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暁の話
誘い
しおりを挟む温かいカイロを手にしながら思い返していたら
1日の授業が終わってしまった
鞄を持って教室を後にし昇降口へ向かえば
幸也も帰ろうとしていた
「あ、暁、今帰るの?」
「そう、この時間から帰らないと遅くなる」
「そうなんだ、なら今日、家に泊まりに来ない?」
「……何?部屋自慢したいの?」
言いたくないのにまた悪態を吐いてしまう
「違うよ、遊びに来て欲しいだけ」
「ふぅん……別にいいけど」
内心、ドキドキが止まらなかった
幸也の一人暮らしの部屋に行ける
嬉しいのに、幸也は俺の事をなんとも思ってない
そう思うと冷静にもなれたが、悲しくもなった
幸也の部屋があるマンションに来て思う
「ここもお前の家の持ち物?」
「うん…此処からなら通って良いって言うから…」
「そうなのか」
そんな話をしながら部屋に向かい
「はい、どうぞ」
鍵を開けて貰い、中に通されれば
「お邪魔します」
そう言い入れば、1人で住むには広過ぎるリビング
部屋が2つ、片方だけしか使ってないと幸也は苦笑する
元々モデルルームだったらしく家具は備え付け
家電は全部幸也の為に新しくしたらしい
幸也は普通の人とは比べ物にならない裕福な家庭育ちだ、これくらい普通なんだろう
「まぁ、流石だよな、お前の両親」
「有り難いけどね、ソファー座ってて、お茶入れるから」
「あぁ」
L字のソファーの角に座り、部屋を眺めて
一人暮らしってこんな感じなんだ…
寂しくないのかな…?こんな広い部屋…
俺は…無理だな…寂し過ぎる…
「どうかした?体調悪い?」
「…っ、なんでもない、ぼーっとしてただけ」
「なら良かった、心配になった」
優しい…いつも…いつだって…
《特別な存在》でもないのに優しい…
それがまた痛かった
お茶を置いて、隣に幸也が座り
「暁、付き合おうか、僕達」
「はぁ?」
ーそして現在に至るー
★☆★
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