177 / 345
第二章:領主二年目第一部
新しい土地と問題(一):貴族の屋敷とは
しおりを挟む
「やはり小麦はよく売れていますね。大きな取り引きも小売りの方もです」
アントンから商会の売上について報告を受けている。今のところ売り上げは好調だそうだ。新規開店記念ということで、他よりも気持ち値段を下げ気味にしている。だがあまり下げすぎると他の商会と揉める原因になりかねないから、ほんの僅かだ。
「麦は味がいいということで、繰り返し購入される方が出始めました。それ以外には体調が良くなったという方もいらっしゃるようですが、それは麦のせいなのかどうかは分かりません」
「麦わらには魔力が多いらしいから、実の部分にもあるのかもな」
領民たちは去年の秋から自分たちが育てた麦を口にしているが、今のところ体調が良いだの悪いだのという話は聞かない。王都で暮らす者たちが不健康すぎるんじゃないだろうか。水も悪いからな。そのあたりもできることなら何とかしてやりたいが、そこは俺の領分じゃない。
「エールと蒸留酒も人気です。特に香りがいいと評判です」
「そのあたりはライムントとカスパー、それにバルタザールおかげだな」
ライムントとカスパーの兄弟は酒にはうるさい。バルタザールが作った樽に詰めて熟成させるが、様々な木で仕込んで試している。そのために熟成庫と呼ばれる、中に入れた食品が早く熟成する魔道具を導入したほどだ。
熟成庫という魔道具は、時空間魔法が使える魔道具職人ならいくらでも作れるそうだが、供給する魔力に限界がある。本体を大きくすれば魔力の消費が大きく、熟成の速度も遅くなるが、一度にたくさん熟成させることができる。小さくすれば魔力の消費が少なく、その分早く熟成させることができるが、あまりたくさん入れることができない。一得一失と呼ぶものだ。なかなか両立させることは難しい。普通なら。
だがうちの場合は魔力を周囲から集めるという竜の鱗を使って、できる限り大きく、かつできる限り早く熟成が進む熟成庫を、ブリギッタがライムントとカスパーに押し切られる形で作らされていた。途中で半狂乱になっていたが。
「蒸留酒などはどれがどの層に人気があるかも調べる予定です。まだ固定客とまで呼べる方は少ないですので」
この商会の経営に関してはアントンにすべて任せている。俺から提案することもあるしアントンが提案することもあるが、基本的にはダメだとは言わない。任せたからには信じて待つ。それが方針だ。
「失礼いたします。旦那様、エクムント殿がお見えです」
「あの人がか。珍しいな。通してくれ」
アントンと話をしていると、商会員の一人が来客を告げに来た。用事があるなら俺の方が王城へ出向いて話をしている。エクムント殿から話が来たのは、使用人を雇ってほしいという話の時だけで、たしかあの時は俺が王城にいた時だったか。
そのエクムント殿はいつもと同じような飄々とした様子で部屋に入って来た。
「ここに来ればお会いできるかと思っていましたが、ちょうどよかったです」
「今日はたまたまですよ。今後はこちらに連絡をしていただければ大丈夫です」
「それは助かります。今日は一つ話を持ってきました」
「話ですか」
「はい。ノルト男爵、土地を買いませんか?」
◆ ◆ ◆
王都にあるノルト男爵邸。元々は父であるエクディン準男爵の屋敷として建てられた。大きさこそまあまあだが、見た目が古めかしいので貴族の屋敷にはなかなか見えない。元あった建物を改築し、玄関などはまだ見れるくらいにはなっているが、中はかなり古い。もちろん補強はしてあるので崩れたりはしない。むしろそう簡単に壊れることはない。
そもそも客が来るようなこともなく、俺が幼い頃は領主である父がたまに住み、それから俺が軍学校に通っている間は俺が住んでいた。卒業後は交代で年に数回程度様子を見に来る程度で、今ではほとんど使われていない。だが少々事情が変わり、ここをもう少し整える必要があるという話を少し前からしていた。
第一の理由は、俺が王都に商会を持つようになったからだ。ノルト男爵である俺の商会ということになるので、何かあった時には俺がいないのも困る。もちろん領主がいつも王都にいるとは限らないが、代行を置いておくというのはよくあることだ。その代行すらうちにはいなかったわけだ。
従僕として雇ったアントンが商会長になり、基本的には彼に全てを任せているが、場合によっては俺と直接話をしたいという者も来るかもしれない。つまり商会長ではなく、領主と直接やりとりをしたいと考える者がいるだろう。要するに大きな取り引きの時などだ。
第二の理由は、俺が屋敷から近いところにある貧民街の管理を任されたからだ。もちろん管理と言っても俺が直接何かをするわけではなく、うちの商会がこの地区の清掃や治安維持などを任されたというくらいだ。
新しく建てている低所得者向け住居の管理や周辺の掃除などをしつつ、貧民街の治安が悪化しないかどうかを商会が人を雇って目を光らせる。それ自体も雇用に繋がるわけだ。
そうなると今の屋敷では少々問題がある。いや、あの屋敷がダメというわけではないが、世襲の男爵になったので、そろそろ屋敷のことを考えた方がいいのではと、執事のヨアヒムや商会長のアントンには言われている。
もちろんそれは分かる。殿下など、止ん事無い身分の客を迎え入れるのならそれなりの体裁は必要だ。問題は土地と建物。土地を探して屋敷を建てる。世襲の男爵として恥ずかしい屋敷ではいけない。今の屋敷に拘るのは単なる感傷だと分かってはいるが、そう簡単に捨てられるものでもない。そこが難しいところだ。
アントンから商会の売上について報告を受けている。今のところ売り上げは好調だそうだ。新規開店記念ということで、他よりも気持ち値段を下げ気味にしている。だがあまり下げすぎると他の商会と揉める原因になりかねないから、ほんの僅かだ。
「麦は味がいいということで、繰り返し購入される方が出始めました。それ以外には体調が良くなったという方もいらっしゃるようですが、それは麦のせいなのかどうかは分かりません」
「麦わらには魔力が多いらしいから、実の部分にもあるのかもな」
領民たちは去年の秋から自分たちが育てた麦を口にしているが、今のところ体調が良いだの悪いだのという話は聞かない。王都で暮らす者たちが不健康すぎるんじゃないだろうか。水も悪いからな。そのあたりもできることなら何とかしてやりたいが、そこは俺の領分じゃない。
「エールと蒸留酒も人気です。特に香りがいいと評判です」
「そのあたりはライムントとカスパー、それにバルタザールおかげだな」
ライムントとカスパーの兄弟は酒にはうるさい。バルタザールが作った樽に詰めて熟成させるが、様々な木で仕込んで試している。そのために熟成庫と呼ばれる、中に入れた食品が早く熟成する魔道具を導入したほどだ。
熟成庫という魔道具は、時空間魔法が使える魔道具職人ならいくらでも作れるそうだが、供給する魔力に限界がある。本体を大きくすれば魔力の消費が大きく、熟成の速度も遅くなるが、一度にたくさん熟成させることができる。小さくすれば魔力の消費が少なく、その分早く熟成させることができるが、あまりたくさん入れることができない。一得一失と呼ぶものだ。なかなか両立させることは難しい。普通なら。
だがうちの場合は魔力を周囲から集めるという竜の鱗を使って、できる限り大きく、かつできる限り早く熟成が進む熟成庫を、ブリギッタがライムントとカスパーに押し切られる形で作らされていた。途中で半狂乱になっていたが。
「蒸留酒などはどれがどの層に人気があるかも調べる予定です。まだ固定客とまで呼べる方は少ないですので」
この商会の経営に関してはアントンにすべて任せている。俺から提案することもあるしアントンが提案することもあるが、基本的にはダメだとは言わない。任せたからには信じて待つ。それが方針だ。
「失礼いたします。旦那様、エクムント殿がお見えです」
「あの人がか。珍しいな。通してくれ」
アントンと話をしていると、商会員の一人が来客を告げに来た。用事があるなら俺の方が王城へ出向いて話をしている。エクムント殿から話が来たのは、使用人を雇ってほしいという話の時だけで、たしかあの時は俺が王城にいた時だったか。
そのエクムント殿はいつもと同じような飄々とした様子で部屋に入って来た。
「ここに来ればお会いできるかと思っていましたが、ちょうどよかったです」
「今日はたまたまですよ。今後はこちらに連絡をしていただければ大丈夫です」
「それは助かります。今日は一つ話を持ってきました」
「話ですか」
「はい。ノルト男爵、土地を買いませんか?」
◆ ◆ ◆
王都にあるノルト男爵邸。元々は父であるエクディン準男爵の屋敷として建てられた。大きさこそまあまあだが、見た目が古めかしいので貴族の屋敷にはなかなか見えない。元あった建物を改築し、玄関などはまだ見れるくらいにはなっているが、中はかなり古い。もちろん補強はしてあるので崩れたりはしない。むしろそう簡単に壊れることはない。
そもそも客が来るようなこともなく、俺が幼い頃は領主である父がたまに住み、それから俺が軍学校に通っている間は俺が住んでいた。卒業後は交代で年に数回程度様子を見に来る程度で、今ではほとんど使われていない。だが少々事情が変わり、ここをもう少し整える必要があるという話を少し前からしていた。
第一の理由は、俺が王都に商会を持つようになったからだ。ノルト男爵である俺の商会ということになるので、何かあった時には俺がいないのも困る。もちろん領主がいつも王都にいるとは限らないが、代行を置いておくというのはよくあることだ。その代行すらうちにはいなかったわけだ。
従僕として雇ったアントンが商会長になり、基本的には彼に全てを任せているが、場合によっては俺と直接話をしたいという者も来るかもしれない。つまり商会長ではなく、領主と直接やりとりをしたいと考える者がいるだろう。要するに大きな取り引きの時などだ。
第二の理由は、俺が屋敷から近いところにある貧民街の管理を任されたからだ。もちろん管理と言っても俺が直接何かをするわけではなく、うちの商会がこの地区の清掃や治安維持などを任されたというくらいだ。
新しく建てている低所得者向け住居の管理や周辺の掃除などをしつつ、貧民街の治安が悪化しないかどうかを商会が人を雇って目を光らせる。それ自体も雇用に繋がるわけだ。
そうなると今の屋敷では少々問題がある。いや、あの屋敷がダメというわけではないが、世襲の男爵になったので、そろそろ屋敷のことを考えた方がいいのではと、執事のヨアヒムや商会長のアントンには言われている。
もちろんそれは分かる。殿下など、止ん事無い身分の客を迎え入れるのならそれなりの体裁は必要だ。問題は土地と建物。土地を探して屋敷を建てる。世襲の男爵として恥ずかしい屋敷ではいけない。今の屋敷に拘るのは単なる感傷だと分かってはいるが、そう簡単に捨てられるものでもない。そこが難しいところだ。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
小さなわたしたちが1000倍サイズの超巨大エルフ少女たちから世界を取り返すまでのお話
穂鈴 えい
ファンタジー
この世界に住んでいる大多数の一般人たちは、身長1400メートルを超える山のように巨大な、少数のエルフたちのために働かされている。吐息だけでわたしたち一般市民をまとめて倒せてしまえるエルフたちに抵抗する術もなく、ただひたすらに彼女たちのために労働を続ける生活を強いられているのだ。
一般市民であるわたしは日中は重たい穀物を運び、エルフたちの食料を調達しなければならない。そして、日が暮れてからはわたしたちのことを管理している身長30メートルを越える巨大メイドの身の回りの世話をしなければならない。
そんな過酷な日々を続ける中で、マイペースな銀髪美少女のパメラに出会う。彼女は花園の手入れを担当していたのだが、そこの管理者のエフィという巨大な少女が怖くて命懸けでわたしのいる区域に逃げてきたらしい。毎日のように30倍サイズの巨大少女のエフィから踏みつけられたり、舐められたりしてすっかり弱り切っていたのだった。
再びエフィに連れ去られたパメラを助けるために成り行きでエルフたちを倒すため旅に出ることになった。当然1000倍サイズのエルフを倒すどころか、30倍サイズの管理者メイドのことすらまともに倒せず、今の労働場所から逃げ出すのも困難だった。挙句、抜け出そうとしたことがバレて、管理者メイドにあっさり吊るされてしまったのだった。
しかし、そんなわたしを助けてくれたのが、この世界で2番目に優秀な魔女のクラリッサだった。クラリッサは、この世界で一番優秀な魔女で、わたしの姉であるステラを探していて、ついでにわたしのことを助けてくれたのだった。一緒に旅をしていく仲間としてとんでもなく心強い仲間を得られたと思ったのだけれど、そんな彼女でも1000倍サイズのエルフと相対すると、圧倒的な力を感じさせられてしまうことに。
それでもわたしたちは、勝ち目のない戦いをするためにエルフたちの住む屋敷へと向かわなければならないのだった。そうして旅をしていく中で、エルフ達がこの世界を統治するようになった理由や、わたしやパメラの本当の力が明らかになっていき……。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる