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終章・二人のこれから
99・この世界で
しおりを挟む盛大に飲んで食べて、みーんな帰れない状態になってしまったので、泊まってもらうことにした。
こうなることを予測していたのか、ソーヴィは新しいテントとベッドを用意していて、それぞれが休めるようにサッと魔法で準備してしまう。
「ソーヴィって本当、仕事ができるねえ。」
「母屋と仕事場を空けても、泊まれない人数だからね。これからは、フラッと遊びに来る人が増えるみたいだし。」
あーもう!そういうこと言っちゃうソーヴィ、最高に好きなんだけど。
「ほら、酔っ払いども、どんどんテントに入って寝ろ。」
フラフラしているアルシーさんとメロキーさんを捕まえて放り込み、シャーリー御一行のところへ行く。
「私の旦那様、最高にイカしてるわ。」
お義父さんは、何か言われる前にテントに入ってしまったらしく、ほんのりした灯りが中でチラチラ揺れていた。
ソーヴィが酔っ払いをあしらっている間、ふと思い出して名前を呼んでみた。
「天使、いる?」
「はい、ここに。」
可愛らしい声、懐かしい。
呼び出すのはいつぶりだろうか。
「久しぶりだね、元気?」
「はい。アユリさんもお元気でなによりです。」
「今日、結婚式挙げたんだ。」
クスクスっと笑って頷く。
「女神様と見てました。素敵なお式でしたね。」
「ありがとう…天使のおかげだよ。」
「…僕は複雑ですが、アユリさんが幸せなのは嬉しいです。」
そうだよね、手違いで人一人トラックで轢いてるからね!
「あはは!気をつけてね!」
「はい、二度と起こしません。」
「女神様にも、ありがとうって伝えてくれる?」
「はい、大変喜んでいらっしゃいますよ。」
「良かった…。向こうの家族には、教えられないのが寂しいけど。幸せだよって気持ち…届いたらいいな。」
キラキラと、水面に反射する月を眺める。ぽちゃんと音がして魚が跳ね、波紋が広がっていく。
「すみません。」
「ううん。こっちに家族が出来て、これから子ども増えて行くから、大丈夫。」
「ふふ、何人産むつもりなの?」
背後から声がしてびっくりした。
「ソーヴィ、急に声かけないでよ。」
「天使様と話してたの?」
「うん、報告してた。幸せですって。」
「そっか。女神様、天使様、アユリを俺の元に送ってくださり、ありがとうございます。俺も、幸せです。」
今日は、涙腺が緩い。
ソーヴィの暖かな指が、目尻を拭った。
「で、子ども何人欲しいの?」
「えっ…2人くらい?」
「少なくない?俺、13人兄弟だよ。」
それは、側室もいるからでしょ!
「私一人でそんなに産めないよ!ずーっと妊娠してることになるじゃん!」
「…そっか、妊娠してるとセックスできない時期もあるしなあ。計画的に進めなきゃ。」
何やらブツブツ言い出した。
「私は、授かりものだから、来てくれたらありがとうって気持ちかな。」
でも、ソーヴィの精子は強そうだよね。
「とりあえず、明日から避妊はやめてみようか。アユリはちょうど排卵日近いよね。」
把握されてるー!いや、生理日以外はセックスしてるんだから、しようと思えば把握もできるわな。
「今日はしないの?」
「…したいけど、疲れてるでしょ。ご褒美は明日、落ち着いてからがいいな。」
「ありがとう。」
しばらく湖を眺めながら、ポツポツと話す。
「俺、アユリを本当に幸せにできるか不安だった。」
「えっ、なんで?!」
柔らかく髪を撫でてから、頭を肩に乗せさせられた。
「城にいれば、いつでもエステ受けられるし、美味しいお肉は食べられるし、ドレスも着られるでしょ。」
ソーヴィは、引け目を感じていたんだ…
「そんなの、必要ない。」
「うん、知ってる。アユリはそうじゃないって。それに、俺が森に住んでたから、アユリが来てくれたってことも。」
「私は、ソーヴィが隣にいてくれるだけで、いいの!」
腕に強くしがみついて、擦り寄る。
この気持ちが、ソーヴィの心の奥深くまで届きますように。
「ありがとう、アユリ。」
ゆっくりと流れる雲が月を隠し、暗闇の中、そっとキスをした。
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