【R18】新入社員ヤンデレエルフの、教育係になりました！

第28話

「ティリオンは、一人で住んでるの？」
　お茶のおかわりを飲みながら、出されたお菓子を口に入れた。甘く煮詰めた果物が入った、パウンドケーキのようなものだ。
「ええ、一人です」
「お母さんとお父さんは？」
「今は別のところにいますよ」
「ふうん、寂しくないの？」
　周りは自然しかなく、他に人が住んでいるようには見えなかった。
「特に、感じたことはないですね」
　明るい長い髪がサラリと揺れ、ティリオンの耳が見えた。
「ティリオンて、妖精さんなの？」
　アニメやゲームに出てくるような、先が尖った耳をしていた。沙彩の祖父も少し耳が尖っているが、妖精までとはいかない。
「そうですね、仲間みたいなものですよ。エルフという種族です」
「知ってる！お父さんがやってるゲームに出てきた！」
　父のゲームに出ていたのは、もっと愛らしい見た目の女性エルフだった。ティリオンは髪が長くキレイな顔をしているが、多分男性だろう。
「ゲームですか…あー、多分知ってます。テレビにつないで、一人か二人で遊ぶものですよね」
　ティリオンがお茶を飲むと、どこかの王子様みたいに見える。
「うん、そんな感じ。ティリオンのお家は、なさそうだもんね。テレビもないし」
　見回しても家電はない。
「テレビはないですけど、色々見られますよ」
「どこで？何を？」
　明るい色の瞳が、いたずらっぽく輝いた。
「あとで見せてあげます。ところで、サーヤのことを聞いてもいいですか」
「いいよ」
　お菓子を好きなだけ食べて満足した沙彩は、テーブルの上で頬杖をついた。
「サーヤが住んでいたのは、どんな所ですか」
「えーっと、山とか畑とかいっぱいあって、学校と公園と家があるよ。あと、車で行かなきゃ行けないけど、ショッピングモールがある」
　先週末は、父の運転する車でショッピングモールへ行き、サバイバル用に小さな懐中電灯を買ってもらったばかりだ。もったいなくて宝物箱に入っている。
　こんなことになるなら、持ってきていれば良かった。
「ふむ…サーヤの住んでいる地域はアジア圏かと思うのですが…」
「日本だよ」
　場所を聞いているのだったら、そう聞けば良かったのに。見た目で幼いと思われているのだろうか。
「ああ、日本ですか。近くに滝や大きな川はありますか」
「あるよ、ダムと大きい川が二つある」
　沙彩の言葉に、ティリオンが目を瞬かせる。
「ほうほう、それはそれは…そうですねえ」
　ティリオンは勝手に納得し、思案を始めてしまった。それからそのまま黙っているため、沙彩は暇になった。