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4章 ブラインド編

第13話  太陽の息子

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A.D20年

月日はまたたく間に流れ、変わる日もブランクとブレイントラストの
攻防は平行線を保ち続けていた。
10年前の失敗からどうにか身元が気取られずに生活も交えて、
いつもと同じ行動を続けられて生きる。
すでにアール・ヴォイドで軍事行動による牽制けんせい、クロマキーで
姿を隠しつつ天主機を破壊、回収して地上の役目を果たしていたのだ。
あらゆる手段を繰り出しては反撃されて仕切り直し。
また攻めては逃げ、向かっては退いての連続ばかりだ。
しかし、まだ成功できずにいる。
ブレイントラストの者達は消息を絶ち、
何かの用で地上のどこかにいるのは分かっているものの、
生体情報を取得していないため居場所も特定できない。
直接的な下界への脅威は終息を迎えられたものの、
また影響をもたらす副次作用が新たに生まれる引き金にもなった。


サドガCN ブラインド拠点 指令室

「今日も敵性接近の形跡はありません、天主殻構成組織へ変更した
 CN設定以降、奇襲をかけに来るものもいません」
「予想通り、ここが疑われていないようね。
 これで少しは行動しやすくなれたのは幸いよ」

 ミゾレがアリシアに現状を報告。
サドガCNと名称し、疑似認定させて身を伏せ続ける事ができた。

「そんで、いよいよここもCNと名称付けたってのか。
 お前の言う葉っぱ隠して発破かけられる事はなくなったな。
 確かに入口塞がれりゃ、査察に来るモンも来れねえか」
「前にも言ったけど、放射線蔓延区域としてサド島は立ち入り禁止。
 地上の人達がおいそれと来られない仕様はそのままにしてる。
 当然、ハッキングして強制的に設定してるからヒストペディアにすら
 表記されていない幻のCNみたいな存在だから」

会長のハッキングツールの効果は着実に向こうへの影響を与えられた。
天主殻で設計されたであろうコードの一部のみ割り込んで書き加えた
内容は消去されずに、逆にこちらから乗っ取れた部分もある。
ただ、そんな効果は下界に対して別の影響も及ぼしていたようだが。

「奴らのプログラムはそれ以上乗っ取る事はできねえのか?
 CN解散コードとか、もう戦争はまっぴらゴメンとか書けたり」
「できたら苦労しないわよ、大本となるメインシステムが何か分からず
 ハッキング時も進行状況が停止ばかり起きてて
 明らかに通常のCPUとは違うものだった事が分かったの」
「通常と違うだと? じゃあ、本体は何でできてたんだ?」
「分かんない、不明。何年経っても断定しきれなかったから」

ミゾレは投げやりな口調で最奥の存在を語る。
ダーマとアヴィーの識別もC言語を基本としたコードを用いてると
確定したものの、端の列が根拠不明な帰結文字があったという。
いわゆる電気信号の行き先が有機物にみられるシナプス突起に類似して、
生物的判断がどこかしこにみられると言っていて、機械的な決定でなく
迷いの生じた人の思考も混ざっているのではと推測した。
会話の中では言わないが、サップは以前自身が発言したチーフの息子。
片割れによって制御管理しているのは本当ではないかとよぎる。
アリシアは黙ったまま目を閉じている。
さすがに何度も同じヘマをするつもりもなく、空気を読む。
もう口にはしない、話題を変えて周囲の事情へ移す。

「あ~、やっぱ中に残ってる奴らがわけだな。
 降りて来たのは4人で、2人だけ中にいるしな」
「クロノスが最重要警戒人物だけあって尻尾もやすやすと見せないし。
 操作してるのが人である以上、ハッキングしたって支配は無理」
「天裁っつったっけか、それで襲われる恐れだけはなくなったんだな。
 連中が地上にバラまいたライオットギアってのも、
 部隊のおかげでもう見なくなってきたぜ」
「ケイトのEMIRでゲートを塞いだセカンドプランの一部だけは
 成功できたから、もう円盤から敵機を出される恐れはなくなった。
 でも、それによる問題がまたでてきたのよ。
 市民側の武装化も際立ってるわけ」
「そういや、人の形をしたロボットを引き連れてたな。
 クリムゾンアンガー程強いわけじゃねえけど、
 なんだか逆にあいつらも強くなってね?」
「ライオットギア技術を流用するようになったようだ。
 我々が破壊した部品を回収して自分達の物にし、
 独自ルートで研究、軍事利用にまで発展している」
「ぶっ壊したパーツはこっちで回収しなかったのか?」
「全ては無理だ、破壊時にどことなく現れては瞬時に横取りしていく。
 我々とて、全ての市民の目を見張るなどできない」
「天主殻が塞がれてるのを市民達は知らない。
 極秘事項で動いていた私達が独自に解決するのがあまりにも遅かった・・・」

市民がライオットギアを製造する特徴が見られるようになっていた。
どこかで入手したと思われる人型骨格の規格を用いて兵器を自産、
伝えていなかったはずの技術がどういう訳か散見するようになる。
この時代ではすでに地方に分かたれて完全に対立。
アール・ヴォイド軍の隙を見て、地上に落下した
部品の欠片を回収するCNも出現し始めていた。
自分達のためとはいえ、生活というより交戦のために活動する様は
代えって貪欲どんよくなまでに私物化するに至るとは気が思いやられる。
人型といえばアンドロイドの第1人者がいるものの、
ずっと姿を見ていないとサップが疑問。

「そういやあの坊主、また最近見かけなくなったがどうした?」
「もう寝込んでいる生活がずっと続いているの。
 元から健全な体質じゃなかったけど、私達よりもずっと負担が大きくて
 まともに起きているのも大変みたい」

ミシェルの容態がここ数年から不調で顔も観ていない。
ちょくちょく部屋へ行って面倒みていたのはミゾレで、
任務内容のやりとりや近況の様子を見に行っていた。
独自に何か東京へのアプローチを施していたらしい。
しかし、それすらもできなくなってベッドで寝たきり状態が続いていた。
年齢も30歳を過ぎているが、外見は前とあまり変わっていない。
顔だけやつれた感じで体型は子どもとほぼ等しい形のまま。
たまに夜になって空を眺めている時もあって思いふけているようで、
人目を忍ぶように孤立を望んで外観の何かを求めているようだ。
時にはアリシアチーフと口論になった事もあった。
天に挑むためとはいえ、外界から閉ざされた生活も鬱屈うっくつが溜まるもの。
しかも、最近になってから悪い事情も増えつつある。
新たなブラインド隊員の勧誘活動の最中で、
実働部隊の数十人が潜水艦を乗り逃げしてここに戻ってこなくなった
出来事も起こり、戦力低下も招く。
恐怖心や不安に負けたのか脱退者も数人発生し始めてしまい、
逃走手段による脚も数機失ってしまい広域活動もろくにできなくなり、
メンバー達も次第に統制が崩れかけて往生際も迷いかけた。

「そうか・・・どんな優秀な奴がいようと体は普通だよな。
 こんなんじゃ年ばっか食っちまって人生終わっちまうぞ」
「実働部隊が減少して手が出にくくなったのは否定できない。
 金属の塊をどうにか除ける方法があれば」
「チーフ、他に良い手はねえのか?」
「・・・・・・」

再び解決への導きを迫られる。
オオモリ司令官との通信もここ数年においてなくなり、
呼びかけ招集もまともにできないので限界集落とばかり虚しさの場。
頼りの伝手ですら少しずつ途切れ始めて伸ばしたいところが消えてゆく。
会長も90歳を超えて普通に歩き、話ができるものの先がない。
今までずっと東京近隣でブレイントラストの情報を詮索せんさくしてもらい、
わずかながら技術提供をしてもらっていた。
それでも天主殻への動向を止められず、正体不明の動力停止発生による
力を突き止められずにセントラルトライアドの突入が不可能。
私達も40~50代を迎えて身体もいつまでもつか不明。

だが、まだやるべき使命がある。
ダニエルの残した技術をも継がなくてはならなかった。
私は内容まで全て熟知していない、ドキュメントは最初から自宅になく
彼の脳内かブレイントラストのメモリのみだったはず。
ただ、仮説資料だけはアール・ヴォイドに残してもらっていて
対ブレイントラストの切り札として最後まで収めていたのだ。
あんな出来事が起こらなければ本物もこちらに備えてもらっていたが、
未完成なものまで会長に提出などできるわけもなし。
いつの日か完成に持ち込もうと尽力する。
その資料を目に、胸に決める覚悟をもつ。

 (あなたの技術、無駄にはしない)

かつてダニエルが研究していた金の砂、派生技術だという。
詳細はアリシアでも把握していなかったが、
外敵から身を守る術がある性能をもつ事は分かっていた。
まさか、守られる前に奪われるなんて予想にも思えないとは。
あの病室で断絶された光景は今だに目の裏に焼き付いている。
どんな手段を講じても、必ず悲願は晴らして見せる。
そう思いながら見ていると、部屋のドアが開く。
1人の男が入って来た。










「母さん」

アリシアの息子の片割れ、アポロンと名付けられた者が来る。
アール・ヴォイド実働部隊の1人であり、20歳を迎える部隊筆頭が
新たに加入。
この子も打倒天主殻の一部として作戦に組み込んでいる。
20年前、計画の一部としてクロノスの性質を利用した能力、
アドレナリンディレイも投入して物理的判断力を徹底。
通常の兵を超える身体能力を植え付けている。
会長の招集した者達に実験、成功して強化できた。
こうして直に作戦に我が子を迎えるのも複雑だろう。
でも止められない、ネコの手も借りたい現状に
人の手が実の子どもであっても他に良い方法がなく、
密かに呼称されるクロヒョウのスタンスは失わず。
組織の先導者として今はらしい振る舞いを表面に出す。

「アポロン、部隊の前でそう呼ぶのはやめなさいと言ったでしょ?
 あまり親子関係を強調したら他の人達に贔屓されていると思われて
 不服申し立てを受けるかもしれないの」
「あ、そうだった・・・え~と、シーフ」
「チーフ、それは盗賊よ」

ただ、自分の息子だけは記憶の安定が見込めない。
物忘れが人並みより多く生じてしまうようで、
生まれつきのシナプス切断の特徴だけはどうにもできなかった。
運動神経はとても良いといえども、軍事行為において覚える事が大事。
肉体の動きが良くても物覚えの悪さは実行に影響を及ぼす。
どうしてそうなったのかはまったくもって不明。
アブダクトされた子と対照的な性質・・・と言うしかない。
ミラーツインなどといった現象が私とダニエルの間で生じたなんて
神様が本当にいるならばアンバランスさを叱責したくなる。
まだしばらくの成長と面倒をみるのは必然だろう。
そしてさらに実働部隊への施しはここで終わらず。
まだ性能、機動力を向上させる術を実行させてゆく。
また、アポロンと同期である優秀な人材も参加して次回への作戦の
要となる候補もわずかながらここへ招待できた。


3日前 ブラインド拠点入口










「フリードリッヒ、これよりブラインドに参加します」
「エイコウ・ヴァラルシアと申します。
 御組織に加入できた事を光栄に思います」

 数日後、新たな隊員がここに加わる。
18歳と23歳の2人が参加しにきてもらった。
上はシステムエンジニアで私の母国と同じハーフ、
海外から紛れてAUROに憧れて追究するために来たとの事。
航空機の操縦にも覚えがあるようで向こうでライセンスを取得したという。
危険も省みずにこの列島に来たというのも中々勇敢な行動力をもつ。
下は実働部隊で活動する役割として来る、フリードリッヒの名は
ファーストネームかラストネームか定めてなく母国で最初から
それだけの字しか与えられていなかったという。
話によると幼少時から軍事大国で育ち、基本もすでに色々と熟知。
よって行動力、戦闘力は今までの者達よりも遥かに高く、
アポロンと同等かそれ以上の資質をもっている可能性を認知した。
かつ聡明そうめい凛々りりしい雰囲気も合わせて期待感を膨らませる。

「ブラインドへようこそ、私はアリシア・イゼルファー。
 組織管轄の全責任者を務めている、あの天主殻を解体させるために
 ここでずっと秘密裏に活動しているの。
 この時期、あなた達の参加に大きく歓迎しているわ」

敬礼する2人を前に喜びの微笑を静かに見せる。
初対面の相手に対してはいつもこういった顔付きでリアクションの有無を
大きくさせないようにしている。
そこへ、ブロンドボブカットのエイコウが爽やかな表情で発言。

「ある程度の仕様はだいたい拝見させてもらいました。
 第一印象ですが、感想よろしいでしょうか?」
「構わないわ、何か?」
「ここでは自衛隊と連携をしていなかったとおうかがいしました。
 理由は技術漏えい防止のためだとかお聞きして、
 高度な備品を世に出させないために少人数制にしているとか」
「ええ、そうよ。現在、自衛隊が解散した事で従来の兵器や技術が
 列島各地に氾濫はんらんして懸念していた通り軍事国家そのものに成り果てて、
 謀反などを起こされるわけにはいかないから」
「つまり、少数精鋭でこなそうという事は相当なエネルギー設備も
 大掛かりに人手を使わないような手法も必要となるはず。
 ビークル管理などもAIなどで制御したり。
 例えば・・・AURO技術をふんだんに用いていたりとか」
「ええ・・・備えているわ。ここはそれと大きく関連のある組織で、
 外にあったジェネレーターを観て思ったの?」
「それもあります、ただ、僕の国で教わってきた内容と違うのも
 ありましたが、列島に公表されていたエンジンの規格と比較しても
 遥か数歩先のレベルではないかと推測して」

感想という下にかなり鋭い指摘をしてきた。
彼は事前調査をしていてアール・ヴォイドが名前を変えてブラインドと
名乗っている事に疑問をもっていたと言う。
最初にここへ通された時のウミホタルも周辺のエリアでは使われてなく、
AUROの仕様もこんな小型化していたなど初耳のようで、
海外で造られている規格よりもっと小さくコンパクトになっている
技術で明らかに何かを封鎖している様な節を感じたそうだ。
普通なら自衛隊などの大きな組織と協力してサッサと天に挑めば早い、
にもかかわらずそこを拒否してまで人里隠れて行動するのはおかしいと
誰も事前に説明していなかった事まで述べていた。
母の説明をも一回り凌ぐような若者の質問に思わず大物感を味わう。
横でずっと見ていたアポロンも特徴ある2人を静観。
只者ただものではない何かに、かつての新参者とはずいぶんと異なる。
もう1人の銀髪白人も言葉は少なくも冷たい蒼い目で述べた。

「私も軍人に相応しい働きをするつもりです。
 目前へのエンゲージメントに最適な対応を心掛けてゆきます」
「今、実働部隊はあなた方を含めても5人のみ。
 たったそれだけの数だけど、可能性は0ではない。
 技術革新を内包し続けてきた私達は小さな組織や規格からでも
 細く、強くて固い素質によってどんな困難でも克服。
 そして、軍隊として形態の在り方をも変えてゆく必要がある」
「・・・・・・」
アポロンもメインにあなた方とこれから組み込んでゆく。
 たとえ数が減少してもセントラルトライアドが在る限り、
 目標を解決できる可能性は大きい。
 今度こそ、頑強たるあの金属に向かいましょう」
「よろしくお願いします、アポロンさん!」
「よろしく頼むよ」
「どうも、よろしく」

出直し、前回の失敗から色々と見直す点もあった。
そう、セントラルトライアドの操縦者も改めて選定し直す必要もある。
アポロンをクリムゾンアンガーに、
フリードリッヒをセレストクライに、
エイコウをゴールドペインに、
それぞれにかの3機を担当させて今度こそ目的を果たすために、
それぞれの役割を分担して送る時をまたいだ。


ブラインド拠点 指令室


 しばらくの時が進み、製造と訓練の連続が景色のほとんどを覆う。
チーフとしてのやるべき任務は装備の見直しから。
ただの強化された身体だけでは当然あんな空の塊に挑めるはずがない。
体をサポートする物をどうにかしなければこなせられないので、
やはり科学にすがる傾向はこの世界からどうしても離せないもの。
とはいえ、拠点の中だけで何かを造ろうなど到底不可能。
AURO生成だけで物作りなど100年かけても間に合わない。
だから、周囲のエリアからもヒントを探して得る事も必要だろう。
それについてメンバーと話していた時の事だ。

「チーフ、そういや気になってた事があんだけどな。
 あんたがブレイントラストにいた頃、特待生制度ってもんがあったって
 前に言ってただろ?」
「ええ、コウシが特例として見込みある研究者に対して、
 報酬や雇用期間を待遇する仕組みを作っていた。
 あれは結局、天主殻組織を集めるための囲いみたいなものだったけど。
 どうして?」
「調べたら、あんたらイゼルファー夫婦は最初にそこへ入らなかったよな。
 思えば、先に入った方がもっと奴らの懐探れたんじゃないのか?」

サップに当時の件にを聞かれた。
すぐに入らず、研究成果を上げてからの介入がスムーズに運ぶので
金の砂を提供してから参入して奴らの真髄に潜り込むつもりだった。
最初に言いだしたのは夫。
いきなり高望みして待遇を求めようとする者程怪しまれて警戒の対象となる。
よって、結果を生んでから後々に要求した方が受け入れてもらえると
後手の方法を選んだのだ。

「だから、夫も私もすぐに入ろうとはしなかった。
 ただでさえ企業スパイだった私で身を案じてもらってたのもあるけど、
 制度もきちんとした理由や目的が判明していなかったのも確か。
 ミシェルだってあんな制度怪しすぎて付き合ってられないって
 言ってたくらいだから、子どもだましすら通せなかったのね」
「そうか、地上隔離政策は政府による要請で頼まれたなんて名目で
 実際は世界まるごと支配しようなんて計画だったしな」
「でも、そのせいで得られなかった情報もたくさんありすぎて
 サップの言う通りに逃してしまった事もあったの。
 奴は政府から制限かけられていた技術流出防止を逆手にとって、
 研究独占をあの円盤内部に秘匿。
 所長室の防犯カメラを停止して調べた端末PCすら中はほとんど空、
 クロマキー合成に等しい技術で東京上空に潜ませていたなんて」

私の目論見は本当に浅く、先手を打たれてこんな状況に追い込まれる。
初対面でクロノスが隣にいたのもすでにターゲットを見つけるために
同胞を探し回っていたのだろう。どうあがこうと数には勝てない。
母国でもこことは比較しきれない程数にものを云わせてきた歴史がある。
大掛かりとは確かに単独でこなせずに多数で起こすものだ。
組織は単細胞ではなく多細胞、単だった私は隙を突かれてそうなったから。

「本当、人って1人では生きられないものね。
 もう分かったわ、理解するまであまりにも遅すぎたけど。
 一から出直しで地上の産物から改めて求めようって」
「ホント、科学者ってのはメンドくせえ思考をもってんな。
 まあ分かるぜ、運命なんてどんな天才がいようと読めやしねえ。
 あんたらだって万能の神じゃねえんだ」
「分かってるわよ、それでも才能を集めて成し遂げようとしてるのは
 神の思し召しによる巡り合わせよ。
 あんたも何かの素質があるからここに居させてるんだから」
「へいへい、You are the boss。
 ところで、話を戻すけど巨大空中癌細胞討伐の件だけど、
 そろそろ次の案出さねえとみんな逃げてくぜ?」
「もう少し待ってなさい、まだ打つ手はあるの。
 今日の夜にパスカルから連絡が来るから」

そう、まだここには頼りになる者達がいる。
神が実在するなら人運の縁を家族含めてどんなに与えてもらったのか。
結果を急ぎすぎてはならない、必要な歩調は陸という地続きも同様だ。
ここで途中経過の話は次の都合で省略。
今回は実働部隊に活かせる装具で有効性を見出してゆく。
そこは関東にあるCN。
意外にも達成できそうなエリアの中にある物が私達の目に留まった。
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