スプラヴァン!

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1章 中つ国編

第6話  カラーリング1

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色とは人にとって大きな印象いんしょうを与える要素ようそ
水は無色だが、人の工夫でなめらかにあたかもそこに
物がある様な感じを与え、感心や指示させる。
青は進め、赤は止まれ。社会にもすでに似た役割があって
そして、意味を理解して目移めうつりさせてゆく。
自分はそんな液体から新たな世界を広げられる気がした。


曄園小学校 体育館

 時は7月30日の11時。
ラッセルたち児童はいつもと異なる着こなしをして
体育館で自由行動をとっている。
今日は自分たちの絵画をここで展示して
一般の人たちに見せる日で、夏休み期間の一行事で
ソウマといっしょに様子を見回していた。
子ども展示会の様なもので、日本でも芸術分野で
ちょっとした注目イベントあつかいされている。

「今回もまたそこそこいるな」
「将来どこまで可能性があるのか。
 もう、ここで観られているわけだ」

えらい人や一流アーティストもちらほら見かける。
ちなみに、今日は事前に教室へ集められていない。
登校日として設定されていないので、
別に無理して来なくても良いとのこと。
ただ、ここに来場するからには身だしなみだけは
しっかりするように言われていた。

「おれたち男はほとんどタキシードか。
 こういう所にとって相変わらず定番だな」
「まあ、自分も服装なんて普段から意識してないしね。
 男は女とちがってパターンが少ないよ」

どちらも夏服用の白シャツと黒いズボンの構成。
たとえ子どもであろうと、大人向けな格好をしないと
曄園では認められない。親や美術関係者も来ていて、
いわゆる失礼のない服なのがルール。
ソウマとおたがいに見合って口に出さないものの、
身だしなみチェックを認める。
そういえば、マリはまだ来ていない。
彼女とは何も連絡していなかったから
今日について聞いていなかった。
もしかしたら休みで来ないのではと思いきや、
大人の女性を意識した様ないつものききなれた声。

「ごめんあそばせぇ~」
「ええっ!?」

マリは紫色のドレス、青い羽根はね髪かざりを頭の横に
小学生に観えない着こなしで来た。
この格好のために時間をかけていたのか、
来場がおそかった理由がここに見えるほど分かりやすい。
片うでを頭の後ろに、片足をつま先立ちのポーズ。
ハッキリ言って子どものすがたではないけど、
このために来場がおそかったのだろう。
周りにいる女子たちも目が点とばかりあぜん。
ソウマがボソッと感想。

「「今日のドレステーマは異世界令じょう?」」
「何よそれ?」
「いや、紫は現世うつしよ常世とこよの境目を表してるから
 てっきり死後の姫主張とかだろうと思って」
「んなワケないでしょ!
 これは夕闇ゆうやみにひそむハクボの紫じゃけえ!
 今日のあたしは終末のエンドレスパープルよおお!」

つまり、日の終わりをはかなげに伝える表現のようだ。
今は夕方どころか正午にもなってないのに、
時の重ねまではマッチしてないと思う。
ちなみに、マリは興奮こうふんするとヒロシマ弁になる。
特に意味はないけど、言葉の変化も芸の1つだろう。
会場の周囲に気付き、すぐオホホモードにもどる中、
その紫の布地から何かが見えた。


(ん、光?)

マリのドレスから複数光りだす。
時おりクルクル回って見せびらかすせいか、
体育館のライトが反射してそうなっていただけだ。
しかし、このしゅんかん。
彼女のすがたを観た自分は目をめた。

「・・・・・・」

ずいぶんキラキラとかがやく彼女のすがたに、
なんともがたい光景をの当たりにする。
ラメ、それは光のつぶを散りばめたそうしょく品を
付けて目立つようにさせる要素だ。
女子はふだんからそんな物を付けていないが、
こういった会場でよく付けてくる。
ただ、自分にとって見慣れたはずの手法が
今ここでなぜか意識させられた。
それらを逃さないこの目は脳内へつたって
何かをうったえる。


光   つぶ   色別   信号


(色は・・・知らせ・・・フゥオオオゥ)

いや、どちらかと目に入る光景の情報の方だ。
光はあくまでもひらめきへのきっかけ。
そこからドレスの色を通してドアが開いた様に
頭の中で欠けていたものがいっせいに並びだして
ヌルっとゆるく形もなく入ってゆく。
小さい玉が次々と色を変えている感じがして、
印象という言葉がすべて入り終えた後、
そこからある可能性に気が付いた。










「色玉だ」
「え?」

2人は自分の発した言葉にとまどう。
複数の要素が集まって出た一声がそれだった。
もちろん、説明もなしに言い出したから当然。
どうしてこうなった経過までは言い出せずに
今はここにいられない。
自分は2人に急用ができたと言った。

「すまない、今日の食事会はキャンセルする」
「ちょ、ラッセル!?」

このワダカマリは消していけない。
芸術はわずかな印象から新しい可能性が生まれる。
ここを逃すのはあってはならないと念を入れて、
返事を聞く前に自分は展示会場を後にして、
すぐ家に帰った。
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