82 / 131
1章 九州編
第3話 母には内緒で
しおりを挟む
垂水エリア ユイの自宅
時は外も暗くなった午後8:00。
すでに夕食を終えた私は部屋でインターネットをする。
いつもは午後9時くらいに寝るけど、
それまでは友だちとチャットをしたり
昼間とはちがってのほほんとした時間を送る。
スマートフォンを持っていて、女子さながらの話とか
いかにもな事をするものだけど、
今は寝る前にやっぱりちょっとした雑談をしていた。
サイトはカナヅチの部屋。
泳げない人たちがどのように水をこくふくできるか
話し合う子ども用の部屋で、こうしてのぞいては
助言をして水泳ぎらいを少しでも減らす目的もあった。
もちろん、私の名前は一切話さずに参加。
ネット世界は個人情報を公開するのは危険で、
夜中のオキナワの森に入るのと同じく
身元を明かしてはいけないのは常識となっている。
ここではイルカ先生という名前で泳げる方法を教えていた。
――――――――――――――――――――――――――
「みずにかおをつけるのもこわい」
「最初は目を閉じていて少しだけ待っててごらん
顔の冷たさになれたら開けると良いよ」
「水に入ったらどうやって上にいくの?」
「水中に入ったら体の力をぬいて
そうすれば自然にういてくるから」
「バタあしがうまくできないんだけど?」
「足首に力を入れすぎないようにして
魚のヒレみたいに左右順番に動かすの」
――――――――――――――――――――――――――
(あ、ヒレって動かないんだった)
人が魚になれないチャットミスを書く。
質問も内容が基本中の基本ばかりで、
おそらく低学年の子ばかりだろう。
どんな発想か、下手な例え話してしまった。
魚に足が生えたみたいな人魚話はおそらく
伝わっていないかもしれない。
とはいっても、人は地上で暮らしているから当たり前。
環境や地域でそれぞれ活動がちがうだけで、
とりえの育ち方も色々と変わるのか。
私も最初は才能あるくらい人の事は言えなかったけど。
ここで座敷童の声が入るが、この時代の子どもは
当たり前のようにネットを利用している。
今も同じのようだが、行動が制限されつつある夏は
自ずとヒマをもて余すかのように
電子的な交流場に思考をよせ合う場所になりやすい。
なんとなく集まるネコたちも日影を見つけては
コロンと寝そべるのはいつも同じだろう。
動物すら炎天下でフラつくものなどいないのだ。
と、押入れから現れたなぞの言葉もそこそこに、
今日の相談を終わりにして寝ようとする。
そういえば、ミキと買い物に行く予定も立てていた。
だけど、ちょっとした会話から出た言いっぱなしで
いつ行くのかまだ決めてなく、あの子も色々と
予定があるみたいでハッキリと決めていなかった。
だいたいは登校日以外の合間の休みに行けば済むけど、
ちゃんと向こうと時間を合わせないとまたイザコザになる。
そこに1つ付け足すように相談しなければならない人も
こちらにいるけど。
(お母さんに出かけるのを言わないと)
家でもどこかへ行く時は事前に言えというルールもある。
私は母に許可をもらわないとほとんど自由行動もとれず。
いつ行くのが良いか聞きに行く。
台所で家計ぼを書いている母に出かける許可をもらう。
もちろん学校のない日くらいしかないけど、
学校帰りは怒られるし帰ってから行くと二度手間になる。
「お母さん、今度友だちと買い物にいってきて良い?」
「いつごろ?」
「土曜か日曜にしたいんだけど、ミキと約束して」
「土曜は学校で水泳があるでしょ?
私もその日は用事で家を空けるから、次の日曜になさい」
「分かった」
ということですんなりと許可。
少なくとも、自宅にはだれか1人いないとおっつかない
風習はオキナワの時から同じ。
それはともかく、早めに連絡しないと
先に予定を入れられるかもしれないので
部屋にもどってこのことをミキに連絡しようとした時、
セリオから電話がくる。
「「ユイー、今度ウオバトあるけどやらないか!?」」
「え、土曜!? またやるの!?」
「「こないだお前が来て、みんなすげー面白いってんで
再戦しろってよ! なんだ、日曜が良いのか?」」
「日曜はこっちで友だちと買い物にいく約束しているの。
あの子のことだから帰りがいつになるか分からないし」
「「じゃあ、土曜で良いな!
時間はいつもの午後2時で待ってるぜ!」」
「そう、分かった・・・あっ!?」
その日はカゴシマで水泳の練習があるのを思い出す。
うっかりと忘れて土曜にOKを出してしまった。
ふんいきにのまれて、つい時間がズレてしまう。
何も知らないセリオが疑問に聞く。
「「どうした?」」
「・・・イヤ、なんでもないよ。行くから」
あやふやに行くと返事をしてしまう。
電話を切って事態を思い返して顔が引きつった。
(土曜日、水泳があるんだった・・・)
なんという事か、部活がある日に遊ぶ約束をしてしまった。
2つの予定がいつの間にか1つだけとさっかくしてしまい、
先走ってついOKしてしまう。
部活とウオバトの時間は・・・不運にも重なる。
本当にオキナワっ子は日にちも忘れて
大っぴらに遊ぶくらい活発だ。
にもかかわらず、元現地人なのに断りきれない私は
まだひかえめな方なのか。
母には会話に気付かれていない。
今さら取り消しなんて言ったらきらわれるから
電話し直す勇気もなく、迷いが生まれ始める。
はさみうちになった様に判断しなければならず。
どっちへ行くべきか、私がその日にとった行動は・・・。
結局、行った方はウオバト。
汰洋小学校の部活の方は用事で休むと言って、
気付かれずにオキナワへ行く。
ぼうしをかぶったくらいでは船員の人の目を
ごまかせそうにない。私の顔を十分に知っているから、
告げられるとおこられるかもしれない。
とはいえ、行動としてこちらを選んでいる自分。
水泳そっちのけでオキナワに来たとは言えずに、
何かから逃げるように元の故郷に来ていた。
こちらの方が暑いにもかかわらず、とらわれる様に
小麦のはだにさらに照りつけ。
すでに何回も来ているはずのテーマパークにあきもせず、
無意識の内にウォーターガンをにぎりしめ、
水球を打っている私がいた。
今日の試合は男子たちの相打ちで終わったもよう。
やってる事はいつもの平ぼんな事だけど、
事情は友だちへの明かせなさがせなかをたどった。
(水泳・・・ズル休みしちゃった)
母にだまって水泳とウソをつき、ウオバトの方を選ぶ。
さそわれたとはいえ、不意に選んだのはこちらの方。
別に水泳を辞めるわけではないけど、
後ろめたさも増してくる。
水辺に展示されたスイレンの花が水面にゆれながら浮かぶ。
たまにはちがうことをしたいという気持ちがあったのか、
フラフラと私自身も整理しきれずに身を任せて
故郷の水辺の今に体を動かしていくだけだった。
時は外も暗くなった午後8:00。
すでに夕食を終えた私は部屋でインターネットをする。
いつもは午後9時くらいに寝るけど、
それまでは友だちとチャットをしたり
昼間とはちがってのほほんとした時間を送る。
スマートフォンを持っていて、女子さながらの話とか
いかにもな事をするものだけど、
今は寝る前にやっぱりちょっとした雑談をしていた。
サイトはカナヅチの部屋。
泳げない人たちがどのように水をこくふくできるか
話し合う子ども用の部屋で、こうしてのぞいては
助言をして水泳ぎらいを少しでも減らす目的もあった。
もちろん、私の名前は一切話さずに参加。
ネット世界は個人情報を公開するのは危険で、
夜中のオキナワの森に入るのと同じく
身元を明かしてはいけないのは常識となっている。
ここではイルカ先生という名前で泳げる方法を教えていた。
――――――――――――――――――――――――――
「みずにかおをつけるのもこわい」
「最初は目を閉じていて少しだけ待っててごらん
顔の冷たさになれたら開けると良いよ」
「水に入ったらどうやって上にいくの?」
「水中に入ったら体の力をぬいて
そうすれば自然にういてくるから」
「バタあしがうまくできないんだけど?」
「足首に力を入れすぎないようにして
魚のヒレみたいに左右順番に動かすの」
――――――――――――――――――――――――――
(あ、ヒレって動かないんだった)
人が魚になれないチャットミスを書く。
質問も内容が基本中の基本ばかりで、
おそらく低学年の子ばかりだろう。
どんな発想か、下手な例え話してしまった。
魚に足が生えたみたいな人魚話はおそらく
伝わっていないかもしれない。
とはいっても、人は地上で暮らしているから当たり前。
環境や地域でそれぞれ活動がちがうだけで、
とりえの育ち方も色々と変わるのか。
私も最初は才能あるくらい人の事は言えなかったけど。
ここで座敷童の声が入るが、この時代の子どもは
当たり前のようにネットを利用している。
今も同じのようだが、行動が制限されつつある夏は
自ずとヒマをもて余すかのように
電子的な交流場に思考をよせ合う場所になりやすい。
なんとなく集まるネコたちも日影を見つけては
コロンと寝そべるのはいつも同じだろう。
動物すら炎天下でフラつくものなどいないのだ。
と、押入れから現れたなぞの言葉もそこそこに、
今日の相談を終わりにして寝ようとする。
そういえば、ミキと買い物に行く予定も立てていた。
だけど、ちょっとした会話から出た言いっぱなしで
いつ行くのかまだ決めてなく、あの子も色々と
予定があるみたいでハッキリと決めていなかった。
だいたいは登校日以外の合間の休みに行けば済むけど、
ちゃんと向こうと時間を合わせないとまたイザコザになる。
そこに1つ付け足すように相談しなければならない人も
こちらにいるけど。
(お母さんに出かけるのを言わないと)
家でもどこかへ行く時は事前に言えというルールもある。
私は母に許可をもらわないとほとんど自由行動もとれず。
いつ行くのが良いか聞きに行く。
台所で家計ぼを書いている母に出かける許可をもらう。
もちろん学校のない日くらいしかないけど、
学校帰りは怒られるし帰ってから行くと二度手間になる。
「お母さん、今度友だちと買い物にいってきて良い?」
「いつごろ?」
「土曜か日曜にしたいんだけど、ミキと約束して」
「土曜は学校で水泳があるでしょ?
私もその日は用事で家を空けるから、次の日曜になさい」
「分かった」
ということですんなりと許可。
少なくとも、自宅にはだれか1人いないとおっつかない
風習はオキナワの時から同じ。
それはともかく、早めに連絡しないと
先に予定を入れられるかもしれないので
部屋にもどってこのことをミキに連絡しようとした時、
セリオから電話がくる。
「「ユイー、今度ウオバトあるけどやらないか!?」」
「え、土曜!? またやるの!?」
「「こないだお前が来て、みんなすげー面白いってんで
再戦しろってよ! なんだ、日曜が良いのか?」」
「日曜はこっちで友だちと買い物にいく約束しているの。
あの子のことだから帰りがいつになるか分からないし」
「「じゃあ、土曜で良いな!
時間はいつもの午後2時で待ってるぜ!」」
「そう、分かった・・・あっ!?」
その日はカゴシマで水泳の練習があるのを思い出す。
うっかりと忘れて土曜にOKを出してしまった。
ふんいきにのまれて、つい時間がズレてしまう。
何も知らないセリオが疑問に聞く。
「「どうした?」」
「・・・イヤ、なんでもないよ。行くから」
あやふやに行くと返事をしてしまう。
電話を切って事態を思い返して顔が引きつった。
(土曜日、水泳があるんだった・・・)
なんという事か、部活がある日に遊ぶ約束をしてしまった。
2つの予定がいつの間にか1つだけとさっかくしてしまい、
先走ってついOKしてしまう。
部活とウオバトの時間は・・・不運にも重なる。
本当にオキナワっ子は日にちも忘れて
大っぴらに遊ぶくらい活発だ。
にもかかわらず、元現地人なのに断りきれない私は
まだひかえめな方なのか。
母には会話に気付かれていない。
今さら取り消しなんて言ったらきらわれるから
電話し直す勇気もなく、迷いが生まれ始める。
はさみうちになった様に判断しなければならず。
どっちへ行くべきか、私がその日にとった行動は・・・。
結局、行った方はウオバト。
汰洋小学校の部活の方は用事で休むと言って、
気付かれずにオキナワへ行く。
ぼうしをかぶったくらいでは船員の人の目を
ごまかせそうにない。私の顔を十分に知っているから、
告げられるとおこられるかもしれない。
とはいえ、行動としてこちらを選んでいる自分。
水泳そっちのけでオキナワに来たとは言えずに、
何かから逃げるように元の故郷に来ていた。
こちらの方が暑いにもかかわらず、とらわれる様に
小麦のはだにさらに照りつけ。
すでに何回も来ているはずのテーマパークにあきもせず、
無意識の内にウォーターガンをにぎりしめ、
水球を打っている私がいた。
今日の試合は男子たちの相打ちで終わったもよう。
やってる事はいつもの平ぼんな事だけど、
事情は友だちへの明かせなさがせなかをたどった。
(水泳・・・ズル休みしちゃった)
母にだまって水泳とウソをつき、ウオバトの方を選ぶ。
さそわれたとはいえ、不意に選んだのはこちらの方。
別に水泳を辞めるわけではないけど、
後ろめたさも増してくる。
水辺に展示されたスイレンの花が水面にゆれながら浮かぶ。
たまにはちがうことをしたいという気持ちがあったのか、
フラフラと私自身も整理しきれずに身を任せて
故郷の水辺の今に体を動かしていくだけだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
Condense Nation
鳳
SF
西暦XXXX年、突如としてこの国は天から舞い降りた勢力によって制圧され、
正体不明の蓋世に自衛隊の抵抗も及ばずに封鎖されてしまう。
海外逃亡すら叶わぬ中で資源、優秀な人材を巡り、内戦へ勃発。
軍事行動を中心とした攻防戦が繰り広げられていった。
生存のためならルールも手段も決していとわず。
凌ぎを削って各地方の者達は独自の術をもって命を繋いでゆくが、
決して平坦な道もなくそれぞれの明日を願いゆく。
五感の界隈すら全て内側の央へ。
サイバーとスチームの間を目指して
登場する人物・団体・名称等は架空であり、
実在のものとは関係ありません。
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
鉄錆の女王機兵
荻原数馬
SF
戦車と一体化した四肢無き女王と、荒野に生きる鉄騎士の物語。
荒廃した世界。
暴走したDNA、ミュータントの跳梁跋扈する荒野。
恐るべき異形の化け物の前に、命は無残に散る。
ミュータントに攫われた少女は
闇の中で、赤く光る無数の目に囲まれ
絶望の中で食われ死ぬ定めにあった。
奇跡か、あるいはさらなる絶望の罠か。
死に場所を求めた男によって助け出されたが
美しき四肢は無残に食いちぎられた後である。
慈悲無き世界で二人に迫る、甘美なる死の誘惑。
その先に求めた生、災厄の箱に残ったものは
戦車と一体化し、戦い続ける宿命。
愛だけが、か細い未来を照らし出す。
宇宙戦艦三笠
武者走走九郎or大橋むつお
SF
ブンケン(横須賀文化研究部)は廃部と決定され、部室を軽音に明け渡すことになった。
黎明の横須賀港には静かに記念艦三笠が鎮座している。
奇跡の三毛猫が現れ、ブンケンと三笠の物語が始まろうとしている。
深淵の星々
Semper Supra
SF
物語「深淵の星々」は、ケイロン-7という惑星を舞台にしたSFホラーの大作です。物語は2998年、銀河系全体に広がる人類文明が、ケイロン-7で謎の異常現象に遭遇するところから始まります。科学者リサ・グレイソンと異星生物学者ジョナサン・クインが、この異常現象の謎を解明しようとする中で、影のような未知の脅威に直面します。
物語は、リサとジョナサンが影の源を探し出し、それを消し去るために命を懸けた戦いを描きます。彼らの犠牲によって影の脅威は消滅しますが、物語はそれで終わりません。ケイロン-7に潜む真の謎が明らかになり、この惑星自体が知的存在であることが示唆されます。
ケイロン-7の守護者たちが姿を現し、彼らが人類との共存を求めて接触を試みる中で、エミリー・カーペンター博士がその対話に挑みます。エミリーは、守護者たちが脅威ではなく、共に生きるための調和を求めていることを知り、人類がこの惑星で新たな未来を築くための道を模索することを決意します。
物語は、恐怖と希望、未知の存在との共存というテーマを描きながら、登場人物たちが絶望を乗り越え、未知の未来に向かって歩む姿を追います。エミリーたちは、ケイロン-7の守護者たちとの共存のために調和を探り、新たな挑戦と希望に満ちた未来を築こうとするところで物語は展開していきます。
もうダメだ。俺の人生詰んでいる。
静馬⭐︎GTR
SF
『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。
(アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)
VRMMOで遊んでみた記録
緑窓六角祭
SF
私は普通の女子高生であんまりゲームをしないタイプだけど、遠くに行った友達といっしょに遊べるということで、VRRMMOを始めることになった。そんな不慣れな少女の記録。
※カクヨム・アルファポリス重複投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる