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3・ご飯と近況報告など

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大皿に盛った色んな料理をテーブルに並べたところで、嵐が帰ってきた。
「わー、いい匂いする。」
「お帰り、ちょうど準備できたよ。」
「嵐、早くー!お腹空いたー!」
「ごめんごめん、すぐ戻るよ。」
二階へ上がって荷物を置き、リビングに来た。
「いただきまーす!」
「召し上がれ。」
湯気の立つ料理を、ガツガツと食べていく。
うん、美味しくできた。炊きたてのご飯も粒が立ってて美味しい。
「嵐は、最近どう?大学楽しい?」
「うん、やっぱり勉強っていいよね。」
「わぁ、さすが嵐。全く遊んでいる気配のない回答。」
ガッカリした顔で波琉がアルコールを煽る。帰りの運転は大河か。
「なみちゃん、大学は遊ぶところじゃないよ。」
「そうだぞ波琉。嵐がそんなことする訳ないだろ。子どもの頃から百科事典を読んでた奴なんだから。」
回鍋肉を流し込むように食べる大河の発言は、何のフォローにもなってない。
「嵐は勉強が好きだからね。もう少し遊んでもいいと思うけど。」
首を振って嵐が水を飲む。
「姉ちゃんに学費払ってもらってるのにそんなことしない。それに、大学生の遊びは、俺には合わない。だったらもっと勉強に時間とお金を使いたいよ。」
「嵐…」
私は勉強得意じゃないから、嵐が進学するべきだって思ってたけど、楽しそうに勉強してる嵐を見て、やっぱり進学させて良かったなって思った。
飲み干したコップを置き、波琉が手酌で継ぎ足す。
「どんなけ勉強好きなのよ!もう趣味じゃない!はぁ、子どもの頃、宿題を嵐にやってもらったの思い出すわぁ。」
「あー、そんなことあったね。なみちゃんは昔から勉強嫌いだもんね。」
「波琉、お前そんなことしてたのかよ。」
「波琉は言い出したら聞かないからねぇ。でも嵐だって、難しい問題やりたいとか言ってやっちゃうんだから、どっちもどっちだよ。」
大河が温かいスープを、大きな手で小さなスプーンを使ってすくう。
そのもふもふの手を何度触りたいと思ったことか。大人になったから我慢しているけれど、子どもの頃はよく嫌がる大河に抱きついて、もふもふしていた。
波琉には未だに抱きついて、もふもふしている。波琉はお手入れをしているから、毛並みも毛艶もよくていい匂いがして毛が柔らかい。
「ねえ楽、今日私泊まって行くから。」
「え?そうなの?分かった。布団用意しとく。大河は?」
「俺は仕事があるから帰る。」
「たーくん、最近忙しいんだね。土曜も仕事なんて。」
「あー、親父の取引先に連れて行かれるんだよ。」
大河は空っぽになったスープ皿を持って、キッチンへおかわりを取りに行く。
「パパはね、大河に跡を継がせようって訳よ。私はやる気ないからねー。」
「波琉はモデルの仕事あるんだし、いいでしょ。おじさんも喜んでるじゃん。」
「まぁね!最近、新しい仕事が決まったしー!」
スープをたっぷり盛った大河が、こぼさないようにそっと歩いてくる。
「新しいのって、あれだろ。楽の会社のやつだろ。」
「なにそれ?!」
指を振って波琉がブウ垂れる。
「何ですぐ言っちゃうのよ!全くそんなだから楽にイタッ!何すんのよ!」
波琉の肩にそこそこな力でパンチをしていた。うん、いくら2人がフィジカル強くても、それは痛い。
嵐は2人を見てゲラゲラ笑っている。
「私が何?」
「楽、スープ冷めてるぞ。温め直してくる。」
「ありがとう。」
私のスープ皿を持ってまたキッチンへ向かう。
波琉と嵐がクックッと苦しそうに笑っていた。
「何が面白かったの?」
「うーん、大河の不憫なところかな。」
「たーくんて可愛いよね。」
よく分からないけど、大河が可愛いのは分かるかな。今は大きいけど、昔は小さくて良い子で優しくてとっても可愛かった。いや、今も優しいのは変わらないか。
「ねえ、うちの会社の仕事ってなに?」
「んっふっふー!まだ内容は秘密!でも結構すごいから、楽しみにしてて!」
「分かった。」
それから、昔話をしたり、最近の面白かったことや、嵐の大学の話などをした。

大河は帰り、嵐は勉強、私は母の夕食を下げて片付けをしてから、自室に布団を運び込み、寝支度をする。
とっくにお風呂から上がった私達は、布団の上でゴロゴロしていた。
「ねえ楽、これ使いなよ。今モデル仲間で流行ってるんだ。」
波琉が渡して来たのはボディケア用のクリームだった。
「保湿はもちろん、毛艶も良くなってサラサラになるのよ。」
「あー、だから波琉がツヤツヤなんだ。触って良い?」
「どうぞ!」
キャミソールに短パン姿の波琉にぎゅーっと抱きつくと、良い匂いがしてふわふわで、柔らかくて気持ちが良かった。
「ああー…波琉の毛って最高。私が男だったら絶対に波琉のこと口説くのに。」
「あははは!楽が女だから一番仲良いけど、男だったら使いっ走りにしてると思う!私の魅力でメロメロにして、ワガママ言い放題して、でも一番気持ちいいことはしてあげないの。」
「本当、ひっどーい!波琉ってそういう悪女っぽいとこ昔から変わらないよね。」
首筋に頬擦りをして、波琉のもふもふを堪能する。
「いや、楽も大概でしょ。いくら仲良いからって大人になっても、もふもふさせろって相当だよ?ペットじゃないんだよ私は。」
「でも、波琉も満更じゃないでしょ。」
「まぁね、楽はいいけど。っていうかさ、大河にもすればいいじゃん。」
しばらく堪能させてもらったので、波琉から離れて、またゴロゴロする。
「いや、大河は男だし。しない。」
「大河も喜ぶと思うけど。」
「えー、ないでしょ。っていうか大河ならもっとキレイな女の人が寄ってくるし、選り取りみどりなんだから。そっちにして貰えば良いと思うよ。」
波琉が大笑いして、目尻の涙を拭いている。
「あーっはっはっ!大河どんまい。」
クリームの蓋を開け、手に取って塗り込んで見ると、良い匂いとじんわり温かな感覚がした。
「へー、すごい。なんかあったかい。」
「温感なのよ、それ。夏は冷感も作るっぽいわよ。」
「面白いね!」
「うん、それ楽の会社の商品だからね。」
「えっ!?そうなんだ。」
知らなかった。そんなものも作ってたんだ。
「自社商品を知らないとはー!」
「多過ぎて、全部は把握できないよ。」
自社商品…と聞いて嫌なことを思い出してしまった。
無意識に眉間にシワが寄っていたのか、波琉の指に押された。
「楽、ブスになるよ。」
「ちょっと、今日あった嫌なことを思い出して…」
「えー!なに?!聞きたい!言って言って!」
「面白がってるでしょ。」
「ちょっとだけね!」
波琉がパチっとウィンクをした。
くそ、可愛い。
私は朝の出来事を思い出しながら、話をした。

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