【R18】次に目を開けた時、イケメンのベッドの中に異世界転移してました。

番外編２

リリーの恋・４

 ぐすぐすと鼻をすすりながら、流した涙の分のお茶を飲む。
 途中、お客さんの相手をしながら、ジョーゼットは話を最後まで聴いてくれた。
「そっかー…結構エグいね。恋敵が全員自分の家に揃って、３日間も愛しの君とイチャイチャしてるところを見させられるんでしょ？」
「ゔん…づらい…」
 真っ赤になった目を、氷の入ったコップで冷やす。
「うちに泊まりに来る？」
 申し出にグッと黙ると、ジョーゼットが笑った。
「辛くても、そばにいたいってか。健気だねえ。」
 そんなんじゃない、多分。
 コップの中の氷をガリガリと噛み砕く。
「で、リリーはどうしたいの？」
「どうって…」
 コップを頬に当てたまま、考える。
 どんなに頑張っても、今の自分じゃ何もできない。精々、奥さん達がいない時に、子どものようにベッタリくっついていることくらいだ。
「年齢が恨めしい…早く成長したい…」
「…うちら、まだ１４だからねえ。牽制すらできないし、恋敵からは可愛い姪っ子さんだわって思われてそう。」
「悔しい…」
 貴族じゃない、年端のいかない親戚なんて、召し上げの対象にもならないだろう。
「王様を独り占めは無理って分かってるから、せめてお嫁さんの１人にして欲しい。」
 姪っ子じゃなくて、女の子として見て欲しい。
 ジョーゼットが、コップに新しくお茶と氷を入れてくれた。
「それ、愛しの君に言ったの？」
「…言ってない。」
 言えるわけがない。
「なんで？そんなに好きなのに？」
「言ったら、会えなくなるかもしれないじゃん。奥さん達ができて、そのうち子どもが産まれたら、今みたいに会いに来てくれなくなるのに…言ったら、きっと二度と私に会ってくれなくなる。」
 ブルブルと指先が震え、夏だというのに冷え切っている。
「あー、それはねえ…考えちゃうね。」
「うん…でもね、分かってるの。言わなきゃ、お嫁さんにもなれないって…」
 きっと、仲の良い伯父姪のままだ。
「…会いに来てくれないなら、会いに行けばいいんじゃない？」
「え？」
「ほら、アレだよ。功績残したら、貴族になれるやつがあるじゃん。武勲なり研究なりさ。まあ、うちの国は戦争ないから武勲は無理だけど。」
「そんなのあるっけ？」
「いや、予想で言った。リリー父に聞きなよ、詳しいでしょ。元王子なんだし。」
 そんな投げやりなアドバイスがあるだろうか。
 思わず笑ってしまった。
「うん、聞いてみる。」
「ま、急いでどうにかなるもんじゃないしさ。長期戦で行きなよ。」
「そうだね、頑張る！」
「でも何でそこまで好きなの？学校にも、そこそこカッコいい奴いるじゃん。リリーだって、告白されたりしてるのに。」
「え、だって、あの人より綺麗な人なんて、この世にいないもん。」
 もしも美しさで並べるとしたら、ギリギリ父だけだけれど、種類が違う。
「面食いじゃん。」
「違うの、顔以外も！気高くて優しくて美しいの！」
 彼は私のヒーロー、いやヒロインなのだ。