本家の跡取り息子にプロポーズされる話

本家の跡取り息子にプロポーズされる話

「結婚して下さい」

　正直なところ、私はその言葉に困惑していた。

　なにしろこの子、まだ本家の跡取り息子である。

　詳しい事情はめんどいからしないが、東京に住んでいる私の家に住み込んで、小中高大の一貫校に通っているのだ。

　一貫校や本家の子というのは、まあ置いといて良い。

　問題なのは、まだこの子が十を数えたばかりの少年というところにある。

　正直、説得は難しい。

　かと言って、すげなく断るのも私の立場としては無しだ。

　だから必然、こういう返しをすることになる。

　――貴方が大人になって、まだ私のことを好きでいたらね。

　まさか、十年以上も恋心など続けてもいられまい。

　そう思っていた私の考えは、甘かった……。