付いた時にアルマが孤児院に来た。話をしたついでに手を乗せやすい位置に頭があったのでつい撫でてしまったが、あれが最初だったな。
「よし、アルマ。頭を出せ」
「はいっ」
あの時と同じようにアルマの頭を撫でる。あれからはずいぶん背も伸びた。俺も伸びたから位置的には変わらないかもしれないが。うむ、サラサラの髪が心地いい。
「エルマー様、私もお願いします」
エルザが頭を突き出したので撫でる。カレンが無言で近づいてきたので撫でる。頭を撫でるくらいならいつでもするが、残念ながら俺には手は二本しかない。三人横一列に並ばれても困る。
まあ平和な夜だ。このような穏やかな夜がずっと続いてくれたら——
「胸でもお尻でも好きなようにどうぞ~」
「服の上からでも直にでも、お好きにそうぞ~」
「お前ら、どこにでも来るなあ」
三人の頭を順番に撫でていたらカリンナとコリンナがしれっと混ざっていた。
「何となくそんな気がしましたので~」
「色々と敏感で~す」
「それなら空気を読んで入らないという選択はなかったのか?」
「ありませ~ん。私たちは入りはしませんが、私たちに入れることは可能です~」
「入れるのはここですね~」
そう言ってスカートを捲くり上げる。聞いているだけで頭が痛くなる。
「二人ともスカートを——」
コンコン
[失礼します。エルマー様、ここにカリンナとコリンナはいませんか?」
「いるぞ」
「目を離した瞬間に見失ってしまいまして。二人とも、料理の勉強の最中ですよ」
「「はい」」
アンゲリカから逃げてきたのか。
「二人とも、アンゲリカから逃げずに真面目にしていたら、明日の夕方にでも頭を撫でてやろう。だからそれまで真面目に仕事と勉強をするように」
「「はいっ」」
「では旦那様、奥様方、失礼いたします。はい、二人とも、行きますよ」
二人はアンゲリカに首根っこを掴まれて連れて行かれた。
賑やかな二人だから場の空気を変えるには丁度いいだろうが、それも時と場合による。そして本当にどこにでもやって来る。かつて心配していたように寝室に飛び込んで来たことはこれまで一度もなかったし、王都にいきなり現れたこともなかったが、そのうち王都でばったり会っても驚かなくなりそうな気がする自分がいる。
三人を見送ってからふと横を見ると、エルザが俺を気遣わしげに見ていた。
「どうかしたか?」
「いえ、あのような約束をしても大丈夫だったのかどうかと思いまして」
「それで真面目に働くなら問題ないだろう」
「いえ、それで味を占めて、働く前にかならず撫でる約束を取り付けにやって来ますよ」
「そうなると思うわ」
「間違いないですねっ」
「……」
明日は明日だ。
「ごめん、言っちゃった。嬉しかったから」
「謝る必要はないだろう。言っていけない訳でもないしな」
城に帰るとさっそくエルザにそんなことを言われた。堀の作業の休憩中に、カレンと以前のことを思い出しながら抱きしめたりキスをしたり、そのようなことはした。そうやらそれをエルザが聞いたようだ。
ちなみに妊婦が相手だからそれ以上はしていない。人によっては妊婦が相手でないと興奮しないという趣味を持つ男もいるようだが、生憎と俺はそのような趣味は持ち合わせていない。他人にどう思われようが、俺は真っ当な性癖を持っているとはっきりと言える。
「しかし、イチャイチャと言ってもなあ」
「はい。イチャイチャです」
「私もしたいですっ」
「アルマもか」
エルザと初めて会ったときは、特に何もなかった。あれは俺が軍学校に入るために王都に来た時のことだった。父から「これが屋敷の管理を頼んでいるエルザだ。お前と同い年だそうだ。仲良くしてやれ」と紹介されただけだ。それからは雇う者と雇われる者という立場だったが、同い年ならお互いに気を遣うこともほとんどなかったと思う。
何かがあったとすれば、軍学校に入ってから半年くらい経って年明けだったか。毒を盛られることが多かった時期が過ぎて気を緩めた頃に、エルザに媚薬を盛られた。それで初めて彼女を抱き、それからはひどかったな。まだ若いのに、いや若かったからかもしれないが、あの頃は屋敷にいる時はほぼ盛っていた。
あれだけ毎日していたのに全く子供ができる気配がなかった。もちろん俺にだって責任感はあって、もし子供ができればエルザを連れて帰ろうと思っていた。さが幸いと呼ぶべきか残念と呼ぶべきか、そのようなことは起きなかった。
当時は子供ができないと思っただけだったが、そもそも体が悪いと想像したことなど一度もなかった。今はクラースの薬のお陰で無事に子供もできたが、もっと自分や周りのことを見なければいけなかったんだろう。
若いうちは、自分一人で何でもできると思いがちだが、今考えれば俺一人ができたことなんてほとんどなかった。日々の生活にしてもエルザに頼りっきりだったし、毒物の件でもカサンドラ頼みだった。
その状態が二年ほど続き、軍学校を卒業する時期が近付いた時にアルマが孤児院に来た。話をしたついでに手を乗せやすい位置に頭があったのでつい撫でてしまったが、あれが最初だったな。
「よし、アルマ。頭を出せ」
「はいっ」
あの時と同じようにアルマの頭を撫でる。あれからはずいぶん背も伸びた。俺も伸びたから位置的には変わらないかもしれないが。うむ、サラサラの髪が心地いい。
「エルマー様、私もお願いします」
エルザが頭を突き出したので撫でる。カレンが無言で近づいてきたので撫でる。頭を撫でるくらいならいつでもするが、残念ながら俺には手は二本しかない。三人横一列に並ばれても困る。
まあ平和な夜だ。このような穏やかな夜がずっと続いてくれたら——
「胸でもお尻でも好きなようにどうぞ~」
「服の上からでも直にでも、お好きにそうぞ~」
「お前ら、どこにでも来るなあ」
三人の頭を順番に撫でていたらカリンナとコリンナがしれっと混ざっていた。
「何となくそんな気がしましたので~」
「色々と敏感で~す」
「それなら空気を読んで入らないという選択はなかったのか?」
「ありませ~ん。私たちは入りはしませんが、私たちに入れることは可能です~」
「入れるのはここですね~」
そう言ってスカートを捲くり上げる。聞いているだけで頭が痛くなる。
「二人ともスカートを——」
コンコン
[失礼します。エルマー様、ここにカリンナとコリンナはいませんか?」
「いるぞ」
「目を離した瞬間に見失ってしまいまして。二人とも、料理の勉強の最中ですよ」
「「はい」」
アンゲリカから逃げてきたのか。
「二人とも、アンゲリカから逃げずに真面目にしていたら、明日の夕方にでも頭を撫でてやろう。だからそれまで真面目に仕事と勉強をするように」
「「はいっ」」
「では旦那様、奥様方、失礼いたします。はい、二人とも、行きますよ」
二人はアンゲリカに首根っこを掴まれて連れて行かれた。
賑やかな二人だから場の空気を変えるには丁度いいだろうが、それも時と場合による。そして本当にどこにでもやって来る。かつて心配していたように寝室に飛び込んで来たことはこれまで一度もなかったし、王都にいきなり現れたこともなかったが、そのうち王都でばったり会っても驚かなくなりそうな気がする自分がいる。
三人を見送ってからふと横を見ると、エルザが俺を気遣わしげに見ていた。
「どうかしたか?」
「いえ、あのような約束をしても大丈夫だったのかどうかと思いまして」
「それで真面目に働くなら問題ないだろう」
「いえ、それで味を占めて、働く前にかならず撫でる約束を取り付けにやって来ますよ」
「そうなると思うわ」
「間違いないですねっ」
「……」
明日は明日だ。
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