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第二章:領主二年目第一部
区画整理(二):仕事の相談
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「ブルーノ、町作りの話をしたいが、今いいか?」
「いいよ。どの部分?」
「ここじゃなくて王都の貧民街だ。うちの屋敷の近くにある」
役場にブルーノとライナーがいたから貧民街の整理の仕事について話をする。一度建物を壊し、そこに新しく建物を用意する。建てるのは問題ないとして、どのような建物にするか。
「家族がいる人がどれだけいるのか分からないけど、家族用と独身用とを分けるだけで大丈夫だと思うよ。生活時間帯も違うだろうからね。家族を持てば昼間働いて夜は家にいることが多いだろうし、独身なら夜中に働くこともあるだろうし」
「それなら家族用は独立した家、独身用は寮のような形か」
「いや、無理に家や寮のような形にする必要はないと思うよ。多分それは無茶だと俺は思う」
ブルーノ曰く、家族用に個別の家を用意すると場所の問題がある。それなら玄関は別にした長屋か、あるいは長屋を上下に積んでもいいと。建物の中ではなく、外に階段を付ければいいだけだと。
そして単身者は掃除などを持ち回りで自分たちにさせようと思っていたが、おそらく適当になってごみが溢れる可能性があると言われた。それなら最初から自分の部屋だけ自分で管理するようにしたらいいと。
俺は寮のように、その建物で暮らす者たちが共同で管理するかたちはどうかと思った。だがそれは上手くいっている時はいいが、一度崩れ始めると収拾がつかなくなるそうだ。つまり不真面目な者は真面目な者に押しつけ、真面目な者が全員分の掃除をすることになると。
「寮でもそういうことがあったらしいから」
「そうだなあ。そういうことが起こりえるならブルーノの案がいいだろう。家族用も独身用も、広さだけ違って他は同じ。上の階には外に取り付けた階段で移動する。これでいいか?」
「今のところはそれが一番いいと思うよ。たしかに個人個人に任せたい気持ちは分かるけど、どこまでできるか分からないからね。この町の住民はみんな真面目だから勘違いしやすいけど、普通はここまでじゃない」
そこで暮らす者たちがみんな真面目だとは限らないからな。
「麦なら文字通り余っていますから、それを使えばパンに関してはほぼ無料で大丈夫でしょう。肉なども捌いた時の切れ端などはかなり出ますので、それを使えばいいでしょう。野菜の育ちもおかしいくらい速いですから、いくらでも使えると思います」
食事に関してはライナーが案を出してくれた。
「そうは言っても、麦も野菜も基本的にはこの町の住民のために育てられている。全部を無償にはできないだろう」
「そこは炊き出しの代わりでいいと思います。形としては教会が人を派遣して食事を作っていることにすれば辻褄は合うでしょう」
俺が教会に金を渡し、教会がその金で人を雇って炊き出しをすると。それが教会の敷地で行うのではなく、その区画に作られた店でするだけ。回りくどいが、形としてはそれでいいか。
「確かに、それなら説明はできるか」
その人をどう雇うかだが……やっぱり親父さんところか? あそこばかりになってしまうが、確実に仕事をしてくれるからな。
「一つ気になっているのは、安く食事ができる場所があると分かれば、他の場所から人がやって来ないか?」
「人が来れば貧民街じゃなくなると思う。外から誰も来なければ人が動かないけどね」
「なるほど」
なるほど、少し考え方を変えるか。俺は貧民街の整理と考えていたが、王都の中に規模の小さい集落を一つ作ると考えた方がいいのか。
「それなら……もはや貧民街と考えるのはやめるか」
「人が流れるようになれば貧民街じゃなくなるから、それでいいと思う」
「僕もそう思います。かなり安く暮らせる新しい街区を作るという考えでいいでしょう」
「分かった。周辺の地図、と言ってもかなり昔の図面らしいが、それは用意してもらえる。それを元にして新しく図面を引いてくれ」
「了解了解」
◆ ◆ ◆
「分かりました。作業員を集めましょう」
「頼む」
やはりゲルトの親父さんの店で人集めを頼むことになった。ここが貧民街に一番近いから便利ではある。
「しかし、立ち退きをさせることになりますと、反発はありませんかな?」
「多少はあるだろうな。だからまず戻れることを前提に説明する」
形としては、まず孤児院の跡地にしばらく住むための仮の住居を用意する。次に一区画の人を仮住居に移したら、そこを更地にして新しい建物を建て始める。建て終わったら孤児院から人を移す。それを繰り返す。
今はそのためにブルーノが図面を引いている。適当に建物を潰して建て直しても、ごちゃごちゃしたのが改善されなければ意味がないからだ。むしろ貧民街ができる以前よりも綺麗な町並みにしたいと思っている。
本来なら都市計画を担当する大臣や役人がいるはずだが、例の件で人が足りない。必要なところに人を移したので足りなくなった。だから王都内の都市計画は一時凍結中と言ってもいい。おれはこの貧民街に詳しいかということで話を貰っただけだ。
だが貧民街の住人たちは役人を嫌っている。役人は自分たちに何もしてくれないと思っているからだ。それに関しては住人たち自身のせいである部分も多少はあるが、彼らがこの王都で一番立場が弱いことには変わらない。
「役人が来れば嫌がるだろうが、俺ならそれほど嫌がられないだろう。ゲルトさんも説明の時に一緒に来てくれると嬉しい。さらに話がしやすいはずだ」
「もちろん同行しましょう。あの場所があのままでいいとは思えませんからな。ですがワシには何もできないもどかしさもありました。あの場所が生まれ変わるならそれがいいでしょう」
「いいよ。どの部分?」
「ここじゃなくて王都の貧民街だ。うちの屋敷の近くにある」
役場にブルーノとライナーがいたから貧民街の整理の仕事について話をする。一度建物を壊し、そこに新しく建物を用意する。建てるのは問題ないとして、どのような建物にするか。
「家族がいる人がどれだけいるのか分からないけど、家族用と独身用とを分けるだけで大丈夫だと思うよ。生活時間帯も違うだろうからね。家族を持てば昼間働いて夜は家にいることが多いだろうし、独身なら夜中に働くこともあるだろうし」
「それなら家族用は独立した家、独身用は寮のような形か」
「いや、無理に家や寮のような形にする必要はないと思うよ。多分それは無茶だと俺は思う」
ブルーノ曰く、家族用に個別の家を用意すると場所の問題がある。それなら玄関は別にした長屋か、あるいは長屋を上下に積んでもいいと。建物の中ではなく、外に階段を付ければいいだけだと。
そして単身者は掃除などを持ち回りで自分たちにさせようと思っていたが、おそらく適当になってごみが溢れる可能性があると言われた。それなら最初から自分の部屋だけ自分で管理するようにしたらいいと。
俺は寮のように、その建物で暮らす者たちが共同で管理するかたちはどうかと思った。だがそれは上手くいっている時はいいが、一度崩れ始めると収拾がつかなくなるそうだ。つまり不真面目な者は真面目な者に押しつけ、真面目な者が全員分の掃除をすることになると。
「寮でもそういうことがあったらしいから」
「そうだなあ。そういうことが起こりえるならブルーノの案がいいだろう。家族用も独身用も、広さだけ違って他は同じ。上の階には外に取り付けた階段で移動する。これでいいか?」
「今のところはそれが一番いいと思うよ。たしかに個人個人に任せたい気持ちは分かるけど、どこまでできるか分からないからね。この町の住民はみんな真面目だから勘違いしやすいけど、普通はここまでじゃない」
そこで暮らす者たちがみんな真面目だとは限らないからな。
「麦なら文字通り余っていますから、それを使えばパンに関してはほぼ無料で大丈夫でしょう。肉なども捌いた時の切れ端などはかなり出ますので、それを使えばいいでしょう。野菜の育ちもおかしいくらい速いですから、いくらでも使えると思います」
食事に関してはライナーが案を出してくれた。
「そうは言っても、麦も野菜も基本的にはこの町の住民のために育てられている。全部を無償にはできないだろう」
「そこは炊き出しの代わりでいいと思います。形としては教会が人を派遣して食事を作っていることにすれば辻褄は合うでしょう」
俺が教会に金を渡し、教会がその金で人を雇って炊き出しをすると。それが教会の敷地で行うのではなく、その区画に作られた店でするだけ。回りくどいが、形としてはそれでいいか。
「確かに、それなら説明はできるか」
その人をどう雇うかだが……やっぱり親父さんところか? あそこばかりになってしまうが、確実に仕事をしてくれるからな。
「一つ気になっているのは、安く食事ができる場所があると分かれば、他の場所から人がやって来ないか?」
「人が来れば貧民街じゃなくなると思う。外から誰も来なければ人が動かないけどね」
「なるほど」
なるほど、少し考え方を変えるか。俺は貧民街の整理と考えていたが、王都の中に規模の小さい集落を一つ作ると考えた方がいいのか。
「それなら……もはや貧民街と考えるのはやめるか」
「人が流れるようになれば貧民街じゃなくなるから、それでいいと思う」
「僕もそう思います。かなり安く暮らせる新しい街区を作るという考えでいいでしょう」
「分かった。周辺の地図、と言ってもかなり昔の図面らしいが、それは用意してもらえる。それを元にして新しく図面を引いてくれ」
「了解了解」
◆ ◆ ◆
「分かりました。作業員を集めましょう」
「頼む」
やはりゲルトの親父さんの店で人集めを頼むことになった。ここが貧民街に一番近いから便利ではある。
「しかし、立ち退きをさせることになりますと、反発はありませんかな?」
「多少はあるだろうな。だからまず戻れることを前提に説明する」
形としては、まず孤児院の跡地にしばらく住むための仮の住居を用意する。次に一区画の人を仮住居に移したら、そこを更地にして新しい建物を建て始める。建て終わったら孤児院から人を移す。それを繰り返す。
今はそのためにブルーノが図面を引いている。適当に建物を潰して建て直しても、ごちゃごちゃしたのが改善されなければ意味がないからだ。むしろ貧民街ができる以前よりも綺麗な町並みにしたいと思っている。
本来なら都市計画を担当する大臣や役人がいるはずだが、例の件で人が足りない。必要なところに人を移したので足りなくなった。だから王都内の都市計画は一時凍結中と言ってもいい。おれはこの貧民街に詳しいかということで話を貰っただけだ。
だが貧民街の住人たちは役人を嫌っている。役人は自分たちに何もしてくれないと思っているからだ。それに関しては住人たち自身のせいである部分も多少はあるが、彼らがこの王都で一番立場が弱いことには変わらない。
「役人が来れば嫌がるだろうが、俺ならそれほど嫌がられないだろう。ゲルトさんも説明の時に一緒に来てくれると嬉しい。さらに話がしやすいはずだ」
「もちろん同行しましょう。あの場所があのままでいいとは思えませんからな。ですがワシには何もできないもどかしさもありました。あの場所が生まれ変わるならそれがいいでしょう」
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