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3章 譲位騒乱

78・日常を取り戻す

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愛し合って深く眠り、起きてからまずしたことは、部屋の片付けだった。
整理整頓はソーヴィが一瞬で終わらせたんだけれど、ホコリや汚れまでは行き届かないから、箒で掃いたり、モップをかけたりした。
私が拐われてから、ソーヴィは仕事を全部放り出していたので、その対処にも追われている。
だから珍しく、休憩えっちがなかった。全く休む暇がないのだ。
それはそれで、ちょっと寂しい。
やっとゆっくり話すことができるようになったのは、夕飯の時間になってからだった。
ソーヴィお手製のポトフと、私の作ったハンバーグ、パンを並べて食卓を囲む。
「ねえ、ソーヴィは捕まってなかったって本当?」
昨日、気になっていたことを口にする。
「うん。指定された場所に、薬を届けに行ったんだけど、もぬけの殻だった。あれは、俺を引き離して、アユリを拐う為の罠だったんだよ。」
「…!ひどい、患者さんへの気持ちを利用するなんて!」
ハンバーグをもぐもぐしながら、ソーヴィが冷たい目をする。
「そういうやつだよ、アイツは。結界が破られたことに気づいて慌てて戻ったんだけど、一歩遅くて…家にアユリはいなくて絶望して…今思い出すだけでも殺したくなるな。」
「人殺しはダメです!」
ポトフのスープが温かくて野菜の甘みがあって、美味しい。
「そう言うと思ってたから、その足でシャロンの屋敷に行って、事情を説明したんだ。久しぶりに男の方のシャロンが怒ってたよ。」
「シャーリーにまで迷惑かけちゃった…」
ソーヴィが首を振る。
「違う、アユリは何も悪くない。巻き込んだのは俺達。それに、シャロンがとっとと国王になってれば、良かったんだよ。一回、打診されたのに断るんだから。」
「えーー!!!そうなの?!」
「そうだよ、興味ないですって。そしたら、自分に順番が回ってくると思ったアイツが調子に乗ってさ、迷惑ったらない。」
そうだったんだ…でも、シャーリーなら素敵な王様になれると思う。
あんなに領民を愛してるんだもの。
「元々、アイツはあんまり評判良くなくて、汚職したり、俺のこと暗殺しようとしたり、危ない奴らと手を組んだりしてたから、その証拠集めに奔走してて…助けるのに時間がかかっちゃった。ごめんね。」
「ううん、そんなことない!私もね、天使と話して筋トレしたり、逃亡作戦考えたりしてたの!」
助けに来てくれたから実行しなかったけど、それがあったから自分を取り戻せた。
後で、天使にお礼を言っておこう。
「そうだったんだ、頑張ってたんだね。」
「えへへ、ソーヴィも助けに来てくれてありがとう。」
「アユリがいなくなったら、俺も死ぬからさ。」
分からんでもないけど、生きてほしいな。
「シャーリーは今、あの人を捕まえて王様に話してるってこと?」
「そうだね、まあ何年か牢屋の中か…入らなくても王位継承権の剥奪は確定だろうね。」
「シャーリーの他に王様になる兄弟はいないの?」
「兄はいるけど、近衛騎士になってたり、参謀になりたいっていう好戦的な奴しかいないから、興味ないんだと思う。政治より戦って感じ。」
みんな、個性豊かだな…
「でも、この国って戦争ないよね。」
「俺が生まれるもっと前はあったらしいけど、今はないね。ありがたいよ。」
そっか、良かった。
「シャーリーには、平和な王様になってほしい。」
「シャロンは平和主義の博愛主義だから、大丈夫じゃないかな。」
うん、そうだよね。
でも私がまず思い出したのは、シャーリーがメイドさん達を平等に愛している姿だった…


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