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17・専務の翼

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「祖父は気性の激しい人でした。鷹司の名に恥じると言って、変異したばかりの僕の羽根を毟り、捥ぐ寸前だったところを、母に助けられたそうです。」
なんて壮絶な幼少期。凡人の私には想像もできない。
「祖父の父、曽祖父は鷹でした。それ以降に変異したのは僕ただ一人。それが鷲だった。」
広げられた翼、その付け根にある傷をそっと撫でる。
きっと今は微塵も痛くないだろう。でも、痛い気がしてしまった。
「祖父は僕を許せなかったんでしょう。家の名にそぐわない僕の見た目を。」
「だから、仕事を一生懸命頑張ってるんですか。」
この人は、祖父に認められようと努力をしているのだろうか。
会社をよくする為の難しいセミナーに行ったり、つながりを作る為にいろんな懇親会に顔を出したり、社内を見て声をかけたり、地道にコツコツと。
1ヶ月以上側で働いていれば、嫌味を言われたり、勝手に違う世界に連れて行かれたり、突拍子も無いことをされても、仕事には真面目で努力家だってことが分かる。
そこは素直に尊敬できる。
だから、家族からそんな悲しいことをされたなんて、思ってもみなかった。
専務はこんなに毎日頑張っているのに。
優しく労わるように何度も羽を撫でると、専務の体がぶわっと毛羽立った。
「いえ、仕事は会社の為、自分の為にしています。祖父は関係ないですよ、もう鬼籍ですし。」
「えっ?!」
ゆっくりと広がった羽が畳まれていく。
「父も母も僕の味方でしたし、祖父は気性が激しくても老人でしたからね。きちんと守られて、扱いが酷いということはありませんでしたよ。」
羽が元の位置に戻り、背中に収納された。
勝手に推察して、勝手に同情して悲しくなったのが、とても恥ずかしい。
もう顔を隠す羽もない。
「そうですか…良かったです。」
くるりと振り向いた専務が、勢いよく私を抱きしめて擦り寄った。
慌てて顔を隠すように羽毛に埋もれる。
「ありがとうございます。渡辺さんが心配して撫でてくださったおかげで、僕は今とても幸せで、とても元気です。」
腰を押し付けられて、熱くて硬いものがお腹に当たった。
もしや、これは…。
「あの…元気って…まさか」
「はい、分かってくださいましたか。僕はさっきからずっと、たまらない気持ちでいっぱいです。」
何を言っているんだこの猛禽男は。
さっきの話も、私の同情を引く為なんじゃないかと疑ってしまいたくかる。
「人が真剣に心配していたっていうのに…!」
「ええ、とても嬉しいです。そのおかげでこうなってます。」
ぐいぐいとお腹を押してくる熱い塊に、否が応でも意識してしまう。
埋めていた顔を上げて、両手を胸元から離れるように押し返した。
「やめてください。」
「嫌です。」
言い出したら引かない、絶対に自分思い通りにする。
これも、この1ヶ月近くで分かったことだ。
紳士で嫌味で強引で。
「このふわふわのもふもふで、体を全部包まれてみたくありませんか。すっごく気持ちいいと思いますよ。」
とても蠱惑的だ。
柔らかな羽毛が、首筋を下から撫で上げる。ゾクゾクと体が震えて、専務室のソファの上で撫でられ続けた感覚を思い出してしまう。
「はぁっ…」
「ほら、渡辺さんの大好きなふわふわですよ。」
触れるか触れないか絶妙なタッチで首筋を往復し、耳をくすぐり、頬を撫でた。
熱い吐息が、口から漏れる。
「んふぅっ。」
体がびくびくと震えてしまうけれど、強く抱きしめられているから逃れたくても逃れられない。
さわさわと何度も撫でられて、足が震えて立っていられなくなりそうだ。
「はっ…はあ…ふう。」
「その声にならない喘ぎが、僕を煽って仕方なくさせるんですよ。分かりますか、渡辺さん。」
そんなのは知らない。
こっちは出したくないのに、出てしまうのだ。というか、出させてるのはそっちじゃないか。
悔しい、悔しいけど気持ちいい。
撫でられれば撫でられるほど快感が降り積もって、触られてもいないのに、胸の先が、太ももの間が、疼く。
「んう…。」
顎を掴まれて顔を上げさせられると、カパリと開いた嘴からつるりと舌が伸びて、私の唇を舐めた。
温かくて柔らかくて、ぬるりとしている。
喘いだ口の隙間から、舌が入り込んで粘膜を隈なく舐め、私の舌と絡む。舌の裏を舐められると、顎が上がってしまう。
それが、もっととエサを強請る雛鳥のようで、とても恥ずかしい。
「んっ…ふぅ…」
足の力が抜けて立っていられないのが分かったのか、専務の腕が腰を支えて隣のベッドへ私の体を下ろした。
専務は覆いかぶさるようにして、深いキスを続ける。
羽の愛撫とキスだけで、脳がとろけそうな快感を得てしまい、体が更なる愉悦を欲している。
チュルッと音を立てて舌が引き抜かれ、切ない喪失感が生まれた。
「いい表情ですね、それ。求められてるみたいで、嬉しいです。」
カタカタと嘴が動く。
そうだった、この人は始めから素直なんだ。
金色の瞳が私を見ている。
「専務って、本当に私のこと好きなんですね。」
「はい。なので、結婚しましょう。」
バサバサっと大きくて優雅な翼が広がり、私を包み込むように覆った。
「お断りします。」
ちょっとだけ、いいかもって思ったのは絶対に秘密だ。
雰囲気に飲まれているだけだと、少し残った私の理性が言っている。
「それは残念です。」
喉を指先で撫でられて、ぞわぞわと快感が上ってくる。
「んぐっ。」
ぷちぷちとボタンが外されて、下着を取られ、本日二度目の露出をした。
「渡辺さんのここ、もう勃ってますね。」
人差し指の腹でクニクニと押されると、体が悦んで震える。
「ひゃああっ。」
もう片方の手が空いている乳房を揉みしだいたり、脇腹を撫でたりしている。温かくてふわふわで硬い手が、体を弄っているのが気持ちいい。
「はっああっ…」
乳首を指で挟んで、ぎゅっと強く摘まれて、痺れるような強い快感が走る。
太ももを擦り合わせて快感を逃がそうとすると、余計に気持ちよくなってしまって、どうしたらいいか分からなくなった。
「…渡辺さんすごくエロいです。もっとよがって悶えてください。」
専務の舌が乳首を舐め、嘴が乳房を柔らかく食む。
「ひゃあんっ!」
本当に食べられてしまっているみたいで、鋭い嘴の先がツンツンと乳房を刺すから、頭皮がぞくぞくした。
「はっ…はっ…」
息がどんどん荒くなって、快感で苦しい。早く楽になりたい。
だから、お願い。
「もっと…、もっとして。」
乳房を食んだまま、専務の喉がゴクリと鳴った。

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