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2章 関西統一編

第11話  金の結合力

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「本当なの?」
「「ええ、間違いありません。
  行方不明だった第75部隊が連絡が入り、無事と報告」」

ヤエはオペレーターから再確認するように聞き直した。
捕らえられていたオオサカ兵がトットリCNによって
解放されていたという情報が入り、キョウトの海岸エリアまで
向かっていく。


キョウトCN東丹後エリア 港

「オオサカの者だな?」
「ただいま・・・戻りました」
「あんた、無事だったの!?」

 やつれて疲れ切った味方をすぐに確保して連れて帰る。
ヤエは理由をトットリ兵に事情聴取を試みると、
彼らも捕虜を解放した経緯が理解できずに決まったと述べたのだ。
その事実を聞いた彼女は口が閉ざす事も忘れていた。
ここ近畿地方にも1つの大きな動きが見られ始めてゆく。


オオサカCN 拠点

 キンイチ司令が弟、もとい第1部隊隊長のギンジと話をしていた。
突然の撤退命令を送られ、当然の様に兄に理由を迫る。

「西と同盟を?」
「そうや、またとない千載一遇せんざいいちぐうやろうに」

ギンジは沈黙している。
同盟という予想外な展開に呆れと無念の表情をとるのが分かった。

「・・・・・・」
「納得いかんか?」
「・・・・・・いや」

肯定するも、話を聞いた一瞬に拍子抜けした顔をキンイチは
見逃さなかった。

「お前は昔から角を立てすぎてんのや。
 丸く柔軟に事を進ませるのも大事やろが」
「分かっとる」
「今は隊を止めておけ、事が済んだら伝えとく」
「司令、時間です」
「ああ」

ウィーン

多くも語らずギンジは指令室から出て行く。
実力主義にこだわる弟だからこそ、こんな結末に納得できないのは
予想の範疇内にある。だが、そう言うしかできない兄は
無駄な命を流させない流れを優先する意志を崩さなかった。

そして、すぐ後に司令官会議は始まった。
中つ国CNと近江CNの面々が話をしている。
例の同盟で詳しい理由をキンイチ司令が聞き出していた。

「殊勝な心がけやが、今回同盟をしたいという了見はなんなんや?」
「前回の件について、こちらも想定外ゆえに対応が遅れました。
 我々はあなた方から譲歩じょうほされた資源を返還するという所存です」
「?」

オカヤマ司令官が奇妙な事情を発する。
意味が伝わっていない、近江側が侵攻を行った件についてなのか。
それで何故、同盟をしたいという意向になるのか、
近江司令官は詳しく聞き出した。

「さかのぼること過去の出来事について語る必要があるようです。
 ただ単に私達が愚かな選択をしてしまったというだけです」
「どういう意味や?」
「我々が扱っていた金の資源。
 掘り起こされた当物は元々そこにはなかった物で、
 今時代、A.D100年よりようやく発覚したものだったのです」
「そうです、トットリに埋蔵されていた金は中つ国産ではなく、
 元々あなた方の物だったからです。」
「その金は元々こっちのモンやったと!?」

これらの金は元々オオサカの産物だったと語る。
採取した場所はトットリなのは間違いない。
ヒロシマ司令官が続けて説明した。

「徳山埋蔵金、こちらのヒストペディアにはそう記載されています。
 最近になって確認されたものです」
「埋蔵金が最近になってから判明したと?
 司令官ならば、全ての項目を閲覧えつらんできるはず」
「先日、我が最高司令官はロストしました。
 彼は我らの歴史に関する最高機密を所持、
 後に露呈ろていにより新たな記述が確認されたのです」
「!?」

続けてその詳細が語られていく。
およそ100年前、オオサカで大量の金が発掘された。
金融機関による追求により、多くの利潤を巡る大量の金が略奪される
事件が近江界隈で多発していた。
だがある日、実行者の1人がトットリの知人に大量の金を渡したという。
理由は定かではないが、該当する所有者の記述により
元オオサカの物であるのに違いはなかった。

「そんな逸話いつわがあったとは。
 しかし譲り渡したのならば、所有権はもうそちらにあるのでは?」
「かもしれません。ただ、こちらもこちらで整理・・・いや、
 何より貴重な鉱脈をもつ事が重要だと思う様になってきたんです。
 あなた方の大切なモノを奪っていました。
 “人”という大事な人脈を」

金という接点、昔にあったつながりが戦争という形に変貌へんぼうする
不条理を終わらせたい。
あの天主殻の規律など誰も心底従うはずがない。
アキヒコが続けて話した。

「悪い場当たりで、これも縁起物というのでしょうね。
 別に今となって、あなた方に恨みも何もない」
「前回の件、これで消化してほしいとまでは言いません。
 今回をもって、同盟という形でお互いに昇華しませんか?」

中つ国CN司令官の説得に近江CN司令官の声が止まった。
散々、命のやりとりをしていて仲を取り持つ事などできるのか。
そこに1人の司令官が話をする。

「“家書万金かしょばんきんあたる”。
 1つの便りが大きな価値と成す場合もございましょう。
 ここは1つ穏便に・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

ワカヤマ司令官の言葉を聞いて、他の司令官達の顔が緩む。
長い沈黙、やはりこういった場面は慎重さが要求されるもの。
お互いに黙る雰囲気に切り口を入れたのは、やはり彼だった。

「予想通りやな」
「?」
「前回の件は・・・その・・・返上金返せのための侵攻やった。
 だから・・・計画通りや」
「本当にそう算段立てていたんですかね?」
「あ、当たり前や」

ナラ司令官の疑問を焦る様に避ける。
間に笑いが出た。金を理解していないキンイチは近江司令官にとって、
もはや常識レベルに筒抜けだったのである。

「我々の兵は少しやんちゃも多いですが、よろしくお願い致しますよ」
「任せとけや、ワシらがまとめて面倒みてやる」

関西でまた1つの同盟が成された。
協合による大いなる力が生まれるのである。


「ここが中つと同盟だと!?」

突然の決定により、各地でてんやわんやな混乱が巡る。
センだけではない、他のメンバー達も同様に西との関連の流れを
理解できる者がいなかった。

「侵攻して同盟って、んなアホな!?」
「どういう風の吹き回しなんだか・・・・」

状況が飲み込めない兵士達。
上による決定で下の者達が困惑するのも当然な流れだ。
思惑する兵の少なくはなく、ここにも数人いるが
ヤエはトットリのエリアで何かしら事件が起きたと読んだ。

「きっかけはあのトットリへ行った時だけでしょ?
 あそこに何かがあったとしか言いようがないわね」
「・・・・・・」

俺も鉱山の事を思い出していた。
あの崩落事故に違和感をもたずにはいられなかったが、原因も分からない。
何かのきっかけで疑問に思っても口で上手く説明できないので、
この事をメンバー達に話すのを控えていた。
水入らずに雰囲気を壊すのも良くないと黙っておく。
ライリーとアイザックも突然の変化に戸惑いをみせる。

「まあ、味方が増えるのは賛成だし。
 同盟式もやるらしいから、ちょっと顔を出そうかしら」
「まあ、なっちまったモンはしょうがねえし、
 面ぐらい拝みに行ってやるとでもするか」
「喧嘩売りに行くなよ、隊長命令だ」
「分かってんよ」
「そういう展開なら、俺は御所望ごしょもうなんだがな」
「駄目だ」



近江CN、中つ国CN
    同盟



オオサカCN拠点 演習広場

 同盟式も終わり、ケイは会場の広場を歩いていた。
近江CNとの寄り合いが納まる中、新たな近接戦闘を学びに
競合目的で単独でやって来ていた。

「ここがオオサカCNか・・・あの人達は!?」

この間遭遇した妙な頭の男だ。
敵対していたから、あまり声をかけづらい空気に見舞われるケイ。
しかし、面識のある人物にできるだけ指導を受けた方が
事が進みやすいのも確かだ。

「や、やあ」
「お前はこの前の・・・なんか用か?」
「俺に近接戦闘を教えてくれないか!?」

根拠こんきょはオオサカ兵が近接戦闘に長けていたのを知っていただけだ。
もしかしたら、刀以外の武術を会得しているかもしれない。
とにかく、中つ国の者だと名乗って教えをもらおうとする。
しかし、片方の1人はこばんだ。

「近接? 俺は長刀だけど、お前それなのか?」
「いや、銃と短刀くらい」
「じゃあ無理だ、他を当たれ」
「そこをなんとか、素手の近接だけでも教えてくれれば」
「ほー、じゃあ俺と殴り合ってもらおうか?」
「ええっ、ここで!?」

ライリーという人からの格闘戦を挑まれる。
こちらの男は体格が良く、強そうだ。
本人が言うには大型剣を振り回す対ライオットギア討伐師らしい。
武器は使わずとも、筋肉質にひるみそうになりそうだったが、
ここで引いたら彼どころかマナミにすら勝てやしない。


5分後

「な、なかなかやるな・・・お前」
「あ、あんたこそ」

直線的な行動をとるライリーに、どうにかいなし技で対応する。
どちらかといえば、マナミのパターンに似通にかよった部分を感じ取った
自分は確信したようだ。
彼らの武道を学びたいと改めて請願する。

「頼み事がある、ここの武術を教えてくれないか?」
「その前に聞きたい事がある。
 お前らがあの山にいたのは何の護衛だ?」
「あそこは金の鉱山だよ、貴重な資源場の1つだから」
「それだけか?」
「そうだけど」
「?」

突然によるセンの鉱山の当時を聞かれた。
あの違和感の件について当事者の1人がここにいるのだ。
しかし、ケイにとって内容が理解できない。
何故、あの時お互いカチ合った金鉱山の話をもってきたのか、
そして何を言いたいのか、聞いてみた。

「こっちはただ護衛にいけとしか聞いてない。
 あの山をどう思ってるとか聞かれても、サッパリだけど?」
「俺があの時変だと思ったのは金じゃない、だ」
「あれは確かトットリの人が迫撃砲で陥落かんらくさせて・・・」
「あの規模の大きさの山で、迫撃砲くらいで潰れると思うか?」
「あ!?」

約100mの高さはある山に一撃で崩れるはずがないという。
この人が異変に感じていた事、鉱山にしては脆すぎる状態で、
あたかも人工物というくらいの様を読み取っていたのだ。
プラムも同じ様な事を言っていたのも一致であろう見識は
自分でもおかしいと思わせた。

「今も昔も変わってねえんだ。
 人ってのは、価値あるモンにすぐ飛びつくからな」
「でも・・・当たり前じゃないのか?
 優れた資源があればどんな兵器も製造できるだろ。
 CN間の連携、融通にとっても有利に・・・」
「その金が人を狂わせるんだよ」
「!?」

突然主張が強まった感じに、そう発した。
センはケイにかつてのオオサカの過去を伝えていく。
近江は大昔から商業が盛んで有名な所でもあった。
資本主義とよばれたその生業なりわい堕落だらくの道を歩むきっかけも
生み出してしまった。金融という取引で使われていた手段として
用いられていた1つのある物質、それが金だと聞かされていた。
しかし、流通は人にとって綺麗な流れで終われずに一転。
利益を追求する者達は鉱山資源を巡って大きな抗争が発生。
近隣エリアを通じてオオサカで死者がでてしまったのだ。
そして1人の男が責任をとって、事件は次第に収束して鎮静化していく。

「その男の末裔がオオサカの司令官、キンイチ司令だったんだ。
 俺も最初は信じてなかったが、おふくろから聞いた」
「・・・・・・」

自分の先祖も、鉱山労働者の1人だったらしい。
あまり良い話ではないので、ライリーにも言わずに黙っていた。
ここで関西に隠されていた事実が明らかになる。
事情を知ったケイはなおさらここで色々学びたくなった。

「そうだったのか、オオサカとトットリにそんな話が」
「お前のおやっさん、そこにも行ってたのか。初耳だわ」
「俺は正直、金に良いイメージをもっちゃいない。
 資源漁りばかりで、しまいには親父も・・・・。
 こんなの話たくなかったが、分かったら他をあたれ」
「なら、これからもっと手を組んで良くできるはず。
 だから、オオサカの武道・・・教えてくれないか?」
「・・・・・・」

ハッキリいって、ケイは話の中身を分かっていなかった。
ここと鉱山にどんな繋がりがあろうと、
彼らから学べればそれで良いと石の様な意志をくくる。
新たな武術による新モーション。
2人の教えならば、マナミに勝てるきざしを見出せるだろう。
ケイは一部始終をかえりみずに頼み込む。
意気込みに押されたのか、ライリーは許可する姿勢を見せた。

「なあセン、こいつに教えてやってもいいだろ?」
「ああ、いいぜ」
「ありがとう、感謝する!」
「俺らオオサカ第99部隊張ってんだ。ヨ・ロ・シ・ク!」

ゴリゴリゴリ

「いたたた、握手強すぎ!」

両手が男同士による握手で、より強固になる姿勢をもつ。
質が異なる金髪との歩みによる結合に成功することができた。
ここにまた1つ近江と中つ国の手が結ばれた。
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