上 下
96 / 154
終章・二人のこれから

88・舞踏会

しおりを挟む




身なりを整えて、まるでさっきまでしていたことなんて何も無かったかのように、会場へ向かう。
元々、踊る予定じゃないから良いけれど、こんなにクタクタになるまで体力使って、私はちょっと眠気を覚えているよ。
ソーヴィの体力と性欲が無尽蔵でやばい。
「挨拶したら帰るの?」
「そう、さっさと済ませて帰ろう。」
やっぱり、普段と比べると様子が変。顔が硬いし、なんか緊張してるみたい。
既に大勢の人が集まっており、パーティーは始まっていた。
人々の間を抜けて、貴族に囲まれているシャーリーに近づく。
戴冠式とは違い華やかで美しいシャーリーは、男装していても雅だ。
「シャロン。」
ソーヴィが声を掛けると、貴族達がサッと離れた。
「やあ、僕の可愛い弟妹達よ!」
手を上げてニコッと笑うシャーリーは、いつものシャーリーだ。
「この度は、御即位おめでとうございます。」
ペコっと頭を下げる。
「ありがとう。アユリちゃん、ドレス着てくれたんだね!似合ってるよ。」
「こちらこそ、ドレスにメイドさんまでお借りしてしまって、本当に感謝しかない…!」
「いいのよー!トータルコーディネートよ!おっと、アユリちゃんと喋ると王宮ってこと忘れて、つい口調が。ふふふ。」
男装の麗人に見えるから、喋り方はそのままでも違和感ないけどなー。
「ソーヴィ、久しぶりの城はどう?」
「あんまり変わんないね。外も中も。」
「…そうだな。そこは、俺も変えていかなきゃなとは、思ってる。ソーヴィには色々手伝ってもらう予定だから、よろしく。」
「…分かった。」
おお、話してる内容にはついていけないけど、やり取りが王族っぽいね!
「お父様には、挨拶しに行った?」
「…いや。」
無表情のソーヴィに、シャーリーのキレイな眉が片方上がる。
「ちゃんと行けよ。結婚の報告も、自分の口からすること。」
「最低限のことはするよ。」
やっぱり、ソーヴィの顔が硬い。前王様、お父さんのことが苦手なのかな。
「アユリちゃんが不安がるから、ソーヴィがサポートするんだよ。」
あっ、すみません!私のことまで。
「分かってる。」
スネた子どもみたいな返事をして、ソーヴィが私の腕に触れた。
「向こうでのんびりアルコール摂取し始めたから、行くなら早めがいいよ。」
「…分かった。」
「アユリちゃん、パーティー楽しんでいってね。お肉がオススメよ!」
「はい!」
ひらひらと手を振っているシャーリーに手を振り返し、ソーヴィに連れられて会場の奥へと移動する。
「ソーヴィ、不安なの?」
「えっ?!」
びっくりして私を見る。
「いつもより、怖い顔してるよ。キレイだけど。」
「…そっか。不安っていうか、どうしたらいいか分からないんだ。俺は絶望して城を離れたから。」
暗殺されかかり、城内には味方がいなかったソーヴィを思うと、胸が苦しくなった。
「私じゃなんの力にもなれないけど、絶対に隣にいるからね。」
笑ったり騒いだりすることしか出来ないけど。
ソーヴィの指が私の頬を撫でた。
「ありがとう。アユリがいてくれるだけで、俺は何でも出来るよ。」
そうかな…そうなのかも。私も、ソーヴィがいれば、強くなれる。
「うん、挨拶だし、すぐ済むな。」
「パパッと終わりにして、お肉食べて帰ろう!」
「ははっ、お肉食べようか。」
人の波を掻き分けて、目的の場所へ移動した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました

indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。 逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。 一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。 しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!? そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……? 元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に! もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕! 

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

本日をもって、魔術師団長の射精係を退職するになりました。ここでの経験や学んだことを大切にしながら、今後も頑張っていきたいと考えております。

シェルビビ
恋愛
 膨大な魔力の引き換えに、自慰をしてはいけない制約がある宮廷魔術師。他人の手で射精をして貰わないといけないが、彼らの精液を受け入れられる人間は限られていた。  平民であるユニスは、偶然の出来事で射精師として才能が目覚めてしまう。ある日、襲われそうになった同僚を助けるために、制限魔法を解除して右手を酷使した結果、気絶してしまい前世を思い出してしまう。ユニスが触れた性器は、尋常じゃない快楽とおびただしい量の射精をする事が出来る。  前世の記憶を思い出した事で、冷静さを取り戻し、射精させる事が出来なくなった。徐々に射精に対する情熱を失っていくユニス。  突然仕事を辞める事を責める魔術師団長のイースは、普通の恋愛をしたいと話すユニスを説得するために行動をする。 「ユニス、本気で射精師辞めるのか? 心の髄まで射精が好きだっただろう。俺を射精させるまで辞めさせない」  射精させる情熱を思い出し愛を知った時、ユニスが選ぶ運命は――。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

処理中です...