スプラヴァン!

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2章 西日本県大会編

第19話  着色会

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曄園小学校 視聴覚室

「では来週より県大会が始まります・・・。
 内容はこの通りウンタラカンタラ、マァオ」

 マチコ先生がモニター画面の中身を説明。
今年から始まる大会について話していた。
しかし、場合は去年と少しちがっている。
そう、ソウマが今ここにいない。
彼は他の地方に行ってしまい、
そんな代行者はいるにはいるのだが。

ガクガク ブルブル

「「いいいいよいよしあいがはじまるぅ、
  にげられないさけられないやめられないぃ、
  じじじぶんできめたみちだぁ、
  ぼぼくもえらばれしものなんだぁ・・・」」

マコトがひざをかかえながらふるえる。
実際に試合に出るのは初めてで、人目に観られて
だいじょうぶだったのは自身の芸術品くらい。
スポーツの世界なら人体まるごと見られるわけだから、
プレッシャーはまたいつもと変わるだろう。
さらに左にいるマリが一言。

「あ~あ、ちょっと予定調和くるったかも」
「どうかしたの?」
「8月は旅行に行くつもりだったけど、
 部活はそこもつめて入れられてるんだもん。
 だから、今年はちゅ~~~~~し」
「またフランスに行くんだったっけ?」
「そう、向こうで日本の着物がかいさいしてるから
 私も着たかったのに」

家族との予定は学校の色でぬりつぶれたそう。
全国もあるからゆっくり休んでいられる日も少ない。
スケジュールも去年と異なってくるから、
夏休みの宿題よりつかれそうなことばかり。
これといった言葉が思いつかない、
予定のぬりつぶしはマリ以外にもいるわけだから。

「仕方ないよ、そうなったらそうなったで
 今をどうするか考えた方が良いね」
「そうねぇ・・・」

ムスッとした顔を見つつ、画面の方にもどる。
最初の試合はシマネにある草碧そうへき小学校から始まる。
次はトットリの微砂びさ小学校、次はヤマグチの灰山かいざん小学校。
そして最後はあのオカヤマの黒薔薇小学校となる。
あそことは一度試合をしていたから分かる。
他3つの所は今年から相まみえる学校で、
ここ中つ国はエリア数が少ないから試合数もそこそこだ。
1つ気になるのは向こうの対戦相手について
何か知りたいけど、ここでは教えてもらえない。
おそらくやる気をかきたてるような話を一切せずに
なんとなく終わらせたいからそうしているのだろう。
マチコ先生が述べてきた。

「ということで予定はおしまいとなります。
 最後に、わたくしたちは今、メディアからも多く
 たくさんの注目が集まっています。
 ラッセル君、あなたこそこのチームの定め。
 この曄園のまとめでもあります。
 身体の大切さもありますが、見られてもはずかしく
 ないように立ち回ることが大事です。
 おろか、中つ国の将来のためにも決して無理のない
 プレイを心がけてください」
「きもにめいじておきます」

受け答えはいかにもな言い方ですます。
カラーリング戦法の火付け役でもある自分が広めた
中つ国の中心といえる責任もあると内心閉まっている。
みんなのスケジュールをもまきこんでいるのだから
いい加減な試合にはできない。
自分は顔を真横にまで向ける、
彼女は続けて合わせるように言った。

「「あ~、そうね、なんならその分をこっちで」」
「その分?」
「「んぅ~、わたくしはムダなく人生をオウカするわ。
  女の命はとおっっても短い、むざんにできなかった
  その代わりを部活で味わうつもりだわぁ~お」」
「そ、そんな話し方だっけ?」
「「いいのよ、とにかく代わりの楽しみをなんとしても
  何かで補わなきゃやってられないわ。
  まあ、あんたもいるし。こっちはこっちで
  ハネムーン旅行じゃないけど、ランデヴーみたい」」
「ん、それってどういう――?」
「「なんでもな~い、そういった旅行名よ。
  こっちもこっちでちょっと楽しみだと思ってる。
  新しいことってやっぱりワクワクするもん」」

先生のモノマネ小声でささやく彼女はそう言った。
ちょっと意味が分からない、とにかく学校というわくを
はなれていつもとちがった景色は観られるかららしい。
去年はまともに他地方すら十分に出られなかった。
でも、今年からはちがう。
マコトの放った青が広がって目に入ってきた
世界をカラーリングする予定は変わっていなかった。
別にブルーだけでもない、もっと多色あって余る
そんなクジャクのはばたく様は今年こそ始まる。
自分たちの芸術はまた、外側への空間へ飛び出して
額縁がくぶちのわくをこえていくのだから。
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みんなの感想(1件)

花雨
2021.07.25 花雨

水の語りから始まって、現実に移る描写が気になったので今読んでます。先の展開が気になったのでお気に入り登録させてもらいました(^o^)
参考になります(^^)
良かったら私の作品も観てくださいね(^^)V

解除

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