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第3話 仲間の危機ー5
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セブンは即刻、おクウに近づいた。
「おクウ、確りして! トラックはすぐに来るわ」と声をかけつつ、ぐったりとした仲間を抱きかかえて廊下に連れ出した。けれど、おクウの方は殆ど意識がなく、一刻を争うというのに素早く動けないようだ。しかもこの時、余計なお荷物まで背負い込む羽目になった。と言うのも、別のドアから新たな男が駆け込んできたのだ。
「ここはどこだ? あんたら誰だ?」と放心状態で、その男は問いかける。どう見ても学生らしい姿だ。
それを見たセブンは、「君は、学園の生徒?」と訊いた。ただちに彼も、実験対象に選ばれた者だと勘付いたからだ。
「そ、そうだよ。今気がついたら、ここにいたんだ」
「だったら、逃げるわよ」こうなると全員退避するしかないと踏んだセブン、急いで二人を引っ張り外に飛び出した。
男は訳が分からないようだが、一先ず彼女に従う態度を見せた。
だが、そう簡単に突破はできそうにない。既に外では、黒ずくめの男たちが拳銃を片手に待ち受けていた。
途端に――凄まじい発砲音!――銃声とともに弾丸が雨あられと飛んできた!
然らば、セブンの方も容赦はしない。おクウとともに物陰へと隠れたなら、向かってくる敵に、空気の切り裂く音を立て矢を放っていた!
「ぐわー!」忽ち男たちの手に矢が刺さる。彼女は見事な腕前を披露して、次々と悪党どもを射抜いていったのだ。彼女の射撃は名手でさえも舌を巻くほどだ。
……とはいえ、この状態でいつまで持ち堪えられるというのか? 一歩も動けず、加えて敵の車が何台も接近しているのが視界に入る。そしていつの間にか彼女たちの行く手を阻むよう包囲し始めた。これでは敵車が逃げ道を塞ぎ、工藤の乗ったトラックも近づけない。それにセブンが必死で戦えど、多勢に無勢、一人では到底敵うはずもなかった……
――あわやその時! 弾丸が彼女の右肩を掠った!――
「うっ!」痛みでセブンは竦み、壁際に身を隠した。何と、予期せぬ傷を負ってしまった? それでも彼女は慌てることなく、どうにかこの危機を逃れられないかと辺りを見回したものの……目にしたものは、側で倒れたままのお空と膝を抱えておろおろとしゃがみ込む学生の姿だけ。全く絶望感しかない状況か。
さらに敵のマシンガンが、けたたましい銃声を鳴らし連続砲火を浴びせ来た!
彼女らに向かって無数の鉛弾が、無慈悲に襲いかかったのだ――
……………………
「桃ねえさん、昨日の夜から雅の姿が見えないんだよ。あいつは親から見離されて一人暮らしなんだけど、そのアパートにも帰っていないし、よく行くゲーセンなんかも探してみたんだが、いないんだよ」と康夫は話を続けていた。
それをレディが真剣に聞いている。また行方不明者が現れたことに疑問を抱きながら。そしてその謎を解くには、やはりあの男だ、と考えていた。
ところが次に、腕時計の特殊ライトが点滅を始めた! この信号の意味は? 何か緊急事態が起こった時の合図だ。まさか、仲間の身に危機が迫っているのか? 途端に嫌な予感がした。
彼女はすぐさま康夫に向かって、「分かった。俺がなんとかする。お前ももう少し探してみてくれ」と言うなり走り出した。雅のことも心配だが、急な呼び出しを受けた以上、先ずは仲間の状況を確かめなければならなかった。それにもしかすれば、連絡次第で雅の失踪に関するヒントが得られるかもしれないとの期待もあった。その思いで、彼女はおクウたちの元へ急いだのだ。
そんな彼女の振舞いに、康夫の方は途方に暮れているようだ。
「ねえさん、どこへ?」と問いかけてきた。
するとレディは、走りつつもうしろを顧みて、「俺が行く所か……」とさりげなく口元を緩ませ言った後、その目の中にまだ見ぬ苦境を映しだしているかのごとく、ぽつりと呟いた。
「……戦場だよ」
その頃、理事長室では、北条の秘書、皇虎たちの父親でもある大門寺が報告をしていた。
「先生、大変です。研究所に族が紛れ込んだ模様です」と。
「やはり来たか。以前の襲撃から用心していたのが功を奏したみたいだな。それでどんな具合かね?」と北条が返す。
「今、三名と交戦中です。処分しますか?」
「いや、できるだけ殺すな。素性を知る必要がある。もしかすると、最近噂になっている連中かもしれんからな。まずは捕まえてからだ。……君はすぐに娘たちを向かわせなさい」
「はい、承知しました」
そしてその情報は、忽ち皇虎の耳にも知らされた。奴らはヘリに乗り、現場に急いだ。ただし途中で龍子が降ろされた。研究所は人里離れた荒地の中にあるのだが、そこへ通ずる一本道で、来るであろう敵対者を待ち伏せする計画のようだ。
バズーカ片手に配置につく龍子の姿があった
一方、レディは走る。フルヘルメットを被りバイクスーツを身に纏い、エンジンの爆音を響かせながら……
目的地は分かっていた。何故ならバイクには無線が装備されているため、工藤からの詳細な指示を仰ぐと同時にマシーンがナビを受信して、その地図が運転席のインパネ液晶に映し出されていたのだ。
さあ、もう猶予はない! 仲間が危険だ。レディは一心に突っ走っていた。
「おクウ、確りして! トラックはすぐに来るわ」と声をかけつつ、ぐったりとした仲間を抱きかかえて廊下に連れ出した。けれど、おクウの方は殆ど意識がなく、一刻を争うというのに素早く動けないようだ。しかもこの時、余計なお荷物まで背負い込む羽目になった。と言うのも、別のドアから新たな男が駆け込んできたのだ。
「ここはどこだ? あんたら誰だ?」と放心状態で、その男は問いかける。どう見ても学生らしい姿だ。
それを見たセブンは、「君は、学園の生徒?」と訊いた。ただちに彼も、実験対象に選ばれた者だと勘付いたからだ。
「そ、そうだよ。今気がついたら、ここにいたんだ」
「だったら、逃げるわよ」こうなると全員退避するしかないと踏んだセブン、急いで二人を引っ張り外に飛び出した。
男は訳が分からないようだが、一先ず彼女に従う態度を見せた。
だが、そう簡単に突破はできそうにない。既に外では、黒ずくめの男たちが拳銃を片手に待ち受けていた。
途端に――凄まじい発砲音!――銃声とともに弾丸が雨あられと飛んできた!
然らば、セブンの方も容赦はしない。おクウとともに物陰へと隠れたなら、向かってくる敵に、空気の切り裂く音を立て矢を放っていた!
「ぐわー!」忽ち男たちの手に矢が刺さる。彼女は見事な腕前を披露して、次々と悪党どもを射抜いていったのだ。彼女の射撃は名手でさえも舌を巻くほどだ。
……とはいえ、この状態でいつまで持ち堪えられるというのか? 一歩も動けず、加えて敵の車が何台も接近しているのが視界に入る。そしていつの間にか彼女たちの行く手を阻むよう包囲し始めた。これでは敵車が逃げ道を塞ぎ、工藤の乗ったトラックも近づけない。それにセブンが必死で戦えど、多勢に無勢、一人では到底敵うはずもなかった……
――あわやその時! 弾丸が彼女の右肩を掠った!――
「うっ!」痛みでセブンは竦み、壁際に身を隠した。何と、予期せぬ傷を負ってしまった? それでも彼女は慌てることなく、どうにかこの危機を逃れられないかと辺りを見回したものの……目にしたものは、側で倒れたままのお空と膝を抱えておろおろとしゃがみ込む学生の姿だけ。全く絶望感しかない状況か。
さらに敵のマシンガンが、けたたましい銃声を鳴らし連続砲火を浴びせ来た!
彼女らに向かって無数の鉛弾が、無慈悲に襲いかかったのだ――
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「桃ねえさん、昨日の夜から雅の姿が見えないんだよ。あいつは親から見離されて一人暮らしなんだけど、そのアパートにも帰っていないし、よく行くゲーセンなんかも探してみたんだが、いないんだよ」と康夫は話を続けていた。
それをレディが真剣に聞いている。また行方不明者が現れたことに疑問を抱きながら。そしてその謎を解くには、やはりあの男だ、と考えていた。
ところが次に、腕時計の特殊ライトが点滅を始めた! この信号の意味は? 何か緊急事態が起こった時の合図だ。まさか、仲間の身に危機が迫っているのか? 途端に嫌な予感がした。
彼女はすぐさま康夫に向かって、「分かった。俺がなんとかする。お前ももう少し探してみてくれ」と言うなり走り出した。雅のことも心配だが、急な呼び出しを受けた以上、先ずは仲間の状況を確かめなければならなかった。それにもしかすれば、連絡次第で雅の失踪に関するヒントが得られるかもしれないとの期待もあった。その思いで、彼女はおクウたちの元へ急いだのだ。
そんな彼女の振舞いに、康夫の方は途方に暮れているようだ。
「ねえさん、どこへ?」と問いかけてきた。
するとレディは、走りつつもうしろを顧みて、「俺が行く所か……」とさりげなく口元を緩ませ言った後、その目の中にまだ見ぬ苦境を映しだしているかのごとく、ぽつりと呟いた。
「……戦場だよ」
その頃、理事長室では、北条の秘書、皇虎たちの父親でもある大門寺が報告をしていた。
「先生、大変です。研究所に族が紛れ込んだ模様です」と。
「やはり来たか。以前の襲撃から用心していたのが功を奏したみたいだな。それでどんな具合かね?」と北条が返す。
「今、三名と交戦中です。処分しますか?」
「いや、できるだけ殺すな。素性を知る必要がある。もしかすると、最近噂になっている連中かもしれんからな。まずは捕まえてからだ。……君はすぐに娘たちを向かわせなさい」
「はい、承知しました」
そしてその情報は、忽ち皇虎の耳にも知らされた。奴らはヘリに乗り、現場に急いだ。ただし途中で龍子が降ろされた。研究所は人里離れた荒地の中にあるのだが、そこへ通ずる一本道で、来るであろう敵対者を待ち伏せする計画のようだ。
バズーカ片手に配置につく龍子の姿があった
一方、レディは走る。フルヘルメットを被りバイクスーツを身に纏い、エンジンの爆音を響かせながら……
目的地は分かっていた。何故ならバイクには無線が装備されているため、工藤からの詳細な指示を仰ぐと同時にマシーンがナビを受信して、その地図が運転席のインパネ液晶に映し出されていたのだ。
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