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その38・最終話
しおりを挟む「星乃は優雅の姉なんだけど、3年前に他界してるんだ。」
肩に顔が乗っているから、千歳は光大の表情を見ることができない。
「俺と星乃も、ここの大学で会ってね。妙に気が合うのと、面白くて誰かの役に立つ仕事がしたくて、卒業してから探偵業を始めたんだ。星乃は…というか、さえちゃんは星乃がモデルで…」
「母さんが、光大に依頼したんだ。しばらく姉さんの格好をして、一緒に住んでくれないかって。」
西はコーヒーを飲み終わったマグカップをデスクに置いた。
「由美子さんが…」
「母さんも、誰かと姉さんを偲んでいたかったんだと思う。俺はその時、既にこの研究室に居着いてたし。」
「俺たちが立ち直るのは結構時間がかかって、そのうちに女装が板について、いつのまにか美少女探偵ということになっちゃったんだよね。」
千歳は腕を伸ばして、光大の背中を撫でた。
「さえちゃん先生の中には、星乃さんがいるんですね。」
「そうなるかな…結構似てると思うんだけど、弟的にはどう?」
「いや、半分くらいは光大だよ。姉さんの方が辛辣で冷徹だった。光大は甘い。」
「えー、そうなの?!俺の3年の頑張りは何?!」
「母さんが喜んでたんだから、それでいいだろ。」
「それもそっか。」
抱きしめていた千歳を離し、顔を見つめる。
「ということを、千歳にも聞いておいて欲しかったんだ。」
「はい。ありがとうございます。」
横からグスグスと鼻をすする音が聞こえた。
「えっ、何で美月ちゃん泣いてるの?!」
バッグからティッシュを出し、美月が鼻をかんだ。
「なんか、みんなの気持ちを想像したらグッと来ちゃって。」
「美月は感受性豊かなのです。」
「ありがとう。」
3人で微笑み合っていると、西が手を叩いた。
「さ、話が終わったなら帰った帰った。僕はまだこれから作業が残ってるんだよ。」
「じゃあ、帰ろうか。」
研究室を出て、美月が手を振った。
「私、これからバイトだから!お先に!」
「お疲れ様ー!」
光大と千歳は、並んで帰路に着く。
「さえちゃん先生以外の人と帰るのって、不思議な感じがします。」
「俺はいつも通りって感じ。あ、でもこれなら違うよね。」
千歳の手を握って、嬉しそうに笑う。
「…照れます。」
「あー、可愛すぎて今すぐ食べちゃいたい。」
「それは…夜で…」
「俺でもいい?」
「…はい。」
光大は、消え入りそうな声を漏らさずキャッチした。
その夜、千歳は光大に組み敷かれ、交わり、幾度となくいかされて、気を失うように眠ってしまった。
翌朝目覚めた時は、自室のベッドの中だった。
「あれ?…あれ?夢?じゃ、ないよね?」
パジャマ姿のまま慌てて目的地のドアをノックすると、現れたのはさえちゃん先生だった。
「ん…もう起きたの?」
「私、こっちの部屋にいたはずなのに。」
不満そうに口を尖らせる千歳の頬にそっとキスをして、悪い顔で微笑んだ。
「可愛い彼女の部屋で、いたずらしながら起こそうと思ってたの。」
千歳は想像して赤面した。
「んなっ!?何で?!」
「ん、千歳が喜びそうだなって思ったから。」
「よ、喜ぶと?!」
「私から、えっちなことされたいでしょ?」
ーとても、されたいです。
さえちゃん先生と光大、どちらからも愛されるのはすごく気持ちがいい。
下腹部が勝手にきゅうっと締まった。
「千歳、私の助手やらない?」
「へ?」
話の流れをぶった切って、さえちゃん先生が言った。
「ストーカーの件は、それでチャラにしてあげる。」
「えっと、何で?」
「恋人同士になったら、えっちは代償にならないし。」
ニヤッと笑って千歳のおっぱいを揉みしだいた。
「あっん…ん?体で支払うって、やっぱりそういう意味だったんですか?!」
「そのつもりは無かったけど、想像はしちゃうわね。」
乳首をクリッとつねられてから、肩を押される。
「ん、部屋に戻ってもう一回寝てきて。いたずらしに行くから。」
「…はいぃ。」
これから自分の身に起こる、たくさんの事柄に想いを馳せ、千歳は心を震わせた。
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yomuさん
最後まで読んでいただきありがとうござます!!!!!
み、ミステリー!!!書けるかな?!?!思いついたら書きたいと思います!!!!
ありがとうございます!!!!
また次回作もよろしくお願いします!!!
misaさん
こちらこそ、最後までお読みくださり、ありがとうござました!!
星乃の話も少しずつしか出していなかったので、ちゃんと出せて良かったです。
女装趣味の男性が出てくる作品は、他にも何作かありますので、よろしかったら是非!
新作も準備終わり次第、更新予定です!!!
misaさん
感想ありがとうございます!嬉しいです!!
私もまさかこんな風に本体を明かすと思ってなかったので、「えっ、光大ってばそこで言っちゃう感じ?!」と驚きつつ書いてました。
カフェオレー!!!!!犠牲になってしまった!!!
ありがとうございます!
実は結構前に書き終わっているので、週末には最終話を迎える予定です!
ぜひ、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
新作も書き始めておりますので、よろしくお願いします!