236 / 345
第三章:領主二年目第二部
日常とスパイス(二)
しおりを挟む
「ジョゼ、あなたも今年で一五歳です。花も恥じらう乙女どころか、少々行き遅れです。結婚するしないはあなたに任せますが、この先はどうするのですか? 一生乙女のままですか? 母に言ってみなさい」
「あまり乙女乙女と言われるのも恥ずかしいのですが。私はレティシア殿下の護衛騎士になります」
「騎士を目指すのは構いませんが、その美しい肌に傷が付くこともあります。命を落とす危険もあります。それでもいいのですか?」
「そうならないためには自分を鍛えるだけです」
私は母上の目を見てはっきりとそう言いました。レティシア殿下よりも数か月ほど早く生まれ、恐れ多いことながら姉妹のように育ちました。そう、この『百合と薔薇の玉虫色』の世界では。
百合ではなく、かと言って薔薇でもありません。男女の役割が交代した逆転異世界でもなく、近世中期から後期のヨーロッパを舞台としている剣と魔法の世界。アドベンチャーなのかRPGなのかよく分からないシステムです。内容もジャンルも、タイトルの通りどっち付かずで中途半端な感じは拭いきれませんが、それでも没入感の高さはなかなかのものだと思います。
昨年発売された最新型の据え置き型VR端末によるフルダイブ型ゲーム。会話のみで物語が進行しますので、選択肢が文字として表示されるわけではありません。聞き逃せばそれで終わりです。さらに何があっても死ぬことはないものの、痛みがそのままダイレクトに伝わり、あまりの痛みに漏らす人も多いという超不親切設計。普通は痛覚に対してリミッターが働くはずですが、リアリティを追求するのだとか。そのリアリティが不評の原因ではありますが、私にとってはそれこそが大切なのです。
現実世界に戻ってしまえば、いずれは結婚させられることは決まっています。それであれば、せめてゲームの中でくらいは結婚せずに、レティシア殿下の側で好きなように過ごしたい、その思いでこれまでプレーしてきました。ちなみに私は百合ではありません。あくまで殿下に敬意を払っているだけです。本当ですよ?
下級貴族の娘であるジョゼフィーヌとして生まれ、一五歳でレティシア殿下の護衛騎士となり、一九歳で初陣を迎えます。あと四年ほどです。
初陣では戦場でうっかり捕まってしまいます。ですが戦場で知り合った敵の指揮官の一人に求婚され、彼の力を借りてゴール王国に戻るという支離滅裂さもコアなファンに受けています。
どうして私が内容を知っているかと言えば、これが二週目だからです。すでに一度エンディングを迎えています。二度目は一度目のプレイをなぞっています。分岐点が多いために細かな点は少しずつ変わりますが、大まかな流れは頭に入っていますので問題はありません。攻略サイトも端から端まで見て内容を覚えました。何も恐れることはありません。
すでに知っている話を繰り返して楽しいのかと思われるかもしれませんが、それがいいのです。楽しい漫画は何度読み返してもいいのです。幸せな終わりを繰り返すことこそが、現実のつらい未来を忘れるための手段なのです。
◆ ◆ ◆
一九歳になった私は後詰めの隊長としてこの戦争に参加していました。会議が終わって本陣から自分の部隊に向かって移動し始めると、後ろでドンという大きな音がした気がしました。「気がした」と言うのは、目が覚めた時には上を向いて寝かされていたからです。これは一週目にはなかった展開です。これまで多少は違うイベントもありましたが、ここまで大きな違いは初めてですね。
それからかなり髪が白くなった指揮官らしい人が私の尋問に訪れました。訪れたのはいいのですが、「何を言っているのだろう?」とでも言いたげな顔をしてテントを出てきました。
しばらくすると燃えるような髪の男性が現れました。あ、この人は確か若手指揮官の一人ですね。この人が私に惚れ込んで、手に手を取ってここから逃げ出すわけです。
「私は騎士だが姫騎士ではない。例えオークに汚されようが口は割らんぞ」
私がこう言うと、「おお、何と高潔な魂の持ち主だ。ぜひ私の妻に」と言われるは——
「一つ聞くが、死にたいのか?」
あれ? 首に抜き身の剣を当てられました。やはり展開が違いますね。二週目は違うのでしょうか。剣からひんやりとした冷気が伝わります。
「え? あれ? い、いや、できれば……死にたくはないです……」
「なら質問に答えろ。本陣は一人残らず黒焦げになったから詳しい話を聞ける相手がいなくてな」
「黒焦げ……ですか?」
「大きな音がしなかったか? まだ肉の焦げた嫌な臭いが残っているだろう」
あれ? 黒焦げって……あの黒焦げ? 炭のようになるあれですか? 確かに目が覚めた時に焦げ臭く感じましたが、黒焦げ? あまりにも展開が違いすぎます。どうして?
ん? あれ? 頭に浮かんだこの映像は……
——‼‼
そう、そうです、誰かに言われた気がします。あなたはこのままエンディングを迎えた直後に興奮しすぎて死んでしまいましたと。そして『百合と薔薇の玉虫色』とよく似た世界に生まれ変わりますよと。いずれ完全に記憶が戻りますよと。
え? 生まれ変わっていたのですか? ここはゲームの中ではなく? でもレティシア殿下もいらっしゃいます。父上も母上も同じです。まさか今になって完全に思い出したのですか? どうしてこのタイミングで⁉ 首に剣が当たっているのですが‼‼
それに、あの部屋はどうなったのですか? 死んだってことは、警察が入りましたよね? 両親も絶対に入りましたよね? キワドイ衣装とか下着とか、年齢制限の付いたゲームやアニメや漫画とか、全部見られました? それに万が一漏らしても大丈夫なように、いつもプレイ中はタオルを敷いてオムツ姿で……
イヤーーーーーーーー‼‼‼
「あまり乙女乙女と言われるのも恥ずかしいのですが。私はレティシア殿下の護衛騎士になります」
「騎士を目指すのは構いませんが、その美しい肌に傷が付くこともあります。命を落とす危険もあります。それでもいいのですか?」
「そうならないためには自分を鍛えるだけです」
私は母上の目を見てはっきりとそう言いました。レティシア殿下よりも数か月ほど早く生まれ、恐れ多いことながら姉妹のように育ちました。そう、この『百合と薔薇の玉虫色』の世界では。
百合ではなく、かと言って薔薇でもありません。男女の役割が交代した逆転異世界でもなく、近世中期から後期のヨーロッパを舞台としている剣と魔法の世界。アドベンチャーなのかRPGなのかよく分からないシステムです。内容もジャンルも、タイトルの通りどっち付かずで中途半端な感じは拭いきれませんが、それでも没入感の高さはなかなかのものだと思います。
昨年発売された最新型の据え置き型VR端末によるフルダイブ型ゲーム。会話のみで物語が進行しますので、選択肢が文字として表示されるわけではありません。聞き逃せばそれで終わりです。さらに何があっても死ぬことはないものの、痛みがそのままダイレクトに伝わり、あまりの痛みに漏らす人も多いという超不親切設計。普通は痛覚に対してリミッターが働くはずですが、リアリティを追求するのだとか。そのリアリティが不評の原因ではありますが、私にとってはそれこそが大切なのです。
現実世界に戻ってしまえば、いずれは結婚させられることは決まっています。それであれば、せめてゲームの中でくらいは結婚せずに、レティシア殿下の側で好きなように過ごしたい、その思いでこれまでプレーしてきました。ちなみに私は百合ではありません。あくまで殿下に敬意を払っているだけです。本当ですよ?
下級貴族の娘であるジョゼフィーヌとして生まれ、一五歳でレティシア殿下の護衛騎士となり、一九歳で初陣を迎えます。あと四年ほどです。
初陣では戦場でうっかり捕まってしまいます。ですが戦場で知り合った敵の指揮官の一人に求婚され、彼の力を借りてゴール王国に戻るという支離滅裂さもコアなファンに受けています。
どうして私が内容を知っているかと言えば、これが二週目だからです。すでに一度エンディングを迎えています。二度目は一度目のプレイをなぞっています。分岐点が多いために細かな点は少しずつ変わりますが、大まかな流れは頭に入っていますので問題はありません。攻略サイトも端から端まで見て内容を覚えました。何も恐れることはありません。
すでに知っている話を繰り返して楽しいのかと思われるかもしれませんが、それがいいのです。楽しい漫画は何度読み返してもいいのです。幸せな終わりを繰り返すことこそが、現実のつらい未来を忘れるための手段なのです。
◆ ◆ ◆
一九歳になった私は後詰めの隊長としてこの戦争に参加していました。会議が終わって本陣から自分の部隊に向かって移動し始めると、後ろでドンという大きな音がした気がしました。「気がした」と言うのは、目が覚めた時には上を向いて寝かされていたからです。これは一週目にはなかった展開です。これまで多少は違うイベントもありましたが、ここまで大きな違いは初めてですね。
それからかなり髪が白くなった指揮官らしい人が私の尋問に訪れました。訪れたのはいいのですが、「何を言っているのだろう?」とでも言いたげな顔をしてテントを出てきました。
しばらくすると燃えるような髪の男性が現れました。あ、この人は確か若手指揮官の一人ですね。この人が私に惚れ込んで、手に手を取ってここから逃げ出すわけです。
「私は騎士だが姫騎士ではない。例えオークに汚されようが口は割らんぞ」
私がこう言うと、「おお、何と高潔な魂の持ち主だ。ぜひ私の妻に」と言われるは——
「一つ聞くが、死にたいのか?」
あれ? 首に抜き身の剣を当てられました。やはり展開が違いますね。二週目は違うのでしょうか。剣からひんやりとした冷気が伝わります。
「え? あれ? い、いや、できれば……死にたくはないです……」
「なら質問に答えろ。本陣は一人残らず黒焦げになったから詳しい話を聞ける相手がいなくてな」
「黒焦げ……ですか?」
「大きな音がしなかったか? まだ肉の焦げた嫌な臭いが残っているだろう」
あれ? 黒焦げって……あの黒焦げ? 炭のようになるあれですか? 確かに目が覚めた時に焦げ臭く感じましたが、黒焦げ? あまりにも展開が違いすぎます。どうして?
ん? あれ? 頭に浮かんだこの映像は……
——‼‼
そう、そうです、誰かに言われた気がします。あなたはこのままエンディングを迎えた直後に興奮しすぎて死んでしまいましたと。そして『百合と薔薇の玉虫色』とよく似た世界に生まれ変わりますよと。いずれ完全に記憶が戻りますよと。
え? 生まれ変わっていたのですか? ここはゲームの中ではなく? でもレティシア殿下もいらっしゃいます。父上も母上も同じです。まさか今になって完全に思い出したのですか? どうしてこのタイミングで⁉ 首に剣が当たっているのですが‼‼
それに、あの部屋はどうなったのですか? 死んだってことは、警察が入りましたよね? 両親も絶対に入りましたよね? キワドイ衣装とか下着とか、年齢制限の付いたゲームやアニメや漫画とか、全部見られました? それに万が一漏らしても大丈夫なように、いつもプレイ中はタオルを敷いてオムツ姿で……
イヤーーーーーーーー‼‼‼
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
小さなわたしたちが1000倍サイズの超巨大エルフ少女たちから世界を取り返すまでのお話
穂鈴 えい
ファンタジー
この世界に住んでいる大多数の一般人たちは、身長1400メートルを超える山のように巨大な、少数のエルフたちのために働かされている。吐息だけでわたしたち一般市民をまとめて倒せてしまえるエルフたちに抵抗する術もなく、ただひたすらに彼女たちのために労働を続ける生活を強いられているのだ。
一般市民であるわたしは日中は重たい穀物を運び、エルフたちの食料を調達しなければならない。そして、日が暮れてからはわたしたちのことを管理している身長30メートルを越える巨大メイドの身の回りの世話をしなければならない。
そんな過酷な日々を続ける中で、マイペースな銀髪美少女のパメラに出会う。彼女は花園の手入れを担当していたのだが、そこの管理者のエフィという巨大な少女が怖くて命懸けでわたしのいる区域に逃げてきたらしい。毎日のように30倍サイズの巨大少女のエフィから踏みつけられたり、舐められたりしてすっかり弱り切っていたのだった。
再びエフィに連れ去られたパメラを助けるために成り行きでエルフたちを倒すため旅に出ることになった。当然1000倍サイズのエルフを倒すどころか、30倍サイズの管理者メイドのことすらまともに倒せず、今の労働場所から逃げ出すのも困難だった。挙句、抜け出そうとしたことがバレて、管理者メイドにあっさり吊るされてしまったのだった。
しかし、そんなわたしを助けてくれたのが、この世界で2番目に優秀な魔女のクラリッサだった。クラリッサは、この世界で一番優秀な魔女で、わたしの姉であるステラを探していて、ついでにわたしのことを助けてくれたのだった。一緒に旅をしていく仲間としてとんでもなく心強い仲間を得られたと思ったのだけれど、そんな彼女でも1000倍サイズのエルフと相対すると、圧倒的な力を感じさせられてしまうことに。
それでもわたしたちは、勝ち目のない戦いをするためにエルフたちの住む屋敷へと向かわなければならないのだった。そうして旅をしていく中で、エルフ達がこの世界を統治するようになった理由や、わたしやパメラの本当の力が明らかになっていき……。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる