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2章 関西統一編
第17話 瀬戸内撃戦
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8:00 クマモトCN拠点
犬兵団達が一斉に拠点へ集う。
前線へのサポートを後追いするために今から開始。
人と犬という奇有な光景は今の時代では珍しく見えるが、
九州CNの場合はいつでも変わらずに見られる場面だ。
「では、作戦開始する! 犬兵団出動せよ!」
「了解!」
ラボリ開始、各分隊は一斉に拠点から離れていく。
海まではビークルで数分かけて向かう途中、
マサキは個別に持ちだしてきたエリアルボードを見る。
移動についてこれを用いらない疑問をもち、質問した。
「思ったんだけど、これを使ってサーッと滑って
ここから海まで行っても良かったんじゃないか?」
「高低差のある道じゃ、スムーズに良く動けないって言ってたでしょ。
宇蘇山は傾斜ばかりで敵方面まで向かうには一手間かかるわ。
他の装備を改良できた肝心のコウシ先生がいないから、
メンテナンス作業もろくにできない。
故障したらすぐに直せないし、いざという時くらいよ」
動力源の詳細がまったく分かっていない物を実践して大丈夫なのか。
これを作成した本人がいないので、うかつに悪用はできず、
犬と一緒に乗れる追加機能くらいしか持ち合わせていない。
メンバーが進行状況を確かめてきた。
「ミキ、ルートはこっちで合ってるでしょ?」
「始めはミヤザキ港の船で四国CNに向かって行って
・・・・って、ちょっと待って!」
「どうした?」
指令部から無線の連絡が来たようだ。
しかし、意外そうな目で話を聞き入る。
新たに追加された命令にミキは斜め上に顔を上げだした。
「え、今からですか!?」
「何があった?」
「北九州にも犬兵を送るよう要請が来たの。
敵影の一部が分断して北側から攻めてきたって」
「今からフクオカに向かえだって!?」
狭い区域から敵兵が食い込んできたらしく、まばらに散った相手を
対処しろと自分達のチームに指示される。
数は北側の方が多いそうで、自分達のリソースも割く事になる。
手数が減るリスクを考えた上にミキは苦肉の策をだした。
犬兵団をフクオカルートと四国ルートの2つに分けようと言うのだ。
「なら、僕はフクオカに行こう。
地続きな場所ならどうにかなるはず」
「マサキ・・・」
同じ九州兵同士なのも理由だが、このまま見捨てられない。
フクオカCNにはエイミーもいる。
亀裂ができたわずかな穴を見過ごすわけにはいかなかった。
「あんたならやれるわ、エリアアドヴァンテージならこっちが有利。
ちゃんと戻ってきなさい」
「OKだ・・・了解だ」
「分かれると言っても、足はどうする?」
「さっそくこれを使おう」
メンバーの問いについて再びあのガジェットを挙げる。
ここで、あのボードを使用する事にした。
コウシ先生により造られたという1m弱の板状の乗り物。
さらに横に犬を乗せられる補助板を取り付けたオプションだ。
「丘陵地を渡るにしては遅くなるけど良いの?」
「海沿いのルートで行けば良いだろう。
クマモトからフクオカまでならそっちが近いし、
道路沿いなら平地があってスムーズに進められる」
「決まりね・・・じゃあ、行くわよ!」
意思を確認し合ってミキ分隊は出発。
自分の提案した進行ルートもあっさりと決まったところで、
すぐに向かうべく地上に新たな足を置いて準備する。
キィィィン
(これなら小回りが利く・・・)
ボードにスイッチを入れ、ゆっくりと浮遊する。
以前に何度か試し乗りをしたが、本当に静かな駆動音だ。
地上から30cm程度にしか浮かないが、
やはり平地での移動にのみ有効なのは変わらない。
「じゃあ行くか、犬兵団改めてフクオカに出動する!
皆、僕達は僕達の間合いでやっていこう!」
「了解!」
2時間前 オオイタCN 沿岸地域
6:00にはすでにヤマグチ兵の侵攻は始まっていた。
朝方にやってくるのは稀にしかなく、不意討ちを受けた様に
オオイタ兵は混戦にまみれて苦戦を強いられている。
「こちら第6部隊、これより応戦する!」
「数が多すぎる、フクオカの援軍は!?」
「各CN方面にも敵影確認があった。
だから全てこっちには来られない!」
「ごあああああああおおおおおおおおお!!」
ズガガガガ ドォン ズボォオオン
セピア色のライオットギアが1機、シールド装甲を盾に迫って
ヤマグチ兵の侵攻に苦戦しているオオイタ兵。
彼らの押しの強さに引き下がる状況にまで陥りそうだ。
フクオカCN 沿岸地域
「やっ!」
ブスッ
「ぐっ!?」
フクオカ兵達は中つ国と思わしき兵器を相手に戦う。
やはり、一部の敵兵が正直にも侵入してくる。
ただ、ディサルトを使用する様子もなく、接近戦で挑む。
エイミーの槍捌きにシマネ兵がたじろぐ。
そこに1機のライオットギアが飛びかかってきた。
ブゥゥゥゥン
「グラスホッパーが!?」
一直線に突然滑空してやって来たそれに襲われるフクオカ兵。
シマネ兵の一手に遅しとロストの3文字が浮かんでしまう。
まだ、他の機体もいて自分の位置にもめがけて飛んできた。
「来ないでッ!」
ドスッ ギュイイイイイ ガリガリガリ
「バランスが!?」
搭乗するシマネ兵がハンドル操作に戸惑い、手が離れる。
自分は槍先に付属するドリルで機体に穴を開ける。
動力源を貫いて、グラスホッパーの重心が傾いた。
「チャンスだ!」
「ぬおっ!?」
ドスッ ドサッ
もう1人の味方が搭乗員を小突いて討伐。
地上に落下して翠の塊が停止する。
フクオカ兵達の防衛戦は辛うじて凌ぐ状況にあった。
だが、以前と比べて敵兵もより散開している。
細かな場所における状況に、苦戦がなかなか払えずにいた。
「犬兵団はまだ来ないのか!?」
(マサキくん・・・)
コウチCN拠点 入口
「ただ今お持ちしました!」
「間に合ったか」
医療班が何かを持ってきて兵士達に配布しようとしている。
見たところグリーンテープのようだが、従来品とは異なる画期的と
いわんばかりの逸品で被害者を抑えられると言う。
「エメラルドエイドです、テロメラーゼを促進する効果をより向上
傷を瞬時に塞ぐ優れた薬品のグリーンテープを改良したものです」
「へえ」
「・・・・・・」
このタイミングでそんな高性能な代物を差し出してくるとは。
タカが黙っている理由をメンバー達は十分に理解していた。
ヒロはトミの恩恵を利用された事は分かっていても堪忍の袋。
今は任務に集中させようと交じりに諭そうとする。
「隊長」
「分かっている・・・別に彼らは悪くない」
「えへへ、そうだね。行きましょう!」
有無も言わずにメンバー達はそれを受け取る。
いざ、拠点のロビーから出動しようとした直前に、
タカはクローバーに何か用件をもちだしてきた。
「クローバー、ちょっと頼みたい事があるんだ」
「ん、なんだ?」
フクオカCN拠点 医療室
衛生兵数人が怪我人の収容で対応に追われている中で
一部の者達が新薬の完成に喜ぶ。今回の争乱を機に、実験体の確保を
進めていたところだった。
「ミヤザキCNとの共同研究でついに出来上がった。
よよようやく我々の成果をここで示す時がきた」
「男性被験者3人に投与、いずれも成功です。
敵意、反抗的態度も予想段階より低下。副作用も今のところありません」
「我々ながら、良くできた傑作だ。
行方が分からなくなった研究者がいればもっと早く出来たが」
「ぐふふふぅ、効果が診たいぃ。
さっそく、今回の実戦で使用してみようかなぁ」
「主任、捕虜が1人脱走した模様!
麻酔銃も一丁なくなっています!」
「なんだと!?」
事前に捕らえていた捕虜に試そうと思いきや、逃げられた者もいたという。
中つ国との対応で人員の少ない拠点のわずかな隙間を抜けられてしまった。
カゴシマCN 沿岸地域
「こちらカゴシマ兵、ミヤザキ兵の準備は?」
「済んでいる、いつでも攻撃可能だ。
バリケード設置完了、衛生兵配置も十分だ」
シゲとケンジは共同で海上から上陸阻止をするため待ち伏せしていた。
北ルート側の九州兵は沿岸手前500mまで接近していく。
彼らにとってトットリ兵との戦闘は初めてで、
近接戦闘に特化した情報をあまり知りえてはいなかった。
「シゲ、事前情報じゃトットリは戦闘能力が高いと聞いた。
できるだけ陸に上げずに終わらせるぞ」
「そうだな、何よりも地の利を活かすのが最善策だ」
「分かってると思うが、俺達の世代で一番数が多い。
いざとなればすぐ回すから俺達もあてにしろよ?」
「大丈夫だ、これより防衛開始する!
九州の力量を見せつけてやるぞ!」
「おおおおおおおお!」
九州兵の群れが水平線を埋め尽くす。
待ってましたとばかりに当然ながらもトットリ兵が進んできた。
対するトットリ陣営は九州兵の守りの固さを予想。
生身に進もうものなら手痛く返り討ちされるのは分かっている。
シーナは同行したプラムの手段を先に出させようとした。
「プラム、簡易型放出!」
「はーい」
スウッ
船の中から発動機の群れが飛び出てきた。
毎度、下部から機械的戦略として相手を迎え入れているが、
彼らの戦法に実はある秘訣が隠されていた。
ブンッ
「びっごおお!?」
発動機の大半はほとんど囮役で、本命はトットリ兵自ら
接戦へ持ち込ませる流れが主だったのだ。
あたかもそれが掟とでもいう様に練り込まれた接戦の
ポリシーといえる類なのだろう。
「「迫撃砲・・・撃ちたいのになー」」
対するトットリ船の中。
プラムは得意の迫撃砲の出番がなくボヤく。
この時ばかりは援護射撃をまだ許されていなかった。
巻き添えで後で大目玉を喰らうからだ。
入り乱れた混戦をモニターで確認し、伝えるのみであった。
九州兵の陣形が崩れかけたタイミングを見計らって、
兵も陸に向かい始める。
「ぶるぉあっしゃああああ!!」
ドスッ
「ぼんぶっ!?」
ディサルトを向けていない方向から走り出して首打ち。
グルカバーンのバーナーを射出してバックステップさせた瞬間、
銃を斬り落として腕をつかんで体落とし。
人の立ち位置を考慮した上での体捌きだ。
(思ったより強え・・・)
シゲはトットリ兵を観察する。
行動力の速さだけでなく、接近戦の技も相当な手練れが
数人だけでなく多くいる人弾幕を垣間見れた。
不利と悟ったシゲは作戦変更を指示する。
「接近は分が悪い、中距離に開けて展開しろ!」
「くそぉ、セパレイトでバラバラにぃセファファファ!」
「離れて展開しろと言っただろ!?」
1人のカゴシマ兵が気が触れて抑揚を起こし、命令を無視してしまう。
シゲは彼に気を取られて、むやみに持ち位置から動いてしまった。
側の部下はそれとは異なった光景を垣間見てしまう。
「隊長、後ろおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」
「っか!?」
犬兵団達が一斉に拠点へ集う。
前線へのサポートを後追いするために今から開始。
人と犬という奇有な光景は今の時代では珍しく見えるが、
九州CNの場合はいつでも変わらずに見られる場面だ。
「では、作戦開始する! 犬兵団出動せよ!」
「了解!」
ラボリ開始、各分隊は一斉に拠点から離れていく。
海まではビークルで数分かけて向かう途中、
マサキは個別に持ちだしてきたエリアルボードを見る。
移動についてこれを用いらない疑問をもち、質問した。
「思ったんだけど、これを使ってサーッと滑って
ここから海まで行っても良かったんじゃないか?」
「高低差のある道じゃ、スムーズに良く動けないって言ってたでしょ。
宇蘇山は傾斜ばかりで敵方面まで向かうには一手間かかるわ。
他の装備を改良できた肝心のコウシ先生がいないから、
メンテナンス作業もろくにできない。
故障したらすぐに直せないし、いざという時くらいよ」
動力源の詳細がまったく分かっていない物を実践して大丈夫なのか。
これを作成した本人がいないので、うかつに悪用はできず、
犬と一緒に乗れる追加機能くらいしか持ち合わせていない。
メンバーが進行状況を確かめてきた。
「ミキ、ルートはこっちで合ってるでしょ?」
「始めはミヤザキ港の船で四国CNに向かって行って
・・・・って、ちょっと待って!」
「どうした?」
指令部から無線の連絡が来たようだ。
しかし、意外そうな目で話を聞き入る。
新たに追加された命令にミキは斜め上に顔を上げだした。
「え、今からですか!?」
「何があった?」
「北九州にも犬兵を送るよう要請が来たの。
敵影の一部が分断して北側から攻めてきたって」
「今からフクオカに向かえだって!?」
狭い区域から敵兵が食い込んできたらしく、まばらに散った相手を
対処しろと自分達のチームに指示される。
数は北側の方が多いそうで、自分達のリソースも割く事になる。
手数が減るリスクを考えた上にミキは苦肉の策をだした。
犬兵団をフクオカルートと四国ルートの2つに分けようと言うのだ。
「なら、僕はフクオカに行こう。
地続きな場所ならどうにかなるはず」
「マサキ・・・」
同じ九州兵同士なのも理由だが、このまま見捨てられない。
フクオカCNにはエイミーもいる。
亀裂ができたわずかな穴を見過ごすわけにはいかなかった。
「あんたならやれるわ、エリアアドヴァンテージならこっちが有利。
ちゃんと戻ってきなさい」
「OKだ・・・了解だ」
「分かれると言っても、足はどうする?」
「さっそくこれを使おう」
メンバーの問いについて再びあのガジェットを挙げる。
ここで、あのボードを使用する事にした。
コウシ先生により造られたという1m弱の板状の乗り物。
さらに横に犬を乗せられる補助板を取り付けたオプションだ。
「丘陵地を渡るにしては遅くなるけど良いの?」
「海沿いのルートで行けば良いだろう。
クマモトからフクオカまでならそっちが近いし、
道路沿いなら平地があってスムーズに進められる」
「決まりね・・・じゃあ、行くわよ!」
意思を確認し合ってミキ分隊は出発。
自分の提案した進行ルートもあっさりと決まったところで、
すぐに向かうべく地上に新たな足を置いて準備する。
キィィィン
(これなら小回りが利く・・・)
ボードにスイッチを入れ、ゆっくりと浮遊する。
以前に何度か試し乗りをしたが、本当に静かな駆動音だ。
地上から30cm程度にしか浮かないが、
やはり平地での移動にのみ有効なのは変わらない。
「じゃあ行くか、犬兵団改めてフクオカに出動する!
皆、僕達は僕達の間合いでやっていこう!」
「了解!」
2時間前 オオイタCN 沿岸地域
6:00にはすでにヤマグチ兵の侵攻は始まっていた。
朝方にやってくるのは稀にしかなく、不意討ちを受けた様に
オオイタ兵は混戦にまみれて苦戦を強いられている。
「こちら第6部隊、これより応戦する!」
「数が多すぎる、フクオカの援軍は!?」
「各CN方面にも敵影確認があった。
だから全てこっちには来られない!」
「ごあああああああおおおおおおおおお!!」
ズガガガガ ドォン ズボォオオン
セピア色のライオットギアが1機、シールド装甲を盾に迫って
ヤマグチ兵の侵攻に苦戦しているオオイタ兵。
彼らの押しの強さに引き下がる状況にまで陥りそうだ。
フクオカCN 沿岸地域
「やっ!」
ブスッ
「ぐっ!?」
フクオカ兵達は中つ国と思わしき兵器を相手に戦う。
やはり、一部の敵兵が正直にも侵入してくる。
ただ、ディサルトを使用する様子もなく、接近戦で挑む。
エイミーの槍捌きにシマネ兵がたじろぐ。
そこに1機のライオットギアが飛びかかってきた。
ブゥゥゥゥン
「グラスホッパーが!?」
一直線に突然滑空してやって来たそれに襲われるフクオカ兵。
シマネ兵の一手に遅しとロストの3文字が浮かんでしまう。
まだ、他の機体もいて自分の位置にもめがけて飛んできた。
「来ないでッ!」
ドスッ ギュイイイイイ ガリガリガリ
「バランスが!?」
搭乗するシマネ兵がハンドル操作に戸惑い、手が離れる。
自分は槍先に付属するドリルで機体に穴を開ける。
動力源を貫いて、グラスホッパーの重心が傾いた。
「チャンスだ!」
「ぬおっ!?」
ドスッ ドサッ
もう1人の味方が搭乗員を小突いて討伐。
地上に落下して翠の塊が停止する。
フクオカ兵達の防衛戦は辛うじて凌ぐ状況にあった。
だが、以前と比べて敵兵もより散開している。
細かな場所における状況に、苦戦がなかなか払えずにいた。
「犬兵団はまだ来ないのか!?」
(マサキくん・・・)
コウチCN拠点 入口
「ただ今お持ちしました!」
「間に合ったか」
医療班が何かを持ってきて兵士達に配布しようとしている。
見たところグリーンテープのようだが、従来品とは異なる画期的と
いわんばかりの逸品で被害者を抑えられると言う。
「エメラルドエイドです、テロメラーゼを促進する効果をより向上
傷を瞬時に塞ぐ優れた薬品のグリーンテープを改良したものです」
「へえ」
「・・・・・・」
このタイミングでそんな高性能な代物を差し出してくるとは。
タカが黙っている理由をメンバー達は十分に理解していた。
ヒロはトミの恩恵を利用された事は分かっていても堪忍の袋。
今は任務に集中させようと交じりに諭そうとする。
「隊長」
「分かっている・・・別に彼らは悪くない」
「えへへ、そうだね。行きましょう!」
有無も言わずにメンバー達はそれを受け取る。
いざ、拠点のロビーから出動しようとした直前に、
タカはクローバーに何か用件をもちだしてきた。
「クローバー、ちょっと頼みたい事があるんだ」
「ん、なんだ?」
フクオカCN拠点 医療室
衛生兵数人が怪我人の収容で対応に追われている中で
一部の者達が新薬の完成に喜ぶ。今回の争乱を機に、実験体の確保を
進めていたところだった。
「ミヤザキCNとの共同研究でついに出来上がった。
よよようやく我々の成果をここで示す時がきた」
「男性被験者3人に投与、いずれも成功です。
敵意、反抗的態度も予想段階より低下。副作用も今のところありません」
「我々ながら、良くできた傑作だ。
行方が分からなくなった研究者がいればもっと早く出来たが」
「ぐふふふぅ、効果が診たいぃ。
さっそく、今回の実戦で使用してみようかなぁ」
「主任、捕虜が1人脱走した模様!
麻酔銃も一丁なくなっています!」
「なんだと!?」
事前に捕らえていた捕虜に試そうと思いきや、逃げられた者もいたという。
中つ国との対応で人員の少ない拠点のわずかな隙間を抜けられてしまった。
カゴシマCN 沿岸地域
「こちらカゴシマ兵、ミヤザキ兵の準備は?」
「済んでいる、いつでも攻撃可能だ。
バリケード設置完了、衛生兵配置も十分だ」
シゲとケンジは共同で海上から上陸阻止をするため待ち伏せしていた。
北ルート側の九州兵は沿岸手前500mまで接近していく。
彼らにとってトットリ兵との戦闘は初めてで、
近接戦闘に特化した情報をあまり知りえてはいなかった。
「シゲ、事前情報じゃトットリは戦闘能力が高いと聞いた。
できるだけ陸に上げずに終わらせるぞ」
「そうだな、何よりも地の利を活かすのが最善策だ」
「分かってると思うが、俺達の世代で一番数が多い。
いざとなればすぐ回すから俺達もあてにしろよ?」
「大丈夫だ、これより防衛開始する!
九州の力量を見せつけてやるぞ!」
「おおおおおおおお!」
九州兵の群れが水平線を埋め尽くす。
待ってましたとばかりに当然ながらもトットリ兵が進んできた。
対するトットリ陣営は九州兵の守りの固さを予想。
生身に進もうものなら手痛く返り討ちされるのは分かっている。
シーナは同行したプラムの手段を先に出させようとした。
「プラム、簡易型放出!」
「はーい」
スウッ
船の中から発動機の群れが飛び出てきた。
毎度、下部から機械的戦略として相手を迎え入れているが、
彼らの戦法に実はある秘訣が隠されていた。
ブンッ
「びっごおお!?」
発動機の大半はほとんど囮役で、本命はトットリ兵自ら
接戦へ持ち込ませる流れが主だったのだ。
あたかもそれが掟とでもいう様に練り込まれた接戦の
ポリシーといえる類なのだろう。
「「迫撃砲・・・撃ちたいのになー」」
対するトットリ船の中。
プラムは得意の迫撃砲の出番がなくボヤく。
この時ばかりは援護射撃をまだ許されていなかった。
巻き添えで後で大目玉を喰らうからだ。
入り乱れた混戦をモニターで確認し、伝えるのみであった。
九州兵の陣形が崩れかけたタイミングを見計らって、
兵も陸に向かい始める。
「ぶるぉあっしゃああああ!!」
ドスッ
「ぼんぶっ!?」
ディサルトを向けていない方向から走り出して首打ち。
グルカバーンのバーナーを射出してバックステップさせた瞬間、
銃を斬り落として腕をつかんで体落とし。
人の立ち位置を考慮した上での体捌きだ。
(思ったより強え・・・)
シゲはトットリ兵を観察する。
行動力の速さだけでなく、接近戦の技も相当な手練れが
数人だけでなく多くいる人弾幕を垣間見れた。
不利と悟ったシゲは作戦変更を指示する。
「接近は分が悪い、中距離に開けて展開しろ!」
「くそぉ、セパレイトでバラバラにぃセファファファ!」
「離れて展開しろと言っただろ!?」
1人のカゴシマ兵が気が触れて抑揚を起こし、命令を無視してしまう。
シゲは彼に気を取られて、むやみに持ち位置から動いてしまった。
側の部下はそれとは異なった光景を垣間見てしまう。
「隊長、後ろおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」
「っか!?」
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