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第一章:領主一年目
毛皮の使い道
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「領主様、溜まりすぎではありませんか?」
「ここで少し抜いていきませんか?」
デリアとフリーデがわざとそのような言い方をする。
「そうだな。少しスッキリさせるとするか。二人とも、明日は足腰が立たなくなるだろうからな。覚悟はいいな?」
「「きゃー」」
最近はカリンナとコリンナのせいで、下ネタに対して即座に切り返せるそうになった。いかんな。もちろんこれはお互いに冗談で言っていることだ。
デリアとフリーデは最近恋人ができたようで、心の余裕ができたらしい。こちらに来たときのような暗さはなくなった。
元々二人は針子としては優秀でけっして暗い性格でもなかった。ただ、彼女たちよりも若くて優秀なエルザの弟子たちが入ったために首になり、少し気落ちしていたようだ。ここに来てからはたまにエルザから針仕事を学んでいたようだ。エルザが明るい性格なこともあって、二人も引きずられるように元気になったようだ。
それで何の話をしているかと言えば、溜まりに溜まった毛皮をどうするかという話だ。この倉庫にはこれまでに狩った魔獣の毛皮が鞣されて保管されている。ただし無造作に突っ込まれているので、一度きちんと片付ける必要がある。
熊の毛皮は丈夫なので防具としても使用される。分厚い金属鎧ほどは丈夫ではないが、普通の革鎧よりも防御力は高い。狩人や護衛たちが身に付けている鎧は、熊の毛皮を金属で補強したものなので、猪の牙や鹿の角の直撃を受けない限りは問題ないくらいには安全だ。
熊の毛皮はこのように防具として使われるが、それ以外の毛皮はあまり活用されていない。溜まりに溜まった毛皮を一度整理する必要があるが、魔獣は体が大きいので毛皮も大きい。外套一着分なら重くはないが、熊一頭分の毛皮はそれなりの重さがある。何度も抜いて運んで置いてを繰り返せば、明日は腰に来そうだ。
とりあえず加工が楽なものとしては敷物だろう。冬の寒さに耐えられるように部屋に毛皮を敷くのはハイデでは普通だった。魔獣もいれば野獣もいた。毛皮の切れ端を繋ぎ合わせてそのような敷物が作られていた。
なぜ切れ端なのかというと、一番は防寒具に使われたからだ。ハイデは山が近く、冬は吹雪くことも多かった。風が強かったのでそこまで積もることはなかったが、それでも寒いことに変わりはない。だから外套や帽子、手袋など、寒さ対策に毛皮が使われた。
一方でドラゴネットは勝手が違った。
「そこまで寒くないのは助かりますね」
「そうだな。雪は降り始めているが、あまり風がないから寒く感じないな」
「それに家の中もあまり寒くありませんからね」
今のところ、ドラゴネットに建てられたすべての家にはクラースが作ってくれた温度調節ができる柱が使われている。これは城で使われている柱ように、勝手に調節をしてくれるほど便利ではないが、『涼しくなる』と『温かくなる』と『使わない』が切り替えできるので、暖炉がなくても寒くはないそうだ。どうしても暖炉がほしければ勝手に改装すればいいが、暖炉を付けた家はないらしい。つまり、家の中は寒くないから敷物も必ずしも必要ない。
そして外へ出るときも外套もあれば助かるが、ハイデほど寒くないし、そもそもハイデからやって来た住民たちはほとんどが毛皮の外套を持っている。俺とカレン、エルザ、そしてアルマの分は先日新しく作ってもらった。今は王都から来た住民や職人、そして使用人たちのために防寒具を作っているところだ。
農婦たちは手先が器用な者が多いので、与えられた毛皮を作って自分たちで作っていた。そこに王都からやって来た針子のデリアとフリーデが加わり、以前よりはもう少し見栄えのいい防寒具が作られ始めている。
やはり端切れは出るので敷物も作っているが、それほど必要がない。だから今は繋ぎ合わせた毛皮を何枚か重ね、椅子の上に乗せる毛皮のクッションを作っている。綿や羊毛ではないのでクッションとは呼ばないかもしれないが、他に呼びようがない。弾力があるので寒さ避けだけではなく座り心地も良くなる。模様も格子状になっていて、これはかなり見栄えがいいのではないだろうか。
椅子は木で作られたものが多い。木の椅子の上に綿や羊毛を乗せて上に革を張った椅子もあるが、どうしても革は傷みやすく、綿や羊毛はしばらくすると潰れてしまう。修繕に手間がかかる。だがこれなら椅子に乗せるだけでいい。
もちろん椅子に乗せるクッションも普通にあるが、あれもすぐに潰れてくる。魔獣の毛皮は丈夫だから長持ちする上に滑りにくい。もし傷んだとしても毛皮の端切れはいくらでもあるから、交換すればいい。
「今のところ手の空いている女性たちが何人かずつ交代で作業をしています」
「どのようにして売るか、まだ細かい部分は決まっていないが、いずれ領地で作ったものを王都なりどこなりで売ることは決まっている。この毛皮のクッションもその一つになれると思う。これも含めて、試しに色々なものを作ってみてくれ」
「はい、やってみます」
「ここで少し抜いていきませんか?」
デリアとフリーデがわざとそのような言い方をする。
「そうだな。少しスッキリさせるとするか。二人とも、明日は足腰が立たなくなるだろうからな。覚悟はいいな?」
「「きゃー」」
最近はカリンナとコリンナのせいで、下ネタに対して即座に切り返せるそうになった。いかんな。もちろんこれはお互いに冗談で言っていることだ。
デリアとフリーデは最近恋人ができたようで、心の余裕ができたらしい。こちらに来たときのような暗さはなくなった。
元々二人は針子としては優秀でけっして暗い性格でもなかった。ただ、彼女たちよりも若くて優秀なエルザの弟子たちが入ったために首になり、少し気落ちしていたようだ。ここに来てからはたまにエルザから針仕事を学んでいたようだ。エルザが明るい性格なこともあって、二人も引きずられるように元気になったようだ。
それで何の話をしているかと言えば、溜まりに溜まった毛皮をどうするかという話だ。この倉庫にはこれまでに狩った魔獣の毛皮が鞣されて保管されている。ただし無造作に突っ込まれているので、一度きちんと片付ける必要がある。
熊の毛皮は丈夫なので防具としても使用される。分厚い金属鎧ほどは丈夫ではないが、普通の革鎧よりも防御力は高い。狩人や護衛たちが身に付けている鎧は、熊の毛皮を金属で補強したものなので、猪の牙や鹿の角の直撃を受けない限りは問題ないくらいには安全だ。
熊の毛皮はこのように防具として使われるが、それ以外の毛皮はあまり活用されていない。溜まりに溜まった毛皮を一度整理する必要があるが、魔獣は体が大きいので毛皮も大きい。外套一着分なら重くはないが、熊一頭分の毛皮はそれなりの重さがある。何度も抜いて運んで置いてを繰り返せば、明日は腰に来そうだ。
とりあえず加工が楽なものとしては敷物だろう。冬の寒さに耐えられるように部屋に毛皮を敷くのはハイデでは普通だった。魔獣もいれば野獣もいた。毛皮の切れ端を繋ぎ合わせてそのような敷物が作られていた。
なぜ切れ端なのかというと、一番は防寒具に使われたからだ。ハイデは山が近く、冬は吹雪くことも多かった。風が強かったのでそこまで積もることはなかったが、それでも寒いことに変わりはない。だから外套や帽子、手袋など、寒さ対策に毛皮が使われた。
一方でドラゴネットは勝手が違った。
「そこまで寒くないのは助かりますね」
「そうだな。雪は降り始めているが、あまり風がないから寒く感じないな」
「それに家の中もあまり寒くありませんからね」
今のところ、ドラゴネットに建てられたすべての家にはクラースが作ってくれた温度調節ができる柱が使われている。これは城で使われている柱ように、勝手に調節をしてくれるほど便利ではないが、『涼しくなる』と『温かくなる』と『使わない』が切り替えできるので、暖炉がなくても寒くはないそうだ。どうしても暖炉がほしければ勝手に改装すればいいが、暖炉を付けた家はないらしい。つまり、家の中は寒くないから敷物も必ずしも必要ない。
そして外へ出るときも外套もあれば助かるが、ハイデほど寒くないし、そもそもハイデからやって来た住民たちはほとんどが毛皮の外套を持っている。俺とカレン、エルザ、そしてアルマの分は先日新しく作ってもらった。今は王都から来た住民や職人、そして使用人たちのために防寒具を作っているところだ。
農婦たちは手先が器用な者が多いので、与えられた毛皮を作って自分たちで作っていた。そこに王都からやって来た針子のデリアとフリーデが加わり、以前よりはもう少し見栄えのいい防寒具が作られ始めている。
やはり端切れは出るので敷物も作っているが、それほど必要がない。だから今は繋ぎ合わせた毛皮を何枚か重ね、椅子の上に乗せる毛皮のクッションを作っている。綿や羊毛ではないのでクッションとは呼ばないかもしれないが、他に呼びようがない。弾力があるので寒さ避けだけではなく座り心地も良くなる。模様も格子状になっていて、これはかなり見栄えがいいのではないだろうか。
椅子は木で作られたものが多い。木の椅子の上に綿や羊毛を乗せて上に革を張った椅子もあるが、どうしても革は傷みやすく、綿や羊毛はしばらくすると潰れてしまう。修繕に手間がかかる。だがこれなら椅子に乗せるだけでいい。
もちろん椅子に乗せるクッションも普通にあるが、あれもすぐに潰れてくる。魔獣の毛皮は丈夫だから長持ちする上に滑りにくい。もし傷んだとしても毛皮の端切れはいくらでもあるから、交換すればいい。
「今のところ手の空いている女性たちが何人かずつ交代で作業をしています」
「どのようにして売るか、まだ細かい部分は決まっていないが、いずれ領地で作ったものを王都なりどこなりで売ることは決まっている。この毛皮のクッションもその一つになれると思う。これも含めて、試しに色々なものを作ってみてくれ」
「はい、やってみます」
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