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14 秀一郎視点
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「東、ありがとう。」
「では、私は失礼します。」
彼は、将来俺の部下になってくれる信頼のおける男だ。
彼に協力して貰えたおかげで、この日が迎えられた。
俺は資料を手に取ると、再びそれに目を通した。
「……俺は、どうしてもっと早く気付けなかったんだ──!」
資料がグシャリと嫌な音を立て、皴を作った。
いけない……これは、これからやって来る二人に、付きつけてやる大事な証拠だ。
「……彼を傷付けた罪は、ちゃんと償って貰う。」
いや……それは俺も同じか──。
これが済んだら、俺は彼を……「レオ」を迎えに行く。
そして俺は彼に、今までの事を……俺の過ちを、ちゃんと詫びなければ──。
※※※
「お邪魔します、秀一郎様!」
「今日はお招き頂きありがとうございます、秀一郎様。早速、今後の事業の話と行きましょうか!」
「父さん、まずはこのお弁当が先!秀一郎様、僕ね、ピクニックに行けなかった代わりに、これを作って来たんです。」
「……何が入ってるんだ?」
「え……?」
「お前が作ったんだろう?教えてくれないか?」
「あ、朝は急いでいたもので記憶が……そうですね、いつもみたいにウインナーと卵焼きと……唐揚げ?」
俺はそれを受け取ると、玲央を見た。
「形は?」
「は……?形?ウ……ウインナーとか卵焼きに、形なんてあります?ど、どうしたんです、秀一郎様……何でそんな怖い顔──」
「昔、レオと約束したんだ。いつか二人で、ピクニックに行こうって。その時のお弁当には、ハートの形の卵焼きに、タコの形のウインナー、星のピックを刺したミートボールを入れたいと。そんな俺に、レオは言った……料理上手になって、そのお弁当は僕が作るねって。よく見ろ、玲央が言った唐揚げは……一つも入っていない。玲央……本当はこの弁当だけでなく、今までの弁当も……全く作っていなかったんじゃないのか?」
「それは……子供の頃の事ですから、一つや二つ覚えてなくて当然です。お弁当だって……美味しかったならそれでいいじゃないですか。僕の事を疑うなんて……酷いです。」
そう言って、目を潤ませる玲央──。
そうだな……。
以前の俺なら、こんなふうにお前を疑いはしなかった。
やっと会えた、運命の再会を果たしたと、その喜びと幸せで胸が一杯で……そして昔と変わらず、俺を好きだと言ってくれるお前を信じていたから。
そんな大事な相手を、疑いの目で見るなど……。
でもそのせいで、俺は、彼を──。
「じゃあ、少し前の事ならどうだ?これも、忘れてしまったか?」
俺は先程の書類を、二人に差し出した。
二人は躊躇いながらもそれを受け取ると、ソファーにかけ目を通し始めた。
その顔が次第に青ざめ、ダラダラと冷や汗を流すのを、俺はじっと見ていた。
「あ、あの……これは、一体何の事でしょう?」
「とぼけるな。玲央……お前は前の学校で、そこに書かれている女子生徒に金を渡し、嘘の証言をさせたろう?彼女は、余りに恋人と仲が良い湊に内心嫉妬していた。そこでお前は、彼女に湊が彼を恋愛的な意味で好きだと嘘を付いた。そして、二人の仲を裂いてやるから自身に協力するよう迫った。その女子生徒の家は、当時借金があって……彼女はお金欲しさにそれを了承したんだ。」
「そ、そんなの知りません!」
「彼女が、当時の事を全て正直に告白してくれた。彼女が警察沙汰にしなかったのも、自身の嘘がバレない様にする為だと言っていた。それと、当時受け取ったお金……結局使えずに持っていて、今回こうして返して来たぞ。」
その金が入った封筒を見た玲央は、ブルブルと体を震わせた。
「あの女……余計な事──!」
「そしてお前が湊を不良だと言い、俺に警戒をさせた事も、逆にお前の首を絞める結果となった。そこにも書かれているように、最近の湊には常に風紀委員会が一人は付くようになっていた。」
「そんな……!」
「お前が湊をトイレの個室に連れ込み、話の内容までは聞き取れなかったが……その後、湊の謝罪と呻き声が聞こえてきた事。更に湊の足を踏みつけ、言う事を聞かせた事や……見舞いに来た際、俺の部屋の前でお前は電話をしていたな?あの会話も、全て風紀委員が聞いていた。」
「嘘……僕、ちゃんと周りを確認して──!」
「では、私は失礼します。」
彼は、将来俺の部下になってくれる信頼のおける男だ。
彼に協力して貰えたおかげで、この日が迎えられた。
俺は資料を手に取ると、再びそれに目を通した。
「……俺は、どうしてもっと早く気付けなかったんだ──!」
資料がグシャリと嫌な音を立て、皴を作った。
いけない……これは、これからやって来る二人に、付きつけてやる大事な証拠だ。
「……彼を傷付けた罪は、ちゃんと償って貰う。」
いや……それは俺も同じか──。
これが済んだら、俺は彼を……「レオ」を迎えに行く。
そして俺は彼に、今までの事を……俺の過ちを、ちゃんと詫びなければ──。
※※※
「お邪魔します、秀一郎様!」
「今日はお招き頂きありがとうございます、秀一郎様。早速、今後の事業の話と行きましょうか!」
「父さん、まずはこのお弁当が先!秀一郎様、僕ね、ピクニックに行けなかった代わりに、これを作って来たんです。」
「……何が入ってるんだ?」
「え……?」
「お前が作ったんだろう?教えてくれないか?」
「あ、朝は急いでいたもので記憶が……そうですね、いつもみたいにウインナーと卵焼きと……唐揚げ?」
俺はそれを受け取ると、玲央を見た。
「形は?」
「は……?形?ウ……ウインナーとか卵焼きに、形なんてあります?ど、どうしたんです、秀一郎様……何でそんな怖い顔──」
「昔、レオと約束したんだ。いつか二人で、ピクニックに行こうって。その時のお弁当には、ハートの形の卵焼きに、タコの形のウインナー、星のピックを刺したミートボールを入れたいと。そんな俺に、レオは言った……料理上手になって、そのお弁当は僕が作るねって。よく見ろ、玲央が言った唐揚げは……一つも入っていない。玲央……本当はこの弁当だけでなく、今までの弁当も……全く作っていなかったんじゃないのか?」
「それは……子供の頃の事ですから、一つや二つ覚えてなくて当然です。お弁当だって……美味しかったならそれでいいじゃないですか。僕の事を疑うなんて……酷いです。」
そう言って、目を潤ませる玲央──。
そうだな……。
以前の俺なら、こんなふうにお前を疑いはしなかった。
やっと会えた、運命の再会を果たしたと、その喜びと幸せで胸が一杯で……そして昔と変わらず、俺を好きだと言ってくれるお前を信じていたから。
そんな大事な相手を、疑いの目で見るなど……。
でもそのせいで、俺は、彼を──。
「じゃあ、少し前の事ならどうだ?これも、忘れてしまったか?」
俺は先程の書類を、二人に差し出した。
二人は躊躇いながらもそれを受け取ると、ソファーにかけ目を通し始めた。
その顔が次第に青ざめ、ダラダラと冷や汗を流すのを、俺はじっと見ていた。
「あ、あの……これは、一体何の事でしょう?」
「とぼけるな。玲央……お前は前の学校で、そこに書かれている女子生徒に金を渡し、嘘の証言をさせたろう?彼女は、余りに恋人と仲が良い湊に内心嫉妬していた。そこでお前は、彼女に湊が彼を恋愛的な意味で好きだと嘘を付いた。そして、二人の仲を裂いてやるから自身に協力するよう迫った。その女子生徒の家は、当時借金があって……彼女はお金欲しさにそれを了承したんだ。」
「そ、そんなの知りません!」
「彼女が、当時の事を全て正直に告白してくれた。彼女が警察沙汰にしなかったのも、自身の嘘がバレない様にする為だと言っていた。それと、当時受け取ったお金……結局使えずに持っていて、今回こうして返して来たぞ。」
その金が入った封筒を見た玲央は、ブルブルと体を震わせた。
「あの女……余計な事──!」
「そしてお前が湊を不良だと言い、俺に警戒をさせた事も、逆にお前の首を絞める結果となった。そこにも書かれているように、最近の湊には常に風紀委員会が一人は付くようになっていた。」
「そんな……!」
「お前が湊をトイレの個室に連れ込み、話の内容までは聞き取れなかったが……その後、湊の謝罪と呻き声が聞こえてきた事。更に湊の足を踏みつけ、言う事を聞かせた事や……見舞いに来た際、俺の部屋の前でお前は電話をしていたな?あの会話も、全て風紀委員が聞いていた。」
「嘘……僕、ちゃんと周りを確認して──!」
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