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明亜と女装男子編
10-18彼と私の性癖
しおりを挟むその機会は、意外と早くにやってきた。
最近、夜は電話をしている。
当真さんから掛けてくることが多いけれど、私からも掛けてる。
あの優しい声を聞いていると、心地よくて安心するんだ。
ついつい長電話をしちゃうカップルの気持ちが、とうとう私にも分かるようになった。
当真さんが、低くてハスキーな声で問いかける。
「明亜ちゃん、金曜日の夜と、週末は空いてる?」
「空いてますよー。」
「約束のあれ、しようよ。」
「あれって?」
「忘れちゃった?」
何だろうって考えていると、トーコさんが喋り出した。
「明亜ちゃんたら、忘れん坊さん。私とえっちしてくれるって、言ったじゃない。寂しいわぁ。」
そ、それかー!!
女装した当真さんとえっち、したい。すごくしたい。
「あっあっ、はいっ!そうです、そうでした!」
「慌てすぎよ。可愛い。」
女の子喋りの当真さんも、可愛いよお。
まだ数回しかしたことないのに、私の頭の中はえっちなことでいっぱいになっている。
「じゃあ、俺の家に来てくれるかな。駅まで迎えに行くから。」
急に男の声に戻って、そのギャップにやられる。どっちも良い、好き。
「行きますう!」
「楽しみにしてるね。」
「…は、はひ。」
えっち初心者なのに、女装した当真さんとしたいことがたくさんあって、これはもうリスト化しようと思い、手帳に書き出していたら、夜中になっていた。
そして、金曜日。
朝からソワソワしていた私は、あやにゃんとかえちゃんに理由を吐かされて、3人できゃーきゃーと盛り上がった。
多分、男の人の下ネタよりもエゲツないと思う。
2人に見送られて駅へと向かうと、既に当真さんが改札前で待っていてくれた。
「いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
当真さんのお部屋は、クローゼットが大きくて、収納特化型だった。
ここに、たくさんの女装服がしまわれているんだと思うと、ごくりと喉が鳴った。
「お茶飲む?」
「いただきます。」
出してくれたお茶を飲みながら、クローゼットを見つめる。
「明亜ちゃん、見過ぎじゃない?」
当真さんが、楽しそうに笑った。
「す、すみません!気になって。」
「いいよいいよ。明亜ちゃんのそういうところ、大好きだから。」
チュッと投げキッスをされて、頬が熱くなる。
「クローゼットの中、好きな服を選んでいいよ。明亜ちゃんのリクエスト、全部叶えちゃう。」
また、ごくりと喉が鳴った。
「それで、しようよ。」
頬杖をついて微笑む表情が、トーコさんと重なる。
当真さんとトーコさんが一つになる瞬間が、私をドキドキさせる。
「はい。」
クローゼットの中は、きちんと整理整頓されていて、色んな服が所狭しと並んでいた。
「お店みたい!」
「開けるくらいは、あるかもね。でも、明亜ちゃんだってたくさん持ってるでしょ。」
「それは、また別の話です。あ、これ可愛い!これもー!どうしよう、迷う!」
当真さんはそんな私をにこにこと眺めながら、引き出しを開けたり、別の場所から服を持ってきたりしてくれた。
全体的な服のジャンルはエレガンス系とオフィスカジュアルなものが多いけれど、たまにコンサバっぽいものや華やかなワンピースなどもあった。
「うーん。」
「悩んでるね。」
「当真さんが一番輝くコーディネートが良いんですけど…。あとウィッグは今回無しが良くて。」
「どうして?」
「固定するのにヘアピンたくさん刺すから、痛いじゃないですか。」
「そんなとこまで考えてくれてたんだ。でも、気にしなくて大丈夫だよ。」
「うーん…でもやっぱり初めてだから無しがいいなぁ。慣れてきたらウィッグ有りでもいいと思うんです。」
当真さんが額を抑えてじっとしている。
「…当真さん?」
「ごめん、ちょっと感動に打ち震えてた。2回目以降があるんだなって。」
やっちまった。自分の欲望がそのまま口から出てた。
「あー…えっと…その…」
「俺はとっても嬉しいんだよ。」
しどろもどろになる私の肩を掴んで、ギュッと抱きしめた。
「明亜ちゃんが、俺のこと求めてくれる感じ…最高だよね。今すぐ外に飛び出して、俺の彼女が最高なんですって言って回って、急に歌い出して踊りたい。」
「ミュージカル…!」
私達は出会ってすぐに付き合ったから、お互い知らないことばかりで、新しい発見が多い。
当真さんは、サービス精神旺盛で、感情表現豊か。
私には飄々としているように見えるけれど、心の中では焦ってるって言ってた。今のところ、その感じが分からない。
いつか分かるかな。
「喜んでもらえたなら、良かったです。」
「嬉しい。明亜ちゃん大好き。」
おでこにキスをされる。
好きだって言ってくれる時は、必ず何かしらのキスがセット。
照れないのかなって聞いたけど、当真さんによれば。
「気持ちを伝える為の努力は惜しんじゃいけない。」
らしい。
でも、キスは好きだから努力ではないそうだ。
私はされる度に、胸がドギマギして苦しいけれど。
気持ちを伝える為の努力、私もできるだけしていきたい。
「ミュージカルスターは、どんな服着たいっていう希望はありますか?」
「あ、そこまだ引っ張る?えっとねえ、明亜ちゃんが興奮してくれるなら何でもいいんだけど…強いて言うならスカートかな。」
「何でですか?」
「想像してみてよ。スカートをめくったら…」
当真さんのスカートをめくったところを思い浮かべたら……たまらなく興奮して、鼻血を吹きそうになった。
「スカート採用。」
「イェーイ!」
「あ、下着はお気に入りの着けてください。当真さんのお気に入りが知りたい。」
「やん、明亜ちゃん大胆。とっておき出しちゃう。」
軽口を叩きあいながら話しているけれど、お互い既に興奮していて、ゴーサイン出されたらこの場で致してしまうくらいには、ギラついていると思う。
私ってこんなに欲望渦巻いてたんだなって、呆れるくらいだけど、当真さんが全部受け止めてくれるから大丈夫。
それから、悩みに悩んで服を決めて、当真さんに渡した。
当真さんは色々準備があるのでそちらに専念してもらい、私はリストとにらめっこしつつ、やりたいことを厳選することにした。
あとお風呂も借りた。
鶴の恩返しよろしく寝室にこもっていた当真さんは、スマホで私を呼び出した。
ソワソワドキドキしつつ、そっと寝室に入ると、後ろ姿の当真さんがスカートの裾を広げながら立っていた。
裾を持って何してるんだろう。
ドアを開ける音に気づいて振り向いた当真さんと目が合った。
男の人にしては長めのショートヘアをコテで巻いてもらい、柔らかいカールのふわふわショートにしてもらった。
白い丸襟のブラウスにリボンタイを付け、ハイウエストで花柄のミニフレアスカートを履いたレトロガーリーなコーディネート。
お化粧はそれに合わせて、黒目がちクラシカルな感じでお願いした。
イメージは、昭和の絵の中から出てきたような女の子。
ため息が出そうなほど…
「…可愛い。」
「ありがとう。」
すすすと側に寄り、上から下まで舐め回すように眺める。
「くるっと回ってください。」
その場でターンしてもらい、ほうとため息をついた。
「素敵…とっても似合う。」
「持ってる服で、こういうコーディネートしたことなかったから、視点が広がったよ。」
「あれだけ持ってたら、色々できますよ!今後も楽しみですね!」
「そうだね…っ!」
また感激してる。
当真さんの様子を見てる限り、今まで女装を一緒に楽しんだ女性が周りにいなかったんだろうな、と推測できた。
もったいないと思う反面、私だけの楽しみだと優越感と独占欲に浸る。
当真さんを、心の底から喜ばせてあげられるのは、私だけ。
嬉しくなっちゃうなぁ!
「当真さん、可愛い。とっても可愛い。」
「やだぁ、明亜ちゃん。褒めすぎよ。照れちゃうじゃない。」
条件反射でトーコさん喋りになるのを、当真さんの唇に当てた人差し指で、制する。
「今日はね、トーコさんじゃなくて、女装した当真さんとするの。だから、当真さんのまま喋ってくださいね。」
目を見開いて驚き、こくりと一度頷いた。
ああ、嬉しい、楽しい。こんな悦びがあるなんて、知らなかった。
当真さんを可愛がって、でろでろに甘やかして、ぐちゃぐちゃになるまで鳴かせて、愛したい。
今の私なら、何でもできる。
当真さんの唇に当てていた人差し指で間をなぞり、指に付いた口紅を自分の唇に塗る。
「おそろい。」
当真さんの喉が、こくりと鳴った。
興奮してるんだ、と思ったら、自分の昂りも上昇して息が熱くなる。
いつも自分がしてもらうように、頬に手を当て顔を傾け近づけた。そっと触れるように唇を重ね、角度を変えて何度も何度も、口づける。
「当真さん、可愛い。すごく可愛い。食べちゃいたい。」
真っ赤になって照れている当真さんを食べて、一つになってしまいたい。
口を開け、舌を滑り込ませる。口内を舐め回して、舌を吸い、こぼれた唾液を絡め取る。
気が済むまで貪り、顔を離すと銀糸が垂れた。
「んふふ、当真さん可愛い。」
「…どう反応したらいいか分からない。」
「初めての時の私も、そんな感じでしたよ。今度は私が、当真さんの女装処女をもらいますね。」
「…やば。今、明亜ちゃんに抱かれたいって思った。」
「光栄です。」
再び唇を重ねて、強く抱きしめあった。
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