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第1章 はじまり
18・初めてのお出かけ
しおりを挟む家を出てドアの鍵を閉めず、どんどん森へ向かっていく。
「ソーヴィ、鍵閉めないの?」
「ここには誰も来られないから、閉める意味ないよー。」
そうか、結界か。
なんで結界張ってるんだろう、と思いつつ聞いたりはしない。
森の入り口から少し入ったところに、大きな木があった。
「これが、外につながる場所。アユリ、ちょっと失礼。」
横抱きにされたので、落ちないように首に手を回す。
「俺から離れないでね。」
大きく首を縦に振ると、額にキスをされた。
ソーヴィってキス魔なんだよね。
別に嫌なわけじゃないけどっ!
そのまま、木の中に入っていく。
えっ、何怖い!なんで木を通れるの?!なんなの?!
びびってソーヴィにしがみついていると、頭の上で笑われた。
「大丈夫だよ、俺たちにとっては映像だから。他の人にはただの木だけどね。はい抜けた。」
そこはまだ森の中で、見た目は変わっていなかった。
「で、ここから転移魔法を使います。」
ソーヴィが足を踏み鳴らすと、光に包まれる。
「よく買い出しに行ってる街に着くよ。」
そうなんだ、ソーヴィの行ってたバーもあるところ?
ってことは…ソーヴィの竿姉妹がいっぱいいるのかな。わーお、女の戦争起きたりしないよね。
私、また死ぬの嫌だよ。もう少し生きたいよ。
光が消えて辺りを見ると、門が見えた。
「到着ー!門を越えたら街だよ。」
抱えられたまま向かうと、門番の厳ついおじさんに微笑まれた。
「ようソーヴィ、久しぶりだな。夜に見かけなくなったのは、そのお嬢さんのお陰かな。」
「あははっ、まあね。可愛いでしょ?」
やめてくれ…恥ずかしくて死ぬ。
顔を隠すようにソーヴィの胸にへばりつけば、もっと笑われた。
「仲良くやんなよ!」
「じゃあね!」
そのまま門を通り抜けて歩いて行く。
「ソーヴィ、恥ずかしいから下ろして…!」
「だーめ。アユリは具合悪いんだから、このままじっとしてて。」
「まだなってないし、歩けるから!」
「無理。可愛いからナンパされる。」
「それは、ない。」
押し問答を繰り広げていたら、いつの間にか街の中に入っていた。
辺りには人が溢れ、活気があり、騒めいている。
前の世界の住んでいた街とは、少し違う。
「おっ、ソーヴィじゃん!元気?」
「やあ、ありがとう元気だよ!」
「ソーヴィ、この前はお薬ありがとう。おじいちゃん元気になったよ!」
「良かった!また具合が悪くなったら、できるだけ早く知らせること。行けるなら医者に行くんだよ。」
「うん、分かった!」
「ソーヴィだ!なあ、新しい毛生えクリームはまだか?」
「今開発中!もうちょっと待ってて!」
老若男女、ものすごく話しかけられている。
え、ソーヴィって有名人なの?
でも聞いてる感じ、ソーヴィの仕事関係だな。
「わあっソーヴィ!って…その女、誰?」
甘い声で呼びかけたのは、快活そうなとっても若い女の子。ボンキュッボンな弾ける体を持て余しているような、フレッシュさがある。
私より、10歳くらい年下なんじゃないかな…
え、まさか…こんな若い子にまで手を出したんじゃ、ないよね?
チラッとソーヴィを見ると、何の後ろめたさもなさそうに、キラキラと笑っている。
「やあ、元気だった?また大きくなったね。この人は…俺の大切な人だよ。」
おっと…まじか…
私、ソーヴィの大切な人だったんだ。知らなかったぜ。
頬が熱いのは、気にしないこととする。
「嘘ー!何で?!ソーヴィ、誰とも結婚しないって言ったじゃん!」
「うん、結婚はしてないよ?」
してませんねえ。
っていうか、誰とも結婚しないんだ。
何でだろう…聞かないけど。
「もう少し大きくなったら、セックスしてもらおうと思ってたのに!ソーヴィのばかー!」
女の子は、半泣きで走って行ってしまった。
ソーヴィは眉尻を下げて困った顔をして私を見る。
「…そんな約束してないし、そこまで見境いない訳じゃ無いからね?」
「別に何も言ってないよ?」
性欲増大の体質ってことは、私と似たようなものだし、性に緩い国なら仕方ないのでは。
「…今は、アユリにしか興味ないから。」
「…そうなんだ。」
恥ずかしくて顔を見られなかった。
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