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第1章 はじまり

7・どうか、ここに置いてください。

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イケメンというか、美形というか、クールビューティというか…とりあえず超絶顔がいいこの男は、目覚めた時からずっと笑っている。
機嫌が良いといのは、素晴らしいことだと思う。
前の世界では、機嫌に振り回される人間が多かった。特に会社ね、上司も先輩も不機嫌になると八つ当たりや理不尽な文句つけてきてたな…
自分の機嫌は自分で取れと常々思っていたので、この男の評価が私の中で上がっている。
そういえば、名前…知らないぞ。
サンドイッチを食べ終え、食後に出されたお茶を飲みながら、顔を眺める。
「どうしたの、アユリ。そんなに俺の顔、気に入った?」
それ、言われ慣れてますって表情だ。まあ、気に入るよね。
「あなたの名前、知らないなと思って。」
すると、一瞬目を見開いてから、にぱっと笑った。
おお、どういう顔だ??
「ソーヴィ、俺の名前はソーヴィっていうんだ。」
「ソーヴィ…」
「うん、そう。あー…アユリの声って、やっぱやばいなあ。もうすぐ仕事の時間なのに、名前を呼ばれただけで、もう一回したくなる。」
げっ、やっべえ奴だよやっぱ。
本当にここが、私の一番生きやすい場所なの?!
不安になってきた。
でも、背に腹はかえられぬ。
覚悟を決めて、言うことにした。
「ソーヴィ、お願いがあるの。」
「何?アユリも、もう一回したい?」
そこはスルーしておく。
「実は、帰る場所がなくて困ってます。どうか、ここに置いていただけませんか。仕事の手伝いとか、家事とか、何でもやりますので。」
深々と頭を下げる。
ここで断られたら、詰みだ。
いや、拝み倒すか居座るか…
「いいよー。」
「えっ?!」
答えに驚きガバッと顔を上げると、ソーヴィが目を細めて頬杖をついていた。
「いいんですか?」
「うん。」
「…私がいると、女の子を連れ込めなくなりませんか?」
ケラケラ笑って手を振る。
「アユリが相手してくれるなら、連れ込まなくて済むよう。」
魔力補給もできるし、こちらとしては願ったり叶ったりな訳だが。
「何でいいの…?正体不明の女をそんなにアッサリ置くなんて、危機管理が足りてません?」
「その辺は大丈夫なの、俺。アユリが俺を殺しに来たっていうなら、別だけど。」
大丈夫って言うなら、いいのか。
「人を殺める趣味はございません。」
「じゃあ、問題なし!いやあ、いいねえ。家に女の子がいるって、華やかだよお。」
テレッテレ笑ってヘラヘラしている。
私、美人でも何でもないけど、ソーヴィが喜んでるならいいか。
「では、どうぞ末永くよろしくお願いします。」
「よろしくね。あ、もう仕事の時間だ!ごめん、悪いんだけど、後片付けお願いしてもいい?終わったら、そこのドアから外に出て、隣の家に来て!じゃ、いってきます!」
「いってらっしゃい。」
ソーヴィはパタパタと走ってドアから出て行った。
「天使ー!」
「はいはい、何でしょうか。」
「あっさりオッケーもらえたわ。拍子抜け。」
「良かったですねえ。女神様がご指定された場所ですから、そんなに困難はないと思ってましたけど。」
お皿を重ねて持ち、キッチンへ運ぶ。
「この世界で、生きていけるかな。」
「はい、ここが一番生きやすい場所ですから。大丈夫ですよ。」
「そっか、じゃあソーヴィのこと、大切にしないとね。」
まずは、彼のことを知っていこう。
まだ、体の相性と名前、料理が上手ってことしか、知らない。

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