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第4話 修羅場と偶然と告白?
しおりを挟む「あれ?中森君?」
「あ...」
「木村さん!まさかウチをつけてきたの!?てか、2人お知り合い?」
「流石にそこまでしませんって...まあ中森君とは中学の知り合いだけど」
「へぇ~...そうだったんだ。あれ?中森くん?」
まさか、彼女が、木村《きむら》光子《みつこ》は、僕の中学の頃の同級生であり、初恋の相手でもあり、僕の中学人生が棒に振る原因の根源に当たる人物だった。
「なにこれ、、修羅場?」
僕達は、黙り合いながら互いを見つめていた。そんな一触即発の状況に、古賀さんは首を傾げていた。
「中森君、諒花さんと、どういう関係?」
「ど、どういう関係...と言われても」
『ごめん、なんか面白くって、いいよじゃあ私が友達になるよ』
『これでもう、正式な友達だね!』
あの時の古賀さんの言葉が思い返される。
そうだ、僕と古賀さんは友達なんだ。
「と、友達だよ!」
そう答えた時、公園の木が揺れ、ざわついた。
木村さんは驚き、古賀さんも少し口を開いているように見えた。
「き、君こそ、こ、古賀さんと、どういう関係なの?」
「私と諒花さんは、、、」
木村さんは、俯《うつむ》いて、口篭《くちごも》る。
「ス、ストーカー?」
「ちち、違う!」
「て、ていうか、君、よく諒花さんと友達になれたね。君みたいな根暗くんがさ。本当は、君だって、諒花さんの事、色目で見て、付きまとってるだけじゃないの?」
木村さんは、話をすり替えるように強い口調でそう言った。
「うっ...」
彼女の言う通りかもしれない。僕はそう思い、何も言えなくなってしまった。そんな時、古賀さんが僕の前に躍り出た。
「木村さん!ウチのストーカーをするのは百歩譲っていいけど、ウチの友達の悪口を言うのはちょっと心外かな」
「そんな、諒花さんまで。もういいです。それと、私本当に、ストーカーしに来たわけじゃないですから!それじゃ」
気まずくなったのか、木村さんはそう言って、怒って帰ってしまった。
いやあれ絶対ストーカーしてただろ。明らかに動揺してたし、君だって、とか言ってたし。
「なんかごめんね。悪い思いさせて」
「いや、古賀さんのせいじゃないから。むしろ、なんかいざこざに巻き込んだのは僕の方だし...ごめん」
「何かあったの?木村さんと」
「彼女、僕の中学の同級生なんだ」
「木村さんもそう言ってたね」
「それで、僕の初恋の相手でさ、告白、したんだよね...勇気出して。僕は、普通は勇気が出ない人間だから確実に100%行けるって、OKされるって状態じゃないと告白できない。でも僕はその前に木村さんの友人から両思いだと聞かされてたから...思い切って」
「で、どうだったの?」
「こっぴどく振られた...」
「そっか...」
「元から、両思いってのは嘘で彼女は僕を弄《もてあそ》んでいたんだ。まぁ、信じた僕が悪いんだけどさ」
「うーん、、君は悪くないと思うけど」────「流石にそれは、木村さんが悪いとウチは思う。嘘を信じるよりもつく方が」
「もう僕は彼女を恨んでは無いからまあいいんだけどさ」
彼女の嘘が加速して、僕がいじめの標的になり、中学生活を棒に振るったんだけど、それはもう過去の話。
過去を振り返って後悔をすることの多い僕だけど、今の木村光子本人に対する恨みつらみはもう消えていた。だから古賀さんにも彼女が主犯格と言う必要が無い。木村光子も、古賀さんには嫌われたくないだろうしな。
ただ単に、もし言った場合にその当てつけになにかされる恐怖があったからかもしれないけど。
「あっそういえばバレたんだよねー」
重い空気が流れる中、古賀さんは急に思い付いたかのように話し始めた。
「え?」
「あの、玩具屋でいつも隠れてること」
「えぇ、そんな」
「だからほかの場所見つけないとなぁ、あそこでのんびり駄菓子食べるの好きだったんだけどな」
「じゃあ、もうあそこには行かないの?」
「まぁ、ウチのファンの生徒が着いてきたら店に溢れかえっちゃって迷惑になるしね」
つまりはもう、古賀さんは、玩具屋には来ないってことか!?
それはまずい!彼女に会う口実が無くなっちゃうじゃないか。
いや、いいか。他校に通う女子生徒なんて、いずれ別れる時が来る。それに彼女を放っておく人間はいない。どうせ彼女との関係も時間の問題だったのだ。友達になったとはいえ、僕に彼女と連絡を取る勇気は無い。それに、古賀さんレベルの人は絶対に彼氏がいる。僕なんかが連絡を送ったら迷惑だろう。
「じゃあ、今日は僕はこれで」
これが古賀さんとの最後の別れだ。
「あれもう帰るの?」
「こ、古賀さんは帰らないの?」
「うん。ちょっと動画編集してから帰る。またね中森くん」
「またね...」
もう二度と会うことの無いだろう相手と僕は、別れの挨拶を交わした。
◇
帰り道、僕は家に帰らず、玩具屋に戻っていた。
なんというか、感慨《かんがい》に浸《ひた》りたかったのだ。
僕は、適当に駄菓子とプラモを買った。
買い終わった後はもう、感慨に耽《ふけ》ることも無く、そそくさと店を出た。
何故だか、この店に足を運ぶのも今日で最後の感覚だった。
僕は財布におつりをしまう前に店を出て、歩きながら財布にお金を入れていたので、慌てて、小銭を落とした。大きさ的に500円だ。
高校生の500円は普通にでかい。
そんな道にころがった500円を通りがかった野良猫が、咥え、走っていく。
「ちょ、、待て野良猫!」
僕はその野良猫を追いかけた。
野良猫は、緑色のネットフェンスに空いた人一人通れそうな穴に入り、大きな茂みの中に消えていった。
「くそぉ~なんて所入ったんだよ。あぁーどうしよう。仕方ない入るかぁ」
僕はしゃがみ、そのフェンスの穴を潜《くぐ》った。潜った先には、もう猫は消えてしまっていた。しかし、目の前に広がる光景は衝撃的なものだった。
何気ないフェンスの穴の先にある、茂みの中には、丁寧に手入れされた綺麗な庭が広がっており、木の看板と明かりの灯った家があった。まるでファンタジーの世界に入ったよう空間だった。
看板に近づいて文字を見ると、アフタヌーンティーとある。それで、この家が、隠れ家カフェであることが分かった。
隠れ家カフェを見つけたのはいいが、結局は500円をなくしてしまったし、そして僕は、カフェのアフタヌーンティーでインスタ映えという陽キャバリバリの文化が嫌いだったので、せっかく草まみれになりながらフェンスを潜ったのに、取り越し苦労に終わったのだ。
◇
数日間、僕は気分が乗らなかった。
学校生活がいつも気だるいのは、変わらない日常だったが、いつも以上にテンションが低い。もっともそのテンションの低さは、周りからしたらいつもと変わらないように見えるんだろうけど。
そしてある日の下校後、事件は起きた。
その日も気分が落ちていて、いつもより歩くペースが遅く、とぼとぼと歩いていると、急に後ろなら猛スピードで古賀さんが走ってきた。
「中森くん!またファンに追われてるんだよ、どうしよう!」
「古賀さん!?えっと、そうだ!」
そこで僕は思い出した。あの隠れ家カフェだ。あそこは絶対にバレるわけが無い。
「いい場所があるんだけど」
「案内して!」
と言って彼女は僕の制服の裾《すそ》を取った。そして僕は指を指しながら、彼女と一緒に走り始めた。
「ずっと指さして教えてくれる?もっと走るスピードあげるから!ここの分かれ道は?」
「わ、わかった。えーっとこっち!」
いつの間にか道を教えられるはずの彼女が僕を引っ張っていた。
古賀さん絶対、運動神経いいな。
「えっ、ここをくぐるの?」
「う、うん」
古賀さんは四つん這いになってフェンスの穴を潜っていった。スカートの中が見えそうになる感じがして僕は慌てて、顔を背けた。
古賀さんが潜り抜けたのを確認すると、僕も続くように穴を潜った。
「す、すごい、ここ隠れ家カフェじゃん!」
「なんか知る人ぞ知るみたいな感じだよね」
「ウチの為にここ見つけてくれたの?」
「いやまぁ、、うーん、うん」
たまたま見つけたんだけど、まあ救ったのは事実だし。
「そっかありがと~」
「全然、緊急事態みたいだったし」
「ここが新しい隠れ場所かなぁ」
古賀さんがそうつぶやく。
ここに来れば彼女に会えるのかと思ったけど、こんなオシャレなカフェ僕一人じゃ入れないし玩具屋のようにはいかないなと思った。
もう、彼女に会うのも、もしかしたら最後になるかもしれない。
「じゃあ、僕はこれで」
と言って僕は、もう帰ろうとした。
いっそのこと、後腐れなく、足早に別れよう。最後に彼女の役に立てて良かったじゃないか。
「ちょっと待って!」
古賀さんに呼び止められ、踵を返す。
初めて見る顔だった。
その顔は、少し強ばったようななんとも表しがたい微妙な顔。
「あのさ、」
「うん?」
「ウチら、付き合わない?」
うん?
待て。
待て待て待て。
この流れは、もう無かったんじゃなかったのか。なんだ、あれか?美人局《つつもたせ》か何か?それか悪質なドッキリか?そんな、まさか最強ギャルの彼女が僕に告白するわけが無い。
ひねくれた陰キャの僕にはそんなアニメみたいな上手い話は無いと、ネガティブに考察してしまう。
て、ていうか、古賀さん彼氏いないのか!
「その、もういちいち隠れるの面倒になったし。君が良ければなんだけど」
「な、なんで僕と?」
「な、成り行きだよ!成り行き!」
彼女は勢いよく、そう言った。
成り行きならいっかー!ギャルらしい理由だけど逆に安心出来る。とどのつまりキープ枠かもしれないけど。
でも、最強レベルの彼女と、古賀さんと付き合えるなんてこんな一世一代のチャンスない!ええい、ままよ!
「こ、こちらこそ...」
僕は、そう答え、古賀さんからの告白?をOKした。
こうして、僕と最強ギャルである古賀さんとの恋人生活?が幕を開けたのだった────。
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