顔を合わせたことも無い政略結婚の旦那が、わざわざ見合い相手となって会いに来た件

顔を合わせたことも無い政略結婚の旦那が、わざわざ見合い相手となって会いに来た件

　結婚というものは、案外それほど日常に影響を及ぼさないものです。

　お前だけだ、って？　そうかも知れません。

　政略結婚の上、白い結婚で旦那とは別の住居で生活しています。

　顔を合わせたことなど一度もありません。結婚以前も以降も。

　まあ、結婚しているという肩書が欲しかっただけなのでしょう。わかります。

　私としても王宮での研究職を辞めたくなかったので、万々歳です。

　悠々自適の仕事の日々を送っている私でしたが、ある日、上司から言われました。

「お前に見合いの話が来てるぞ」

　いや、結婚してるんですけど、私。

　ほら指輪。それと教会の証書もあります。それに両家の当主のサイン。

「なんで証書なんか持ってんだお前……」

　証明書はいつでも提示できる方が強いので。

「とはいえ、形だけだろ。見合いしとけ」

　実家が何と言ってくるか……。

「縁を切ってやったぜ、って喜んでたじゃないか。先月」

　ちっ、バレてる。

「財務長官の倅だ。見合うだけ見合っとけ」

　はいはい。



　しかしまさか、この見合い相手が顔を合わせたことも無かった旦那だとは知りませんでした。

　力関係としてはあちらが上で、同居しようと泣きながら言われて断れるほどの発言力は私に無かったのです。

　上司め、おのれ……謀ったな。