婚約者が女神の泉に落ちてしまった話

婚約者が女神の泉に落ちてしまった話

「うわーっ！」

　泉の側で騒いでいるから落ちるんですよ。

　そう思いつつ視線を向ければ、綺麗な女性の顔が婚約者の落ちた辺りから浮かび上がってきました。

「貴女の落とした彼は、このハンサムボーイかしら？」

　綺麗な女性の顔のすぐ横から、婚約者の顔を1.3倍程度整えたイケメンが浮かび上がってきました。体格も立派です。

　とてもではありませんが、婚約者とは似ても似つきません。

　そう言って否定しますと、再び女性は問い掛けてきました。

「では、こちらの子犬系男子かしら？」

　またまた女性の顔の横から、婚約者を柔和に整えたような可愛い系の男の子が浮かび上がってきました。どう見ても少年です。

　とてもではありませんが、婚約者とは似ても似つきません。

　そう言って否定しますと、女性は大きく頷きました。

「貴女は正直者ですね。ですので、この二人を貴女に差し上げましょう」

「いえ、いらないです」

「あらあら、本当に欲が無い人の子ですね」

　そうしてようやく、泉に落ちた婚約者が引き上げられました。



　少し性格が丸くなって付き合いやすくなっていたのは、女神の贈り物だと思っておくことにします。