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終章・二人のこれから
81・ビフォーアフター
しおりを挟む慣れないドレス、慣れないジュエリー、そしてパーティーメイクにヘアメイク…しかもお城に行ってソーヴィと並び…ソーヴィの家族や知らない貴族に見られる。
余りに不安だったので、忙しいのは分かっているけれど、シャーリーに相談してしまった。
「そんなに気負わなくていいけど、不安ならうちの腕利きメイドちゃん達を派遣するわー!」
と言って、前日からメイドさん達がやってきてくれた。
いつものセクシー衣装ではなく、露出の少ない普通のメイドさんって感じの服で、お話をしたことのあるメイド長さんと他3人。
「お忙しいのに、来てくださってありがとうございます!」
メイドさん達はにこやかに笑って、首を振る。
「シャーリー様の妹様ですから、私共も大変光栄です。しっかり、腕を振るって準備させていただきます。」
そう言って始められたのは、自室でエステ、ヘッドスパ。あまりの気持ち良さに、途中から記憶がない。
目覚めれば、肌はスベスベもちもち、髪もうるつやで、思わずソーヴィに見せに走った。
「ソーヴィ、見て見てー!」
丁度、お店の方から出てきたソーヴィに遭遇し、くるりと回転して自慢する。
「つやつやー!すべすべー!シャーリーのメイドさん達すごすぎー!」
きゃっきゃと喜んでいると、抱き止められて髪に指が差し込まれた。
「本当だ、滑らかで気持ちよくて、ずっと触っていたくなる。」
「ねー!すごいよねー!」
同意を求めて見上げると、ソーヴィがほんの少し悲しそうな顔をしていた。
「…どうしたの?」
「なにが?」
ニコッと笑って私の体を引き離し、頭を撫でる。
「メイドさん達に、夜はこっちで寝てもらうように伝えてくれる?ベッド用意しておいたから。」
「分かった。」
髪から手を引くと、ソーヴィはお店に戻って行った。
「なんか、ソーヴィが変。」
普段ならここで、キスのひとつやふたつ降ってきてもおかしくないし、肌のすべすべ感を確かめる為に服を脱がせて、色々触られるくらいは覚悟していたのに。
…明日が、不安なのかな。
翌朝、マッサージを受けてからメイクとヘアメイクに取り掛かった。
「ドレスに合わせて、可憐だけど大人っぽいイメージで仕上げますね。」
「お願いします。」
美容師さんのように髪をシュルシュルっとやって、編み込みをされていく。こっちに来てから一度も髪を切っていなかったので、割と長さがあり、アップスタイルにするには丁度良かった。
「アユリ様のお髪は美しいので、腕が鳴りますわ。」
ヘアメイク担当のメイドさんの目がキラリと光る。
「あ、ありがとうございます。」
同時に別のメイドさんの手によって爪が磨かれ、色付けされていく。
「そういえば、後のお二人は?」
「ソーヴィ様の準備をお手伝いさせていただいております。ご安心ください、着付けとヘアメイクだけですから。」
「えっ、何も心配してないですよ!」
「ウフフフ」
何にも心配してないのに、二人に生温かく笑われている。
昨日の夜の営み、聞こえてたのかな…いや、朝かな…
恥ずかしくて顔が熱くなった。
「はい、次はお顔ですね。」
色んな液体を塗られて、粉をはたかれて、ソーヴィの作ってくれたカラーパレットを駆使して顔が作られていく。
「アユリ様は幼いお顔をしてらっしゃいますから、大人っぽく仕上げたら、またソーヴィ様がお熱くなってしまわれるのでは?」
「えっ?!えっ?!」
「まあ、素敵ですわあ!私共は外で控えておりますので、お時間にお遅れにならなければ、お好きなだけ…」
「ならないから!しないから!」
メイドさん達にからかわれながら仕上げられると、最後はドレスを着付けされて、ジュエリーを飾る。
「アユリ様、完璧ですわ…!」
「これは、ソーヴィ様がお喜びになられますわね。」
鏡の前に立つと、見たこともないお姫様がいた。
シンデレラみたい…
「ありがとうございます、こんなにきれいにしてもらって。」
「いえ、私共も大変楽しませていただきました。」
「ささ、ソーヴィ様にご覧になっていただきましょう!」
コクリと頷いて、部屋を出た。
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