スプラヴァン!

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1章 近畿編

第10話  ウオバト部に入る(強制的)

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ショウタ家

 祭りが終わってから何日かすぎて夏休みも後半になる。
それからはいつもと変わんない生活ばっかで、
大きな街でどんだけアホさわぎしようが、
下町ならではの生活にもどる。
オレは小学生、当たり前だ。
人生とは道があり、それぞれの役目をもってるものだから。
で、ダイキと宿題をするハメになる。

「あっちいいぃぃぃ! せんぷうき効いとんのか!?」
「回っとるで、今日はとくに暑すぎや!」

親や兄弟がでかけてる中、こんなことばっかりで
一番苦手なこともやらないといけないからつらい。
でも、今度からはちがう。あれからオレんちはちょっと
変わってきてゆたかになりつつある。

「ったく、子どもも楽じゃないわ。
 勉強なんて社会に出てから役に立つんかいな」
「おっちゃんみたいに物作って売るで良いのに、
 生き様はいつもと変わらんわな」
「お前はシシオドシ作って有名になれたからええやん。
 そんで、何かとくすることあったんかいな?」
「せや、オレんちでもやっとエアコンが付くようなる。
 おっちゃんのおかげや」

生活レベルが1つ上がっただけ。
なんていうか、くらしぶりはいつもといっしょで、
楽できるのもせいぜい生活くらいだ。
んで、また来年も同じ夏がやってくる。
遊ぶだけの人生がいつになるのか気が思いやられる。
そんなわけで仕方なくノートに答えを書いていくと、
意外なやつが家に来る。


ピンポーン

「ごめんくださーい!」
「だれや? ってお前、ヤエやんか!?」

同じクラスの女だった。
こんなクソ暑い中、電話もしないでわざわざ来るなんて
よっぽど顔を合わせるほどなのか。
まさか告白か? ダイキもいるってのにありえない。
暑さのあまり真夏のまぼろしでも見てるわけじゃあるまい。
げんかんにこしをかけてゆうゆうと話すこいつに、
用件は何かと聞くと学校のことだった。

「オレが・・・ウオバト部に?」
「そう、ほら、前の祭りであんたが作った水鉄砲で
 学校も見こみ出て部活にも顔出してほしいんだって。
 ダイキ、あんたも良いって」

どういうわけか部活の方からおよびがかかった。
なんでこんなたいみんぐで?
あの時も大したことはしていなかったのに、
運動部の一員になるなんてずいぶんと上手うまい話みたいだ。
ダイキといっしょ入部はともかく、選手入りまでくると
なんだか変に思えた。

「シシオドシのいりょくが強すぎて会心を始めとした
 新ショットガン計画をやろうとか?」
「そ、今や空前絶後のウオバトムーブを見逃さずに
 学校もとい近畿から本格的なスポーツしたいって。
 だからあんたらも入って!」
「ちょい待たんかい、1こ飛んどるわ。
 確かにオレはシシオドシ作った成果あるけど、
 スポーツやるのとちゃうで?」
「どっちかっつうと、オレら遊びでやっとるのが良いし。
 で、なんでお前がさそいにきたん?」
「ウオバト部のマネージャーやってるから。
 ちょっと興味あるところあって入った!」
「なんやて!?」

ヤエは学校で世話係をやっていた。
小学校でマネージャーなんてふつうやってるのか?
シシオドシを作った成果もみこまれて決まったそうだ。
が、会心は運動部の練習もすごくつらくて
体育よりももっとハードだと有名だ。
確かに運動なら他人より自信がある方だけど、
本格的なことなら勝手がちがう。

「でも、うちらの学校って部活キツイやん。
 他のとこもやめとるのけっこういるっつうし」
「つうか、部活のこもんだれやっけ?」
「ギンジ教頭」
「ゴフォッ!?」

ここでまたあの人の名前、ボディーブローをくらった
しょうげきみたいな感じを受けた。
てゆうか、教頭が運動部のめんどうみってどうよ?
ふつう、下教員が担当するはずだと思うけど。
会心小のボス格が部活のまとめなんて、
マジで戦争の下準備と言いたくなる。

(そういや、祭りの人らも教頭のことをアニキとか
 言ってたわな。学校も国とつながっとるっていうし)

見た目のわりにはけっこう信用されてるんだと思う。
だからといってつらいしメンドイには変わりなく、
宿題もたまってるから気が進まなかった。

「ヤエ、言っちゃあなんやけど今回のところお引――」
「あ、そうそう。今日はもう1人来るんだった!」
「へ!?」

気持ちがまとまってなくまた今度って言おうとしたが、
展開のおそさは作者も読者も許してはくれなかったようだ。


「またうたな」
「「きょきょきょ、きゅきゅっ、おふぉふぉ先生・・・」」

なんと、ギンジ教頭もじきじき家にやってきた。
なんつう流れの早さだ、世界は間でできてるのに
ムダなテンポもまるまるカット。
ヤエのシタリ顔を横目にオレらは逃げるよゆうもなくなる。
そうだ、重要な客人が来たら茶を出せと親に言われたのを
思い出してすぐ準備した。

「「あ、あの、ブルーティーでよければ・・・」」
「わざわざスマンのぉ、ええぞ」

味見してないからどうか分からないけど出す。
ヤエ2人分とごきげんとりにウンザリ。
こういう人ってだまってばかりいてももっと返事を
せまってくるもんだから何か言わないといけない。
そういや、祭りで助けられたお礼を言ってなかった。

「あ、あの、大神祭の時、ありがとうございました!」
「かまわんわ、向こうも新型にこうふんしすぎてのう。
 近畿はそんな連中ばかりや」

ここでも近畿という言葉が耳に入る。
で、かんじんな部活のことを聞くと教頭はこう言った。

「「オレが・・・レギュラー入り?」」
「せや、校長がお前をすいせんした」

キンイチ校長がどういうわけかオレを指名。
つまり、問答無用で5~6年のウオバト部に入って
県大会、運良けりゃ全国大会に出られるということだ。
本格的にやるのは来年からでのこりの今年は練習だけと
試合の様を観るだけ。

「で、でも、オレが入ってもあんま変わるなんて。
 5~6年生もたくさんいるのに、なぜ?」
「6年が40人、今年で終わる。
 5年が15人と少のうてお前に入ってほしいんや。
 それに兄者に言われての」
「「あにじゃ・・・校長先生ですか?」」

キンイチ校長がオレを選んだきっかけはそこから来る。
あのマスコミ連中とやりとりする前に言われたこと、
近畿全土にかかわる問題の理由を知っているんじゃないか
気になって仕方なかったことを思いきって話そうとした。

「あの・・・ぜひ聞きたいことがありまして」
「何や?」
「前にキンイチ校長から言われたことで気になって、
 ちょっと意味が分からなかったので。
 ウオバトがここ全土にかかわるとか・・・」
「正確には・・・国やな」

ギンジ教頭も似た言い方をする、今回ばかりはちゃんと
内容をしっかり聞けるからうかがった。
ここでことの全てが明かされる。
近畿のえらい人たちはウオバト事業で夏の不具合を
どうにかのりきろうと国つながりで色々考えていた。
ショットガン式も壊れやすく、金もかかりすぎて
とほうにくれていたところにオレのシシオドシで変わる。
つまり、戦争を起こすつもりじゃなく水行事から
近畿の有り様を全国にとどろかせようとしたい。
これは別に冷や水をかぶせることじゃなく、
運動できずにちぢこまった生活を変えたいといった
感じで良くしたいというのだ。

「お上の決まりはいい加減なとこもあり、
 ワシら学校も対応に手間どらされとった」
「はい」
「それができるのはお前らやとワシらは見こんどる。
 ここオオサカより新事業活性を果たそうやないか」
「!!??」
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