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第1章 はじまり
25・二人の気持ち
しおりを挟む時が止まったような気がした。
ソーヴィは黙ったまま。
私も俯いたまま何も言えなくて、窓の外で鳥の鳴き声だけが聞こえる。
じっとしていると、ソーヴィの胸が動いているのが分かった。呼吸をしている。
少し視線を上げると尖った喉仏が見えて、ゴクリと動いた。
そして、血色のいい唇の、口角が上がっている。
えっ?
驚いて顔を上げれば、泣きそうな顔で笑っていた。
「ごめん、今ちょっと…感情が迷子で。」
目尻から涙がポロポロと溢れ落ちた。
その頬に手を当てて、私にしてくれたように、拭う。
「アユリが…死んでしまって…帰る場所がないって言葉が…どれだけ辛かったのかなって思ったら、すごく悲しくて…」
そして、切れ長のグレーの瞳が、ニッコリと笑う。
「俺のところに来てくれたことが、嬉しいんだ。」
ソーヴィにつられて、私も泣いてしまった。
そういうことに、して欲しい。
ソーヴィの首に抱きついて、わんわん泣いた。子どもみたいに、声を上げて、鼻をグズグズさせて、ソーヴィの服をぐしゃぐしゃにした。
しゃくりあげていると、暖かい手が背中を撫でてくれる。
「服…ごめんね…」
「いやあ、全然。本当不謹慎で悪いんだけど、押し倒したくて仕方ないよね。」
「…ソーヴィって、ブレないね。」
「アユリが可愛いからなあ、仕方ないね。泣き声が、すっごくエロくて…しかも耳元だし。勃たないように我慢するの、大変だよ。」
このどエロ脳が、と首から離れて顔を見たら、ソーヴィの顔も涙でぐしゃぐしゃだった。
その優しさが、泣けてくる。
「ねえ、3回目ってどれ?」
嬉しそうに笑って、聞いてくる。
テンプテーションの、3回目。
それは…
「昨日…お医者さんで、ソーヴィが私を抱きしめた時に、離してって。それが、3回目。」
「何で離して欲しかったの?」
背中を撫でていた手が頭に移動して、指先が頭皮をなぞる。
「…あそこに、いたくなかったから。」
「どうして?」
頭から耳に移動して、ゆるゆると溝に指を入れられた。
「んっ…ソーヴィが…メロキーさんと…話してるのを聞きたくなかった。仲良さそうなのが、やだった。」
耳の裏をなぞって首へ。
「…俺、自惚れてもいいのかな。違うなら、違うって言って。」
首筋をするりと撫でられて、鎖骨を触られる。
「違く…ない…」
頭の後ろに手を回され引きつけられると、唇を塞がれた。
えっちをする時のキスじゃなくて、触れるだけの優しいキス。
くっついては離れて、離れてはくっついて、何度も何度も、繰り返される。
顔が離れて目が合った。
「アユリ、好きだよ。」
心の中が暖かくて、じわじわと体に広がっていく。
嬉しくて嬉しくて、仕方ないのに。
いまいち、分からない。
「何で?」
超絶顔が良くて、スタイルも性格も頭も良くて、エロくて、モテてモテてモテまくってるのに、どうして私?
「えっ、何で?!そう言われると思わなかった…」
「私が…ソーヴィを好きになるのは、まあ…そうなるよねって感じじゃん。逆は分からない。」
グレーの瞳が、揺れる。
「…アユリは、そこにいるだけで、俺を幸せな気持ちにしてくれるんだ。」
うん、分からん。
「納得いってない顔してるね。」
「言葉の意味は分かるんだけど…」
「よし、じゃあ体で分からせてあげよう。」
「は?」
首筋に強く吸い付かれるようにキスをされた。
「俺のものって跡、ずっと付けたかったんだよねえ。」
「えっ、待って、今?」
「うん、今。」
「生理前なのに無理させてごめんって言ったの、どの口?」
「この口かなあ?」
ペロッと舌を出して私の唇を舐める。昨日、散々愛された入り口に、硬いものがゴリっと当てられた。
「ソーヴィの、絶倫!」
「大丈夫、すぐ終わる気がする!」
嘘だ、絶対に嘘だ。
「アユリ、俺の愛、ぜーんぶ受け止めてくれるよね?」
満面の笑みで押し倒された。
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