スプラヴァン!

文字の大きさ
上 下
76 / 131
1章 中つ国編

第9話  表現

しおりを挟む
ラッセル家

「ほう、部活を始めるのか・・・」
「うん、可能性を探したくて。
 最近、運動不足でやりたいと思った」

 ラッセルは夕食の食事をしながら、両親に部活を
始めるととっぴょうしに話した。
他の学校と比べて大した活動もまだしてなく、
異なる空気を味わいたいと思ったけど、芸術家に対して
なっとくされやすいことを言わなければならず。
曄園小学校もこれを用いた可能性をサオトメ校長自ら
認めてもらい、形だけは整えていた。
そこを自分の家庭には通していない。
当然、両親の許可も取らずに始めたから、
ひともんちゃく起こりそう、と思うところ
未然みぜんに防ごうと自分は可能性の観点、
いや、道理のありそうな観念を伝えようとこう言った。

「最近になって、かたうでがダルくなりがちになって、
 そんな時、ウオバトをやっていて教室爆破事件じけんを通して
 どうしてもスポーツにも芸術性を入れてみたくってさ」
「そのスポーツだってうでを使うのでしょう?
 万が一、ケガでもしたら美術も危うく」
「そうか、何もせずにこうかいするよりも
 やれるだけやってみたらどうだ」
「あなた――」
「いや、いい。見出しを感じたなら、それも新たな可能性。
 ラッセルの意向をみてやるんだ」

父は賛成の方向を向いてくれた。
成長期の変化を観ていたのか、スポーツへの時間を
くことを認める。
もちろん保障もなく、無事ですむとも限らず。
母は安定を望んでいるだろうが、活動はんいの広がりを
ひとしがた許してくれた。再び食事が進む。

「それであれを作ったわけだな。
 うでの持て余しから美術を運動感覚に不足し、
 クロミック分子を水鉄砲に取り付けた。
 そこをサオトメ君に認められて部活をしたいと」
「水が決め手だったかもしれない。
 美術のとちゅうで意識して、となりの教室青化で
 合いそうだったから」
「しかし、あまり運動しないお前が始めるのも意外だ。
 どうしてスポーツにそう印象付けした?」
「色が無いと・・・思ったんだ。
 水は最初からそうだけど、どういうわけか
 ぬりたくなって。
 そして、テンポのおそさがうでに不足を感じた。
 自分の学校はなおさらそれで」
「印象という認識の早さをスポーツに取り入れると。
 ちなみに、用いてるのは何色だ?」
「赤、青、緑。
 みんなにも分かりやすく教えるため、
 まだ多くの色はできない」
「・・・光三原色か」

クロミック分子の原理でウォーターガンを使う戦法を
中つ国から採用することはすでに知られていた。
本来なら学校で禁止されている物を用いるから、
反則寸前のすべに反対されるのをかくごしていたが、
幸運なことにことは進んだ。
わずかなすき間にこそ、芸なり神なり宿やどる。
絵をかく以外の世界へ手をのばし、
水のごとく満たしたいと言うべきか。
それを聞いた父はコップを手にしてこう言った。

「事情は分かった、ならば成しえることはあの線か。
 私からすれば、あの可能性を再現できそうだな」
「あの?」
「言葉だけで説得できない領域だな。
 食後の後、庭に来るんだ」

色について父ならではの覚えがあるのだろう。
食事を終えて自分は言われるまま庭に出た。


 父は倉庫から絵画用ボードを持ってきて、
もう夜なのでランプを当てる。
水滴が付いてもしみこまないプラスチック製のボードで、
少しデコボコの板を運んでくる。
さらに片手にはカラーマジュを付けたハンドガン型を
持っていて何かをしようとした。

「今から私も使って打ってみよう。
 お前は光景について印象したものを言ってみろ」
「分かった」

水玉だけでえがくようだ。
絵でもかくのかと思いきや、ちがうらしい。
透明光のランプで色別がしっかり見える間、
ボードにめがけて打つ。
丸く外側から赤、青、緑と色を変えて水玉を付けてゆく。

ピトッ ピトッ ピトッ ピトッ ピトッ ピトッ

「まずは三原色だ。
 さらに中心に向けて色を出すぞ」

ウオバトでも同じく使用する3つの色。
絵を見せるつもりでもない。
そこへ、まだ色を付けるつもりで
もうすでに他の色を生成していた。

ピトッ ピトッ ピトッ

「!?」

内側に紫、水色、黄色が発生。
父は三原色をさらにまぜ合わせて見せた。

「これらをまぜた色がさらに・・・」
「赤と青をまぜて紫、
 青と緑をまぜて水、
 緑と赤をまぜて黄、光の配色がこうなるのは
 知っているだろう」

まだ試合には用いない色も出してきた。
クロミック分子のあつかいにこなれているだけあって、
片手で素早く重ねがけする。
しかし、何の理由が?
まだ使われていない色を見せて作戦を決めるつもりか。
父は中心部を指して聞いてきた。

「まあ、今のところは肉眼視にくがんしできるのはここまでだ。
 では、質問するぞ。ここは何色に観える?」
「・・・・・・白」

紫、水、黄の重なる中心部は光において白。
これは色合い全ての原点で無地むじとして白に見えるからだ。
基本色としてなら、これ以上何もないはず。
しかし、これは信号としてふさわしくない。
太陽の光にまぎれやすく、昼間は直下の明るさで
認識するのは難しいはずだ。

「でも、昼間だとすごく見づらいよ。
 コートはまぶしいし、味方にだって伝えにくい。
 白はやめた方が――」
「でも、本当にそう思うか?」
「思うって、他に何が?」
「芸術家としてなら、見たままの光反射色は
 えがくなと言ったはずだぞ?」
「・・・・・・まさか!?」

自分はある観念を察知して予想外に口を発する。
自ら言う前に父は発言した。










「ゴールデンパターンを目指せ。
 今、私が言っているのは白そのものではない。
 重ねた色合いという意味で他地方に伝えてやるんだ。
 スポーツ界におけるカラーリングをな」
黄金おうごんの・・・図か」

ただの色付けじゃない何かを表現しろと言う。
父は色をこえた印象をしめしてやれと
伝えようとした。
自分は改めて単一にとらわれない表現技法ぎほうを教えられる。
白色は太陽の色。
しかし、正確に言えば白ではない。
白に似た黄金のかがやきは七色がまとまって
その様に見えるだけで、作戦においてどんなパターンか
この時はまだ理解できていなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

Condense Nation

SF
西暦XXXX年、突如としてこの国は天から舞い降りた勢力によって制圧され、 正体不明の蓋世に自衛隊の抵抗も及ばずに封鎖されてしまう。 海外逃亡すら叶わぬ中で資源、優秀な人材を巡り、内戦へ勃発。 軍事行動を中心とした攻防戦が繰り広げられていった。 生存のためならルールも手段も決していとわず。 凌ぎを削って各地方の者達は独自の術をもって命を繋いでゆくが、 決して平坦な道もなくそれぞれの明日を願いゆく。 五感の界隈すら全て内側の央へ。 サイバーとスチームの間を目指して 登場する人物・団体・名称等は架空であり、 実在のものとは関係ありません。

謎の隕石

廣瀬純一
SF
隕石が発した光で男女の体が入れ替わる話

狭間の世界

aoo
SF
平凡な日々を送る主人公が「狭間の世界」の「鍵」を持つ救世主だと知る。 記憶をなくした主人公に迫り来る組織、、、 過去の彼を知る仲間たち、、、 そして謎の少女、、、 「狭間」を巡る戦いが始まる。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...