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ドラゴンの肉編

20ー②.勇者の願い

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ゆうしゃさんは丁寧に断りを入れると、今一度私の所へやってきました。






「すみません、さっきの話ですが……。」








「良いですよ。」








「えっ?」









「まおうさんの所へ行くんですよね?」







まんもふさん達を逃してしまった今では、もう直接伝えたいことを言うしかありません。







そうなると、詳しそうなゆうしゃさんについていくのが賢明なようです。








私がゆうしゃさんのお誘いを受け入れると、嬉しそうにしております。









「ありがとうございます!これで、どんな敵も…………。」






私はその瞬間、ゆうしゃさんの耳元で呟きます。









「さっきのことは、くれぐれも内緒にしてくださいね。」








「………は、はい。」







良かったです、理解が早くて。









「それでは改めてよろしくお願いします、ゆうしゃさん。」








こうして私と娘はゆうしゃさんと、まおうさんの所まで同行することになりました。








ゆうしゃさんは有名人のようで、あちらこちらでたくさんの人達に話しかけられます。








「人気者なんですねゆうしゃさんは。」






馬車の中で私は話しかけます。








「『人気』というよりか、それだけみんなが私に期待しているということですよ。平和な世界にしてもらうのを。」




「だから、そんな人達のために少しでも早く願いを叶えてやりたいんです。」






素晴らしい考えを持った人ですね。










「ところでご婦人は何をしにラスカへ?あんな危険な時に来るなんてよっぽどのことだと思うのですが。」







「私まおうぐんの方達に用があったんです。話を聞こうと思ったんですが、チャンスを逃してしまいました。」










「なるほど、そうだったんですか。あのレベルのまおうぐん相手に話を持ちかける度胸と強さ…………。」









「ん?何か言いました?」







「い、いえ、何もないです。」







ゆうしゃさんはうっかり喋ってしまいそうで怖いですね。






娘には昔の私のことは内緒にしているんですから。















「着きましたぜ、勇者様方。」







お、どうやらここが目的のようです。






目の前には、とても大きな街が広がっていました。




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