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Chapter02 - Side:Salt - A
27 > 病院にてー1(目覚め)
しおりを挟む目を開くと、見知らぬ天井が視界に広がっていた。
〝? どこだ、ここ……〟
ぼんやりとした視界には白い天井、四角く囲まれたライトグリーンの……カーテン?
メガネを掛けていないのか、よく見えない……
〝……ね、むい……〟
とろとろと眠りに誘われてまた、落ちた……
次に目覚めた時、さっきと同じ光景だったので、ようやく
〝ああ、病院か……〟
少し思い出した。
呼吸が楽だと思ったら、口元に違和感がある。どうやら酸素マスクがつけられているらしい。
ぼんやりと、モヤがかかった視界のまま天井を見て
〝今、何時……〟
体を動かそうとすると、グッと何かに腕を引かれた。
〝?〟
両腕に点滴が1本ずつ繋がれている。
〝……オレ、は……〟
まだ完全には覚醒していない頭で、昨日1日の出来事をゆっくり反芻するように、思い出そうとした。
6月23日(木)午前納期の案件が先週金曜日の17日からぶちこまれ、休日出勤はもちろんの事、月曜日~水曜日までほぼ会社に詰めて仕事をしていた。
月・火・水は帰宅して眠れないだろうとは思っていたが、水曜の終業時間になってもまだ終わらず、紗妃が心配で22日(水)の夜に一旦家に帰った。
真夜中に帰宅すると、また床に割れた食器が散乱していたが、遅くから掃除機を掛けると紗妃が暴れるので、照明をできるだけ落として、箒で静かに片付けた。まだ小さい破片がちらほら見えたのでそれを取り除くために暗い部屋の中、探し出したガムテープでペタペタした。
その後、洗面所で脱衣して軽くシャワーを浴び、寝室で着替えて、すぐまた職場に戻り、泊まりこんで仕事をしていた。
作業は難航したが、明け方4時を回る頃にようやく完成に近づき、ホッと一息ついて、仮眠。
出社時間に起き出し、23日(木)の朝、佐藤と自販機の前で久しぶりに会った。
久しぶりに会う既知の顔にホッとして少しだけ話しをした後、午後の会議に出て。
それが終わった3時ごろ、北川専務に呼び出されて紗妃宛ての封書を渡された。
早退けして帰ると4時になっていたが、外出していた紗妃が帰って来たのは6時前。
それから、風呂に湯を張りながら惣菜だらけの食事を食べて紗妃が風呂に入ってる間に封書を持ち出して渡し。
〝……目まぐるしい1日、だったな……〟
最後の方は思い出したくないが、とりあえず、今やることは────
〝電話……しないと……会社に……〟
我ながら社畜根性が沁みついててヤバイ、と思う。
だが、連絡しないで休んだ後、心配のあまり詮索されるより、こちらから先に連絡しておいて、その後の面倒を回避する方がよっぽど楽だ。
長年にわたって体得した処世術とも言えた。
〝佐藤にも……〟
連絡した方がいいかもしれない……いつも会社を休む場合は佐藤にLIMEするのが日課だったから……
〝だが、なんて言う?〟
あいつにオレの誤魔化しは効かない。
それはもうこの6年くらいで検証済みだ。
〝今、連絡すると面倒なことになりそうだな………〟
『大丈夫』も『無事だ』も、何が? と聞かれそうだし『体調が悪い』って言ってもオレが体調悪いくらいで休まないことを知ってるし……
そう考えると紗妃よりも女房らしい心配をしてくるヤツだよな、と少しおかしくなった。
〝とりあえず、一旦、会社に電話だけ入れよう〟
まだ昨夜のことは整理もついてないし、麻酔が効いてるのか痛みはないが、それほどの麻酔を打たれてるってことは、怪我自体はおそらく大丈夫という範囲ではないんだろう。
だから、ナースコールを押して、看護師さんを呼んだ。
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