142 / 253
Chapter09 - Side:Other - C
138 > 弁護士事務所 ー10〜 混乱 (Side:Sugar)
しおりを挟む
【Side:Sugar】
来た時に通された待合室というか、待合区画とは別の、相談室とは事務スペースと真逆に位置する奥の個室──6畳程度で相談室と同じ向きにブラインドが掛かった大きめの窓がある部屋──に案内された。
その部屋には幸いにもさっきの待合場所とは違って、時間潰しになるような新聞や雑誌やちょっとした本などが本棚に並べられていて、肘掛けと小さなサイドテーブル付きのゆったりくつろげるような1人掛け用のソファが5個、間隔を開けて2列に並べ置かれている。
セルフの飲み物コーナーまであって、長く待機できるように配慮されているようだ。
〝へぇ……〟
弁護士事務所に来ることなんかそうそうない事だから、色々と新鮮だった。飛行機に乗らない限りお目にかかれない各種機内誌の『翼の楽園』なんかが並べられていたので、その中から1冊を取り出して読みながら待機していた。
だが、その新鮮さを満喫していても、ブラインドの外が暗くなり始めると少し不安になってきた。
汐見が相談室に入ってからもう1時間になる。
〝中でどんな……何の話をしてるんだろう……〟
汐見の血縁者でもない部外者の分際でこんなところまでノコノコ来てしまっていた俺は、今、この際、そういうことはあまり考えないでおこうと思っている。
〝今更だしな……〟
汐見のことになると目の色を変えてついつい首を突っ込んでしまうようになって、もうかれこれ6年以上になる。
それを汐見は気づいてるんだか、気づいてないんだか……だから、今更なんだが……
〝しかし……あの、池宮弁護士の顔、って……〟
汐見と出会うまで……いや出会ってからも、俺は毎日のように鏡で見てる自分の顔と、盲目状態になって可愛いとしか思えない汐見の強面以外、男の顔面に興味なんてカケラもない。
〝見てないわけじゃないんだが……〟
女性もそうだが、それ以上に男性は中身だよな、と思うようなことが頻発してた時期──汐見と出会った頃の話だが──見た目ばかり気にする周りに嫌気がさしていたのはある。
〝……あの当時の俺だって、人のこと言えたもんじゃなかったんだけどな……〟
それにしても。と俺は思った。
〝池宮弁護士のあの顔について、汐見はなんの違和感も抱かなかったのか……?〟
池宮弁護士本人に会うまでに汐見から聞いた情報では、顔の半分がもっさりとした髭面で、自分と同じくらいの身長だけど『失礼だけど』と言ってから『でっぷりしてる……』という話だった。
だが、さっき相談室で見たのは、汐見ほどの強面ではなかったものの、ガッチリ体型とスッキリした顔のラインと知的で爽やかな印象の方が強かった。伝聞で聞いて想像していたのとは印象が180度違う。
〝何がどうなってんだ……〟
汐見自身も2年ぶりに?会う(と言っても2回目か)池宮弁護士本人を目の前にして少し動揺していたみたいだから、おそらく前回会った時とだいぶ見た目が変わっているのかもしれない。
〝それはそれとして……〟
造作の問題というよりは、雰囲気?だろうか???
〝汐見に…………びっくりした……〟
ちゃんと2人並んでいる時によく見れば、それほど似てはいないんだろうが……醸し出す?雰囲気?というかなんか……うまく表現できなくてもどかしい……
〝汐見は気づいてるか?〟
本人が気づいてないなら、気にならないなら、いちいち指摘するようなことでもないので放っておこうと思う。
だが……そういう、汐見が言っていたクマのような風貌?だったんだとしたら、池宮弁護士はいつからそういう風貌だったんだろうか。そして……
〝〈春風〉は……〟
俺に席を外させて話している内容、汐見に似ていると感じる池宮弁護士、そしてその弁護士と古くからの知り合いである〈春風〉……
〝情報と状況を整理しないと、混乱するな……〟
スマホとかではなくて、紙面に向かって図解したいところだ、そう思っていると
コンコン
待合室のドアがノックされ
「はい」
俺が応えるとドアが半分だけ開き、事務員らしき女性が顔を覗かせて言った。
「すみません、池宮が呼んでますので、先程の相談室まで移動していただけますか?」
「あ、はい。わかりました」
俺は途中まで読みかけていた機内誌を本棚の元の場所に戻そうとして
「大丈夫です。椅子に置いておいてもらえますか。あと、相談室にコーヒーをお持ちしますので、お茶碗もそのままで」
「あ、はい。了解です」
〝なんか……行き届いてるな……〟
個人事務所っぽいのにその辺りの行き届いた配慮が見えて、ホッとした。
そして、その女性に案内されるがまま、奥の待合室から、反対側の奥の相談室まで移動した。
来た時に通された待合室というか、待合区画とは別の、相談室とは事務スペースと真逆に位置する奥の個室──6畳程度で相談室と同じ向きにブラインドが掛かった大きめの窓がある部屋──に案内された。
その部屋には幸いにもさっきの待合場所とは違って、時間潰しになるような新聞や雑誌やちょっとした本などが本棚に並べられていて、肘掛けと小さなサイドテーブル付きのゆったりくつろげるような1人掛け用のソファが5個、間隔を開けて2列に並べ置かれている。
セルフの飲み物コーナーまであって、長く待機できるように配慮されているようだ。
〝へぇ……〟
弁護士事務所に来ることなんかそうそうない事だから、色々と新鮮だった。飛行機に乗らない限りお目にかかれない各種機内誌の『翼の楽園』なんかが並べられていたので、その中から1冊を取り出して読みながら待機していた。
だが、その新鮮さを満喫していても、ブラインドの外が暗くなり始めると少し不安になってきた。
汐見が相談室に入ってからもう1時間になる。
〝中でどんな……何の話をしてるんだろう……〟
汐見の血縁者でもない部外者の分際でこんなところまでノコノコ来てしまっていた俺は、今、この際、そういうことはあまり考えないでおこうと思っている。
〝今更だしな……〟
汐見のことになると目の色を変えてついつい首を突っ込んでしまうようになって、もうかれこれ6年以上になる。
それを汐見は気づいてるんだか、気づいてないんだか……だから、今更なんだが……
〝しかし……あの、池宮弁護士の顔、って……〟
汐見と出会うまで……いや出会ってからも、俺は毎日のように鏡で見てる自分の顔と、盲目状態になって可愛いとしか思えない汐見の強面以外、男の顔面に興味なんてカケラもない。
〝見てないわけじゃないんだが……〟
女性もそうだが、それ以上に男性は中身だよな、と思うようなことが頻発してた時期──汐見と出会った頃の話だが──見た目ばかり気にする周りに嫌気がさしていたのはある。
〝……あの当時の俺だって、人のこと言えたもんじゃなかったんだけどな……〟
それにしても。と俺は思った。
〝池宮弁護士のあの顔について、汐見はなんの違和感も抱かなかったのか……?〟
池宮弁護士本人に会うまでに汐見から聞いた情報では、顔の半分がもっさりとした髭面で、自分と同じくらいの身長だけど『失礼だけど』と言ってから『でっぷりしてる……』という話だった。
だが、さっき相談室で見たのは、汐見ほどの強面ではなかったものの、ガッチリ体型とスッキリした顔のラインと知的で爽やかな印象の方が強かった。伝聞で聞いて想像していたのとは印象が180度違う。
〝何がどうなってんだ……〟
汐見自身も2年ぶりに?会う(と言っても2回目か)池宮弁護士本人を目の前にして少し動揺していたみたいだから、おそらく前回会った時とだいぶ見た目が変わっているのかもしれない。
〝それはそれとして……〟
造作の問題というよりは、雰囲気?だろうか???
〝汐見に…………びっくりした……〟
ちゃんと2人並んでいる時によく見れば、それほど似てはいないんだろうが……醸し出す?雰囲気?というかなんか……うまく表現できなくてもどかしい……
〝汐見は気づいてるか?〟
本人が気づいてないなら、気にならないなら、いちいち指摘するようなことでもないので放っておこうと思う。
だが……そういう、汐見が言っていたクマのような風貌?だったんだとしたら、池宮弁護士はいつからそういう風貌だったんだろうか。そして……
〝〈春風〉は……〟
俺に席を外させて話している内容、汐見に似ていると感じる池宮弁護士、そしてその弁護士と古くからの知り合いである〈春風〉……
〝情報と状況を整理しないと、混乱するな……〟
スマホとかではなくて、紙面に向かって図解したいところだ、そう思っていると
コンコン
待合室のドアがノックされ
「はい」
俺が応えるとドアが半分だけ開き、事務員らしき女性が顔を覗かせて言った。
「すみません、池宮が呼んでますので、先程の相談室まで移動していただけますか?」
「あ、はい。わかりました」
俺は途中まで読みかけていた機内誌を本棚の元の場所に戻そうとして
「大丈夫です。椅子に置いておいてもらえますか。あと、相談室にコーヒーをお持ちしますので、お茶碗もそのままで」
「あ、はい。了解です」
〝なんか……行き届いてるな……〟
個人事務所っぽいのにその辺りの行き届いた配慮が見えて、ホッとした。
そして、その女性に案内されるがまま、奥の待合室から、反対側の奥の相談室まで移動した。
0
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
ホントの気持ち
神娘
BL
父親から虐待を受けている夕紀 空、
そこに現れる大人たち、今まで誰にも「助けて」が言えなかった空は心を開くことができるのか、空の心の変化とともにお届けする恋愛ストーリー。
夕紀 空(ゆうき そら)
年齢:13歳(中2)
身長:154cm
好きな言葉:ありがとう
嫌いな言葉:お前なんて…いいのに
幼少期から父親から虐待を受けている。
神山 蒼介(かみやま そうすけ)
年齢:24歳
身長:176cm
職業:塾の講師(数学担当)
好きな言葉:努力は報われる
嫌いな言葉:諦め
城崎(きのさき)先生
年齢:25歳
身長:181cm
職業:中学の体育教師
名取 陽平(なとり ようへい)
年齢:26歳
身長:177cm
職業:医者
夕紀空の叔父
細谷 駿(ほそたに しゅん)
年齢:13歳(中2)
身長:162cm
空とは小学校からの友達
山名氏 颯(やまなし かける)
年齢:24歳
身長:178cm
職業:塾の講師 (国語担当)
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
花嫁と貧乏貴族
寿里~kotori ~
BL
没落貴族の次男ユーリ・ラン・ヤスミカは王室の血が流れる姫君との縁談がまとまる。
しかし、蓋をあけてみると花嫁になる姫は少年だった。
姫と偽った少年リンの境遇が哀れでユーリは嫁として形式上夫婦となるが……
おひとよしな貴族の次男坊と訳あり花嫁少年の結婚生活!
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~
天埜鳩愛
BL
爽やかスポーツマンα × 妄想巣作りのキュートΩ☆ お互いのフェロモンをくんかくんかして「甘い❤」ってとろんっとする、可愛い二人のもだきゅんラブコメ王道オメガバースです。
オメガ性を持つ大学生の青葉はアルバイト先のアイスクリームショップの向かいにあるコーヒーショップの店員、小野寺のことが気になっていた。
彼に週末のデートを誘われ浮かれていたが、発情期の予兆で休憩室で眠ってしまう。
目を覚ますと自分にかけられていた小野寺のパーカーから香る彼のフェロモンに我慢できなくなり、発情を促進させてしまった!
他の男に捕まりそうになった時小野寺が駆けつけ、彼の家の保護される。青葉はランドリーバスケットから誘われるように彼の衣服を拾い集めるが……。
ハッピーな気持ちになれる短編Ωバースです
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる