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番外編

初めての温泉二人旅行・1

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普段だったら、灘くんの部屋に前泊しているけれど、今日は遠慮させてもらった。
というか、お願いした。

だって、レンタカーで移動するんだもん!
車で迎えに来てくれる灘くん良くない?!絶対かっこいいよ!!知ってる!!

ドキドキして待っていると、定刻通りにインターフォンが鳴った。
「はーい。」
画像の荒い画面に映る灘くんですら、かっこいい。写真撮りたい。
「迎えに来たよ。」
「今開けるね!」
シャッターを一瞬で切って、ドアを開ける。
「おはよう。」
目の前には、笑う灘くんがいた。
好き…私の目がハートになってるのが分かる。
「おはよう!すぐ出るね、路駐だもんね。」
既に準備万端なので、部屋の鍵を締めて車まで向かう。
ハザードを点けて停車しているのは、黒の普通車。
荷物をトランクにつめて、助手席に乗った。
灘くんが運転席に座って、シートベルトをし、ハンドルを握る一連の流れを、じっと観察する。
「そんなに見る?」
灘くんが、照れて笑ってしまっている。
「うん!」
「そう…あんまり見ると事故るよ。」
「えっ!?」
手のひらで目隠しをされた。
「俺もドキドキしてるの!」
目の上の手をぎゅっと握って下ろし、そのまま頬ずりをする。
「えへへ、嬉しい。」
頭をわしわしと撫でられると、車が出発した。
「目的地まで三時間くらいかな。途中、パーキングエリアに寄るよ。」
「了解しました!」


高速に乗ると速かった。すぐ隣県になり、あっという間にパーキングエリアに入る。
もちろん、駐車場に車を停める為、スマートにバックする灘くんを観察した。
車から降りて、お手洗いに向かう。
「私も実家にいる時は運転してたから、思うんだけどね。」
「うん?」
「好きな仕草ランキングのバック駐車する時の、手とか振り向き顔とか言うじゃん。」
「言うね。」
「あんなわざとらしく後ろ向かなくても、サイドミラーだけで駐車できるよね。」
「あー…あれは…」
「なに?」
「ううん。トイレ着いたよ。」
なんかはぐらかされたけど、とりあえずお手洗いを済ませた。

パーキングエリアで美味しいものを食べたくなったけど、向こうでお昼ご飯を食べるって言ってたから、お肉は我慢した。
「ほとりちゃん、美味しい?」
「うん!ほら、大丈夫!ほぼ水分だから、カロリーゼロだよ。」
バリバリ食べているのは、きゅうりの一本漬け。浅漬けで、瑞々しくて美味しい!
「まぁ、あと2時間くらいあるし、ほとりのお腹ならすぐ消化するでしょ。」
「うん!日頃からね、末ちゃんと鍛えてるからね!」
えっへんと自慢気にしつつ、ゴミを捨てて車に戻る。

シートベルトをする灘くんの鳩胸が好きだなぁ、なんて見ていたら、ニンマリ笑った灘くんが、少し走らせたところで車を停めた。
まだ、パーキングエリアすら出ていない。
「どうしたの?忘れ物?」
「うん、ごめんもう一回停めていい?」
「もちろん!」
ガランと空いている駐車場で、わざわざバックのギアを入れた。
こちらを振り向いた灘くんが、首を伸ばし体を傾けて、リアガラスを見ている。
体が、近い。っていうか、顔も近いし、なんならくっつきそう!
ふわりと、薄荷の香りがした。
灘くん…かっこいい…
「ほとり、分かった?」
「へ?」
かっこよさに惚けていたら、灘くんが笑っていた。
「これが、バックをする時にわざわざ振り向く理由だよ。」
それは…うん、そうなりますよね。
「身に染みて理解しました。」
「んじゃ、出発しますか。」
「はい。」
灘くん、私をドキドキさせる為だけに、バックしたみたいです。

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