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1章 中つ国編

第11話  極彩色の選手たち

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曄園小学校 グラウンド

 気温が38度にもとどく運動すら大変な空気の中。
8月の終わりごろ、校庭でつつましいと思われがちな
3つの着色をもった元気の小さな水玉が飛んでいる。
ソウマとマリ、メンバーといっしょに判断練習をしていた。

プシュッ ピトッ              ピトッ

「えっと・・・右――」
「左下にも付けた」

ラッセルが2丁打ちして指示。
左右同時に赤と緑、モブメンバーはしどろもどろに
顔をふって付着場所を見つける。タイミングをずらしては
打つ方向もちがう所でそれらを素早く見なければならずに、
わずか5秒で消えてしまうので認識も一苦労。
頭で判断してから足が動くまでワンテンポおそい。
となりにいたソウマがいかに自分たちが反射神経が低いと
顔をゆるませた。

「ぼくたちってやっぱりこんなレベルだったんだよね」
「分かってはいたけど、元から運動能力にとぼしいし。
 確かに他と試合しないと分かりようにないから」
「そういえば、ここってまだアサルトライフル型を
 使わせてもらえないんだ?」
「うん、学校からまだ許可が下りない。
 カズキ校長先生も検討するって言ってからも
 全然変わっていない」
「はぁ、もっとズバババンって動けるような物を
 使えたらもっとビートさせられるのに。
 アサルトライフル型を使わせてくれないんだから、
 今はこうしていくしかなさそうだね」
「そうかも」

PTAの気はいまだにお守りの意思が強いようだ。
何しろ道具じたいがろくに強くもなく、
芸術性との結びつきもままならない。
部活を管理する上の制限が何よりの重さを引きずって、
他エリアと試合を1つしてちがいを思い知ったから。
そう意味合いが強くなったのも先の件である。


「ビジョンタクティカルアーツ?」
「ああ、意味は色合いによる戦術。
 ウオバトに芸術性を付け加えた戦法だ」

 黒薔薇小学校での試合後の話。
エイジが言い放った言葉は中つ国から全国に通用する
カラーリング戦略手段を開くという。
先で自分たちがやっていた色で判断する戦法を見ぬいた
きっかけで彼らも同じことをする。
つまり、運動不足を色付け先読みさせておくれをとらない
成果をどうにか起こして世に知らしめたいとのこと。
アートの複数形でアーツと名付けたようだ。
言い方を変えれば連合といった意味もあり、
最終目標となる全国大会のためだと推測すいそく
地方全体という理由はどこから?
個人間の確認とばかりうかがってみた。

「どういうこと?」
「ここ中つ国は今、親たちによる規制が相次あいついでいる。
 文化を名目に体育をおさえようって動きで、
 スポーツムーブメントを下げさせているんだ。
 ウオバトもところどころ中止にさせようってな」
「確かに最近そんなやり方になってきてるね、
 部活すら始めからなかったし」
「おれは、なっとくできない。
 育ちざかりに部屋へおしこめて芸術芸術と一方的な
 おかざり教育ばかりやらせる。
 大人ってのは自分らが慣れないことはてってい的に
 禁止の方へもっていくんだ」
「・・・・・・」
「しまいには水鉄砲すら形を変えさせて、
 アサルトライフル型の使用も少なくなってきて、
 今みたいになる。新しいことって自由だろ?
 こんなバカなことを終わらせたいんだ」

彼は体育の制限が大きくなる今を不満にしていた。
特にここは安全性を重くみなしすぎて運動制限をきつくし、
いつの間にか作られたハンドガン型を持たされて
最小限のことばかりとなり、体のうずきをまねいている。
だれもが内心思っていたけどハッキリとした言い分がなく、
彼が思い切って打ち明けた。

「正直、おれたちもやってられないって思ってたけど、
 今回の試合で分かった。色の認識で運動能力が低くても
 先読みで他より決め手が生まれるかもってな。
 だから、お前はクロミック分子をハンドガン型に
 取り付けたんだろ?」
「うん」
「今、日本各地で新型が次々と作られていて、
 試合場も複数設置する動きが出ている。
 想像がモノを言う時代ってのも大変なんだ。
 水に色をまぜても反則にならないなんてのも変だが、
 お前はどうしてそんな物を?」
「左手が・・・うずいてたんだ」
「片手が?」
「うん、言いづらいけどどこか物足りなさをおぼえて。
 なんだろう、左手で筆をにぎって右でハンドガン型を
 にぎっている内にそうなってきて」
「ほう」

といったやりとりで足りなかった部分が保管。
自分はただ感性を話しただけでその場は終わった。
だから、自分も乗っかりながらも1つ試そうと思った。
色付けはここだけでなく中つ国各地にも広がる。
また、再びいっしょに会うと約束して。


場面は再び曄園にもどる。
向こうからもどってきても内容は頭の中を包んで、
今の様に物事に取り組む。
それが片手の空で、物足りなさがようやく表にうかんで
見えてきたことだ。そんな時。

ドクン

心臓が少しだけたかまった。
運動後のじゅんかんでそうなったのとエイジの言葉を
合わせての期待感でそうなったと思われる。
自分はめったに気持ちが向上しにくい、
物静かに絵をかく時ばかりで生活していたから。
だけど、今回はどこかがちがってじゅんすいに楽しいと、
1つではなく複数の要素が合わさってまとまる。

カラーリング  ウオバト  ムーブメント
    合同強化   大会進出
       全国をアート

今回ばかりは分かりやすく並べて表示。
そこをエイジによって付け足された感じもあり、
一応の目標として脳内で完成した。
自分は、ウオバトを通して世界に 色 を付けたかった。
イメージを絵から飛び出させて水を打ち放ち、
クッションを立体的の仮想かそうデスクトップより表現して
ビジョンタクティカルアーツとしてまとめて。
想像とは本当にやっかいでとらえどころのないものだ。
しかし、ようやく頭から1つの映像ビジョンとして出られた。
これで自分のしたいこともはっきりと明らかになってゆく。

「「シュウウウ」」

グリッ グリッ

そして、一呼吸して落ち着きながらまたかまえ始める。
あれから自分もスタイルを形にすることを意識。
ハンドガン型のグリップを2つにぎってエイム、
映画のガンマンとばかり自己ビジュアルをしたつもり。
かっこつけたがりなポーズと思われがちに、
クッションへ向け続けていた。


「これからどうなるのかな」
「面白そうじゃない!」
「・・・・・・」

ソウマ、マリ、その他の人に見守られる中で
中つ国のムーブメントが1つ生まれようとする。
こうして今年の部活動は終わり、1年後に話が進む。
カラーマジュをひろうさせることが今度の役割。
ウオバトという新ジャンルをここから染めるべく
自分はチャレンジしようと決めた。
どこまでやれるのかまだ分からない。
でも、可能性はありえないところから生まれるもの。
色心理がスポーツ界に新しい試みをもって
来年より、もっとはなやかな世界に変われるだろう。



――――――――――――――――――――――――――
中つ国編はこれで終わりです。
色の観念を水に当てはめたラッセルは全国に
ウオバトでどんなアートを見せつけるのか。
では次編にいきます。
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