スプラヴァン!

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2章 西日本県大会編

第13話  ハイサイお兄さん

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呂新エリア エンシェントブルー

「何、九州全エリア!?」
「うん、部活で人手が少ないって。
 だから、代行としてお手伝いしにいくの」

 ユイがセリオとヒサシに夏の予定を打ち明ける。
九州のあらゆる学校に向けて試合を行わせるために
部員を補うことになって、里めぐりと言えるような
本大会以外の試合にも出ることが決定。

「あ、そういや珊瑚小もそれっぽい話があったな。
 一応キャンセルなく試合ができっけど」
「あれ、珊瑚小学校の名前もあったけど
 部員は足りてるんだ?」
「ああ、間に合ってるぞ。ブルーガイア部員は確か
 関係者つながりで呼んだとか先生が言ってたな」
「多分、コスギ校長先生かな?
 リングワリングを作ってくれたし」
「かもしれねえな、新水鉄砲で国をわかしたんだ。
 今、オキナワのめいよみてえなあつかいだぜ!
 と言いてえところだけど、お前が最初の発案者で
 観光スポットの集まりでできたようなモンだしな」
「分かる、元からここが水にまつわるものばかりで
 一番ウオバトにふさわしい所だもんね」
「でも、今年のオキナワもお前とおんなじく引っこした
 やつらが何人かいたんだ。
 熱射病でたおれたメグも無理そうだってから、
 部活がやれそうにないんだと」
「えっ、メグも!?」

今年、サガにひっこした同級生の子も私と同じ立場で
オキナワを後にしていた。今の時代はどこであっても
環境のえいきょうが強くて体を動かすにも一苦労。
正直、いつでもどこでも事故が起こる。
スポーツそのものが禁止されているだけあって
私生活の中にもおよんでいると思う。
ポニーテールの茶髪男性が来た。

「元気かい、今年もまたすごい暑さだよね」
「カンナギさん」

従業員の人でいつもと変わらずに接してくれる。
ある意味、子どもの男性アイドルと思われるくらいだ。
ここ、エンシェントブルーもブルーガイアほど大きくなく
しょみん的でも遊び場を提供してもらえる。
ある意味では私の始まりとも言える所、
そんなところにある予定ができたらしい。

「いつも楽しく使わせてもらっています!
 カンナギさんもお変わりなく」
「これだけ多くの人たちに来てもらえるなんて
 おどろきだよ。小学生は無料と大きく出たものだから、
 毎日がいそがしすぎて自分の作業が追いつかないね。
 ウオバト広告も国が自らアピールしてるから、
 プール目当て以外の人が来てるね」
「ということはコート化ですか?」
「そうなんだ、役員の人たちが来て見こまれたのか、
 ここも試合場として使われることが決まったよ。
 海でのコート化も予定していたけど、
 カツオノエボシやヒョウモンダコの危険性で
 プールだけになったんだ」
「うわ、今年もはんしょくしやがったのか。
 川にメジロザメが来てるくらいだから相当だな」
「いつものオキナワですね、とても面白くなりそうで
 良い試合ができるよう私も期待しています!」
「ハハハ、水事業だけはどこよりも早かったからね。
 そういえば、リングランチャー型を思いついたのは
 君だって聞いたけど?」
「え、ええ、本当にただの思いつきですけど」

水輪っかを打ち出すリングワリング。
なんと、ウオバト公式で試合でも使われることになって、
九州期待の新兵器とまで呼ばれていた。
データ表記を観たところ、5mまではポイント100。
それから頭、どう、手足のどこに当たっても10と
どんな判定かこれまた不思議な仕様である。
コスギ校長先生がほとんど手がけてもらっただけで、
さらに完成されるまでのなぞも残されていた。

「ぼくも規格書を細かく見させてもらったけど、
 個性的すぎてオキナワのシンボルと言いたくなったよ。
 水を打ち出すのに10秒かかるけど、
 キレイな輪の形を成すのがなやみどころだったね」
「でも、校長先生は“正体不明の技術が勝手に
 取り付けられていた~”とか言ってました。
 物作りって知らない人とかにすんなりとお手伝いする
 ことがあるのかなって」
「そ、そう・・・」

カンナギさんの顔が固まるようになる。
リングワリングの中身については未だに分かっていない、
ヒッソリと忍ばせた部品もそえて試合の一部になる。
見えない様子でいくつかの会話をこなしていく内。

「あ、ゴメン、私そろそろ帰らないと!」
「そうか、またな!」
「バイバイ!」

といった感じで今年もたくさんの出来事をめぐり、
いつまでもここにはいられない時となる。
船の時間もあってそろそろ帰ろうとしたとたん。


「ユイ君ッ!」
「うわっ、タイゾウさん!?」
「な、なんだいその気まずそうな発言は?」
「い、いえ、すみません・・・」

水泳オリンピックの人とバッタリ。
こちらはハイサイおじさ・・・けふん、選手であって
どんな流れかふさわしくない所で会う。
いつも九州各地にいるからどこかでバッタリ会っても
おかしくないかもしれないけど、おまけとばかり
こういった人とめぐるのもそうなのだろう。

「君がここにいるなんてめずらしい、帰省かね。
 それはそうと、さっそく今年の大会に向けてどうかな?」
「はい、人手不足――あ、いえ、スイミングもスムーズに
 スイスイこなせてスマートにやっています」
「ん? そ、そうかね。まあ、君のことだから問題ないと」

うっかりウオバトと混ざってしまったけど、ごまかせた。
この人はふだん母に物言いとかしないけど、水泳関係で
えいきょうあってきっかけで伝言することもありえる。
ブルーガイアの会員は知られていないけど、
すんなり話すのもあまり良いとはいえない。
私は頭が良い方とはいえないところ、女子の機転で
練習づかれの息ぬきで来たとだけ伝えた。

「ただ、心が落ち着かなくてちょっと・・・」
「そうだったのか、確かに時にはリフレッシュも大事で
 ちがうことをするのも良いね。
 ワタスも今日、ウォーターイベントで呼ばれたから
 豊富な水とのふれあいもありかと思ってね」
「「は、はい・・・」」

これは共通点と言って良いのか、水泳をする者同士の
気苦労に接するハイサイあいさつさだ。
まあ、私の場合はウソをついてここにいるのだけど。
身体はどのみち変えられずに時間がないからと、
すりぬける様にエンシェントブルーを出ていく。
今日はあたふたしたふるさとオチで終わった。
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