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4章 ブレイントラスト編

第14話  国という殻界

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死刑は罪人に対する制裁。
世界より不要と判断された者が現世から放たれる行い。
民主主義の国では独断と偏見で行う事ができず。
古来から独裁者が悪行為もない者にも手をかける時がある。

 こうして存在を誕生させたダニエルをロストさせてしまった。
今度は避難防衛ではなく、目標奪取のために自ら手にかける。
自分の意志で手にかけてしまったのだ。
感覚が苦しいようで痒い、組織の者に銃弾を浴びせてしまった。

「「所長ォォ・・・・」」
「落ち着いて前を向くんだ、冷静に、大丈夫だ」
「・・・・・・」

もつれそうになる脚を見せないようきちんと歩いて主導者たる様を
保とうとし直す。
こんな私を組織先導者に候補、世界再誕を成就させる間において
最年長の貫禄を見せるコウシの言葉を背中ごと押して推される。
あんな行動を起こしても、4人は共に賛同し行動してくれる。
皆も後がなく、それぞれの覚悟をもってついてきてくれている。
本当にこの計画が上手くやっていけるのか懸念を超えた不安がまとう。
もう戻れない、これから禁断のごうに手を染めてしまう私を
止められる者など、もはや誰もいなかった。


セレファイス マザーシステム制御室

ゴゴゴゴゴゴゴゴ ブウウウウゥゥゥゥゥゥン

 5人、赤子を含めた6人はセレファイスに戻り、自衛隊壊滅への
目的に変更して世直しへの算段に注力し始めた。
そして、ブレイントラストビルとセレファイスを分離、
下界の影響から離れようと一旦、上空10000mまで停止させる。
レオはすでに内部に待たせている、あの子も立派な一員だ。
来たるべき生物の象徴ゆえ、決して無駄に置き去りになどするつもりはない。
1人の同僚を手にかけて世界を変える計画を実行、犠牲を避けられない。
4人に背中を支えられて実行を始めた感じは緊張か、不安か、一定にない。
あらゆる感情が混合するもので水分を摂らなければ落ち着かず。
メンバー達は機体の動きを確認して戦況を把握。

「ライオットギア残機1000、待機。
 戦況は好調、劣勢のエリアはほとんどなし」
「AIの誤作動、特になし! バリッバリに連中をなぎ倒してます!
 俺の出番はまだないか」
「あんた、コードもろくに書いた事ないじゃない。
 お得意の無線通信に注力してなさいっての」

メンバー達はAIコードを確認しつつ交戦状態を見守る。
セレファイス中央部に位置するここは子どものCPU化のために、
及び指令室的な役割として使用している。
約00.23㎢程の室内で円状の白く、端に複数の端末があるだけで
元は工房機能だけだったが、こうして世界改変にこれから様々な
システムを構築し始める予定。飾りなどまったく意識しきれない様で、
効率に相応しくないものなど排除して成果のみ追求する。
レイチェルが状況を追って報告。

「2000機、あと数分で全て降下完了します。
 損傷しかけた機体からリフターで回収してゆきます」

アリシアの子をマザーシステムに採用する前に起こした蜂起ほうき
警察に逮捕されるのを未然に防ぐために行う。
全3000の数は所長が可能としていた限界起動数で、
レイチェルの質量収縮技術でセレファイスに大量保管してきた分。
当初から兵器として扱う予定もなかった。生態の再現、復元は計り知れない
能力を誇り、世直しの道具に利用したのはあくまでも私の決断からだ。

(事を起こしたのは早計過ぎたかもしれん。
 だが、直感記憶資質の才は誕生間近にのみ開花しているとも聞く。
 成長してから失ったのでは遅くなる懸念もあった)

赤子とは元より世界の全てを知る可能性がある。
無学とは違う、世界で生きるための見聞き感覚は生物としての活動より
環境と時代と共にどう吸収するか適応できるよう備わっている。
人は特に大脳が発達、許容量は生物界でどんな種よりも優れる。
さらに凝縮された才能をもつこの子はどうしても失ってしまう前に、
我らの主と迎えて備えさせたかった。
彼女をあの場で消していればもっと先延ばしにできたはずだが、
私にはできなかった。伝えた通り、気まぐれに等しく異性に手を上げたら
アメリアやレイチェルにも信頼を損ねて裏切りに遭う可能性もあるから。
地上にも罪なき者達が多くいる、力を振りかざす悪しき存在を消し、
生物を隣に添えて生きさせるため。
私は・・・全滅させるために計画を立ててきたのではない。
一種の増加は多種への拒絶や絶滅へといざなう。
必要と不要を選別し、空いた領域に生物をリロケーションさせて
どんな存在も平等に成立させようとしたいだけなのだ。
今、下界の各地で火の粉が舞っている。
いなくなるというのは死滅させる事、他に最善策はなかった。
肝心の地上制圧に関しては特に問題もなさそうだ。

「ここが正念場だ、次の段階への成否にかかっている。
 要求を彼らに通達するまでの下地を整えるまで天裁を繰り返し、
 枠組足場を築かねばならん。クロノス君!」
「不確定要素よりあぶれる異物、動体処理。
 まずは、そこから始めるとしよう」

主要施設から急襲する作戦を展開。
インターネットサーバー、国会議事堂、軍事行動に有利な組織を中心に
各地方を分断、孤立化するよう潰してゆく。
物理上、最も障害となるのは自衛隊。
攻撃力と防御力を備えた彼らが確実に抵抗してくるので、
最初から最後まで慎重に刈り取らねばならない。
アリシアの通告で自分達の顔も周知されるので、一端の情報遮断も重要。
ここを削げば、後はやりように事が運べられる。
見込みは80~90%。
生物型は想像を絶する機動力をもち、戦車やヘリの性能すら超えられて
等身大より一回り大きなそれらは通常の生物よりも強大。
アイザックの好きなパニック映画に登場するような巨大生物は
確実に現実世界においても同様な影響をもたらしている。
アサルトライフル系は効かず、ロケットランチャー系の爆発物も
検査で耐性は成形炸薬弾から発生する約12ktまでの威力に耐えられ、
白金装甲が上回っている。AUROによる分解力にはまだ不安定さもあるが、
下界の技術力をかんがみれば優位に立てるポジション。
生物を模した型は従来の規格をも凌ぐ行動力を誇り、
ダニエル急襲時からすでに発動した。
所長、及びブレイントラストの理想を果たそうと地上の世界を制圧しに、
約2000体の機械生物達が次々と降り立っていく。


地上の世界

 火と煙の中で逃げ惑う人々、悲鳴と怒号が交わる最中さなか
自衛隊が通信し合い、または途切れ途切れに発生する孤立化の中に
なけなしの力で抵抗し続けていた。

「第6師団長、応答せよ!」
「返事がありません、ロストしたかと・・・」
「こちら第2師団、砲撃してもダメージ希少。対策求む!」
「あの動物型は無線で駆動している・・・EMPを投下せよ!」
「効きません、電磁妨害質のある何かでさえぎっています!」
「どんな素材なんだそいつらは!? 鹵獲ろかくした班はいないのか!?」

現場で応戦していた分隊長どうしで相手の特徴を視合って報告。
ロケットランチャーやグレネードも効かない外装に恐れを抱きつつ、
中身をどうにか調べようとしたものの、検知にかけられる様子もなく
まともに通用できる成果へ進められずにいた。
着弾はしているはずで火薬の爆撃を与えているものの、
壊れる様子がまったくなく平然として動き続けている。

「赤外線センサー、内部を確認できません!
 装甲もまったく異なる素材で造られていると推測!」
「馬鹿なァ、5ktの威力だぞ。高層ビルですら崩壊できるのに
 たった数mの物体のどこにそんな耐久性があぁ・・・」
「「国会議事堂、施設全て崩壊されました!
  生き残った議員はある程度避難完了しています」」
「計37班、通信が途絶えて対応不可能。
 これ以上、数に対処しきれない。海外に応援を要請してくれ!」
「「海外は要請に応じないそうだ、独立体制化した国への参加は
  メリットも見込めないと。自国だけで対処するしかない」」
「オキナワ国軍はこっちに来てくれないのか!?
 戦艦イーデス艦隊はどうしてるんだ!?」
「向こうも応戦しているが手応えなし、ミサイルもあの円盤に
 着弾できずに途中で落下してしまうらしい」
「「そんな・・・馬鹿な」」

独善的なこの国に協力する他国などいなかった。
国債も売り払い、一方的な貿易ばかりの政治に見放されたあげく、
物資の補給すらも輸送してもらえずに静観されるだけ。
防衛大臣も総理大臣行方不明の現状に独断で判断していたものの、
規格が遥かに超えたモノとの解決策がほとんどない。
迫りくる1機1機の強力なる固体に対抗する術もなく、
政府のリソースがじりじりと削られてゆく。

ズバッ ガブッ ズシャァッ

「ギャアアァ!」
「グオエアァ!」

生物型の行動は獲物を狩る動作とほとんど等しい。
空腹になるはずもない捕食行為はただ、攻撃という命令信号に変換して
類似した動作に等しく、それらしく起こしているのみ。
戦力差はただ、硬質とエネルギーの違いだけで結果は自然界の様と
ほぼ変わらない光景なのかもしれない。


 クロノスは欠かさずに様子を観察して反逆者の様を黙認。
ドラコの旋回性能に戦闘機は追いつけず爆撃され、
スミロドンに戦車をひっくり返されて陸上制圧、
テレフォシデイの節足に障害物を乗り越えられ侵入されて
手の内が易々やすやすと攻略されていく。
銃弾も貫通できず、その場しのぎで打撃を試みるも膂力りょりょく及ばず。
圧倒的な攻撃力を誇る生物型の粛清しゅくせいに遭う自衛隊。
内の1機体に内蔵されたカメラで外の様子を眺めると、
そこには下層階の害虫が尻もちをついていた映像も見えた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
「「勘弁してくれよ、なぁ、もうしねえからよ!」」
 (奴らの仲間か・・・)
―――――――――――――――――――――――――――――――――

レオに危害を加えた奴の仲間だ。
何を今更命乞いのちごいしているのか知りもしないが、
ほとんど信用に値する言葉ではないととうに確信している。
眼つきだけが以前と全く変わっていない。
ある意味では自衛隊よりも遥かに不必要な存在で、
放っておけばまた罪を生み出すのは必定ひつじょうだろう。
ある意味、手遅れになったものなど今後の世界には必要無し。

「無知は“罪”。理性で自我を制御できぬ者は無価値」

ズブッ グチャ

―――――――――――――――――――――――――――――――――
「「ぐひゃっ、くちぅっ、くちょっ」」
―――――――――――――――――――――――――――――――――

一言のみ交わしながら、奴の死に様を拝見する。
スミロドンは輩のペッゾディカルネを容赦なく切り裂いた。
本当に勢いだけで何もできない、有機体という存在など水分の塊で
AUROの可能性がとてつもなく壮大なのが分かる。

「金属に魂は無し、悪しき肉の塊に沈静化を。
 小さな火種も続けば大きく燃え広がり業火となる。
 低能達は“そこ”が理解できなかったな」

プツッ

火を嫌うはずの生物が火遊びを楽しむなど大きく矛盾するもの。
理無く熱を含む有機物にしては燃え過ぎだ。
仕方がない、身の程知らずだからこうなる事すら想像もできない。
だから似た者同士で集い、威圧の塊で台頭した気になる。
新種の生物が誕生して対応、対抗しきれる者も同様か。
映るみにくい塊をよそに、さっさとモニター画面を切り換え
清々しい空の観えるテラスへと移動する。


セレファイス 外周廊下

 朝焼けの時刻でオレンジ色の光が射しこめてくる。
マジックミラーのオープンテラスの側に来た私は空の世界を目に、
広大な外観を身に浴びるように立っていた。
元から自然界はこれほどまでに美しく、
全生物に等しく浴びさせる太陽は系統の中心に位置。
戦闘機もAURO検知システムで動力炉に干渉させて接近できず、
予想と異なって静かな空気を漂わせている。
何も無い空間、そのはずでも宇宙空間は無でなく+-の電気性質であり、
ビッグバンの拡張よりエネルギーを冷却後に張り巡らせてきたという。
エネルギー保存則より決して消滅しない現象は物質なり、空間なり、
条件下であらゆる存在へ残してゆく。
冷え切った世界の後より生物も清く活動、ここも等しい領域に飛び立つ。
コウシ所長も鳥類に憧れている気持ちもよく理解できる。
これも波長か、本人から無線がきた。

「「テラスに行ったのかね、どうしたのだ?」」
「いえ、直に観ておきたいものがありまして」

彼らは私の行動に疑問をもって聞きにきたのだろう。
高度10000mで実際目に入るのは雲や大陸のみ。
指令室でどこに異常が発生しようとすぐに分かるはずで、
わざわざ外周を見回る意味は基本ない。
別に重要な報告でもない、不意に意識していた事を口に出す。

「ミサイル、火薬の脅威は地上と比較しても圧倒的に少ない。
 空は・・・いと静かで、物もエネルギーも静寂さをもたらせます」
「「別にセレファイス周囲の異変は全てこちらでも察知できる。
  動力検知も十分備えているのに何を今更――?」」
「私は・・・これが本当に正しかったのかと思っておりません。
 着実に下界の腐敗は削減され、確かに障害となるものはことごとく
 生物型によって消え去ってゆけるでしょう。
 それでもまだ、理想に近づく光路こうろがどこにあるのか想定できずに、
 実際にここが真理となりえる正解ルートなどみえていないのに、
 真の意味でプラチナレプリカントを導けるのか」
「「・・・・・・」」

実際、制圧と支配の道のりが果たせても、その後の流れが本当に
理想に近づけるのか不確定なところがある。
自衛隊も全て片付けられる実力をもち、私達が突然下界に向けて
政権を打ち立てたとして本当に理解してもらえるか不安に思えた。
プラチナレプリカントに生物の尊重を植え付けるには元から
動物に対する評価や畏敬いけいの念などもち合わせた観念が必要で、
正当たる対応がきちんと成立させる算段に疑問が浮かぶ。
独裁政権は総生産量も低下しやすい、前向きに生きる意志をもたなくなる
風潮も起こりやすく、生活圏の不活性化も生じるはず。
生物だなんだと共存主義を吹聴したところで絶対に理解できない者も
必ずどこかにいるもの。ただでさえ完全無欠になりきれないのも人間、
反抗勢力に再び新勢力が介入する恐れもある。
私のように不意討ちする者もいずれ現れるかもしれない中で、
民主主義、社会主義、共産主義のどこに適応させるべきか惑う。
所長は言葉の中に含まれた習慣を見抜いたように言った。

「「古文語交じりという事は多少の迷いがあるのだな、
  現状の行為に思わず意味を再認識しようとしたのだろう?
  君は何も考えずに行動するはずないが、
  時には思わず行動を起こす時もあるので対応が困る」」
「大丈夫です、もう妙な行動をとるつもりなどありません。
 ただ、世界の成果と真意をこの目と合致させたかったので」
「「君はまだ40と若い、決断も確かに惑いがあるのも理解できる。
  場合が場合なのですぐに答えを申そう。
  我々は正しい事をしている、これは戦争のためではない。
  叡智をもつ者、滅亡に追いやられたものへの救済だと」」
「・・・・・・」
「「彼らが、輩が悪いのだ。集団をみのに土足で他を食い荒らし、
  頂点の管理者政府もリソースを独占させ、理化学研究所を都合よく
  資金をロンダリングさせて自身達のみ送るように仕向けてきた。
  私の反重力も差し押さえられかけたのだぞ?
  だから、こうして腐敗を燃やし、神聖たる使いを下界へ送ったのだ。
  後は以前に伝えた事、どうにもならない現実をどうにかする。
  魂の証明も成せぬ今、死に物狂いにまで知識を奮うしかない。
  成果と真意はすでに起きている事から後々に見出すものだ。
  私もそこは追及するつもりなどないぞ、君が判断した事は私の理想。
  生物再誕へ繋ぐ人との再配置は犠牲をいとわぬ、
  今起こしているのは過程、炎上と化させても新世界への構築は
  どのような様を描こうと実現させたいのだから」」
「ええ・・・」
「「君は本当にマネージメントとしての才能がある。
  AI問題も彼女の子を応用するなどといった画期的なアイデアを
  直感的に想像してみせたのだ。やはり、構築力も本物か。
  世界でも比類なき導き手に、なにものにも代えがたい。
  何があろうとこの世界に居る事が大切なのだ。
  旧時代の倫理につい揺らされてしまったのだろう、
  あまり深く思慮しすぎるのでない、あるなら私達に相談するのだ。
  同僚の命をもらってまで始めたのだぞ?
  原点回帰とばかり規格していた、それだけの価値と意味をもつ。
  ダニエル君に告げた白金の軸というものはな」」

人生経験の長による弁護は私の隙間を隅々と埋めてゆく。
その通り、金銭で測れない価値を見出されて私はここに居たのだ。
直感記憶資質をアブダクト、ロスト前に掲示のような言い分。
白金の軸、いつそんな言葉を思い付いたのだろうか?
そう言われれば、口から発生したこの語源は無意識に飛び出て
ダニエルに向けて放っていた。改めて思い返すと、白金とは所長の
創造物より何かしら影響させるつもりで言ったのだろう。
そこへ統制を目的とした意味で軸と発言したのかもしれない。
ただ、乗り気混じりな発言をしてしまったのも否定できず。
理解不能に根源を自覚しきれずに講釈した感じだった。
だからとはいえ、もう後戻りなど不可能。
成果も真意も成熟してから外界へ通用する口実に過ぎない。
もうあのような奇怪な事などしない、今は意思をもち、目前の現実も
意識し続けて進んでいかなければならないはず。
とはいえ、何か心の中にまだ穴があるような気もする。
私自身が生物に対する関心や価値を認めていないのか、
どことなく納得しきれていない感覚がまだ残っていた感じだ。
無線を切り、改めて外を見直すと横から白い人工毛が伸びてくる。

「「グルル」」
「ああ、永らく待たせたな。もう少しだけ待っていてくれ。
 ようやくお前達の世界が間も無く訪れる」

レオに早く外に出させろとせがまれる。
この子も犠牲によってここに居る、今度は火種の温床を根絶やす。
一哺乳類については理解をもっているのも、人生経験を送ってきた中か。
共に生活してきた縁で保護意識が高くてそうしているかもしれない。
今はまだ危険なので無理だが、完全なる居場所の確立が済むまで
セレファイスの守護者として置かせておくとする。
事が終えたら、本当の自由を与えねばならない。
白金の軸とは存在意義の確立、今はそう定義しておく。
いつか、地上に縦横無尽じゅうおうむじん闊歩かっぽさせる百獣の王たる神路かみじに。

監視から数時間が経つ、下界の戦況は良い方向へと向かいつつある。
ただ、自衛隊もただでは転ばずに潜伏を繰り返して抗戦している。
しばらく同じ様子が続くのは想定内、自身達も普通の人間なだけに
コウシ所長が休憩を勧めた。

「軍部の制圧まで、もうしばらくかかりそうだ。
 後は我々の通達を出すまで、経過を見守ろう。
 もう夜明けだ、我々も睡眠不足となってはいかん」
「では一時解散しましょう」
「了解しました」

メンバー達も人間、24時間体制で行動し続けられない。
知識者に睡眠を多くとらせる必要もあり、脳の負担を和らげる。
逸脱したとはいえ、生体の理は決して忘れずに抑えておく。
自室に戻る前、もう一度テラスから空を眺める。
朝日が昇ろうとしてきた。薄明が白金の様な色へと変わってゆく。
国は塊、空間は名残りの包み。
物は無意味にそこに在るのではなく、始りより凝縮されて存在。
そして集い、透明の包みにまとわれて世界が成立。
私達は世界の幕を変えようとしてここから始めようとしただけだ。
自分は空と一体化した状態と錯覚せんとばかりに、
思想を浮かべて物語った。


べしこそ全人類、全生命の管理を成し遂げる。
 閉ざされた世界より、CNは新たなる進化を遂げてゆく。
 人も、生物も、空間も、時も、全てを」
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