【R18】次に目を開けた時、イケメンのベッドの中に異世界転移してました。

終章・二人のこれから

９６・晴れの日

やっぱり前日から準備を手伝いに来てくれたシャーリーのメイドさん達が、ばっちり仕込んでくれたおかげで、うるつや美肌にサラサラヘア、最高のコンディションで当日を迎えることができた。
メイクにヘアセットを済ませ、ドレスを着たら、花嫁の完成だ。
この世界はこれと言ってドレスに決まりは無いそうで、だけどやっぱり純白のドレスは憧れだから、ウェディングドレスど直球。
ヴェールも作ってもらった。
式は、神官が承認して参列者が拍手をすれば終わりという、簡素なものだとシャーリーから聞いていたので、前の世界の教会式みたいに、近いのキスと指輪の交換がしたいと、頼んでおいた。
ソーヴィが指輪を作ると張り切って、当日までデザインは秘密だと息巻いていたから、どんなものが出てくるのか、とても楽しみ。
メイドさん達も着替えを終えて、先に会場へ行ってもらった。
「アユリ、準備いい？」
開け放してあったドアから声を掛けられる。
振り向けば、私に合わせて純白のタキシードを着たソーヴィが立っていた。
「恐ろしいほど、いい男。」
「世界が恋に落ちるくらい、いい女。」
褒め合ってるんだけど、笑っちゃう。
「おかしいから、やめてよ！」
「えっ、本当のことでは？」
クスクス笑って、腕を組む。
「行こうか、奥さん。」
「はい、旦那さん。」
ゆっくり、ドレスを踏まないように並んで歩き出す。
玄関を出て、畑の横を通り過ぎ、真っ直ぐ目の前が祭壇になるように配置した通路を歩く。
いつもの風景だけれど、全く違う。
夏の風が吹き、ヴェールを揺らした。さやさやとハーブのそよぐ音、爽やかな香り。
私は、今日のこの景色を音を香りを、一生忘れない。
ソーヴィにエスコートされ、湖へ向かう。
祭壇へ続く長い絨毯の上を歩きながら、参列者の顔を眺めていた。
ゲームに勝利したメイドさん達、アルシーさん、メロキーさん、そして…ソーヴィのお父さん。
来てくれて、嬉しい。
祭壇の前まで来て、美しく微笑んだシャーリーと目が合う。
組んでいた腕を離し、二人並んでお辞儀をした。
シャーリーが神官として、祝詞的なものを唱え、式が始まった。
こういう神官の必要な儀式は、大抵古語らしいので、私はよくわからない。この世界でも、勉強をしないと古語は分からないらしいので、心配いらないとソーヴィに言われた。
神官が何かを言うと、参列者が揃って拍手をする。
よし、この後だ。
向き合ったソーヴィが、ゆっくりとヴェールをめくり上げ、私を見つめる。
「アユリ、愛してるよ。」
「愛してる、ソーヴィ。」
そっと柔らかな唇が触れて、そっと離れた。
私は、この人を愛してる。
しみじみと感じ入り、抱きしめたくなった。
ソーヴィがポケットから箱を取り出し、開けて私に向けて見せる。
そこには、大小揃った同じ指輪が入っていた。
ユリの意匠が入った、ゴールドとシルバーの指輪。私の左手薬指にゴールドの指輪をはめる。
うっかり、涙がこぼれた。
そして震える手でシルバーの指輪を取り、ソーヴィの薬指にはめる。
嬉しくて、幸せで、泣きながら笑ってしまった。
ソーヴィがギュッと抱きしめて、もう一度キスをしてくれた。
「おめでとう。」
シャーリーが言うと、参列者からもおめでとう、と歓声が上がった。