35 / 54
第5獣
怪獣5-1 捕らわれた博物館
しおりを挟む
キーボードを叩いていた手を止めて、鏑木は息を吐いた。大きく背伸びをして、机の上にある時計を見る。博物館の売店で、売っているその時計は、午後8時とディスプレイに表示されている。3時間近く。集中して作業をしていたことに軽く驚く。
(こんな時間まで集中力が続いたの、これが初めてだな。2時間くらいで集中力が無くなるのに……)
喉の渇きを覚え、アイスコーヒーでも飲もうと思うと同時に、空腹を感じる。
何か食べる物は無いかと近くを探すが、何もなかった。大学構内にある、セイコーマートは24時間営業だ。気分転換も兼ねて、何か買いに行くことにした。
文学院の研究棟を出て歩くと、今やっている資料制作を忘れ、今日博物館を案内した、蘭と秀人の事を思い出す。
(話通りの二人だったな……、まるっきり対照的な二人が息ぴったりに行動していて、見ていて、何かのキャラクターみたいで、もし、今度会ったら裏にある収蔵室も見せてあげよう……、蘭ちゃんと秀人君、今日以上に面白いだろうな……)
二人のことを考えながら歩いていると、生暖かい風が肌を撫でた。
(なんだろう……、この感じ……?)
夏の夜に吹く風、本来なら心地よいのだが、どこか不気味だった。まるで生物の息のように感じられる、不気味さに足を止めて、息を飲む。辺りを見渡すも何も無い。
(思い違いかな……?)
普段から、資料作成や研究発表ばかりにかまけていて、プライベートの時間を取るのもままならないから、変な妄想をしてしまうのだろう。そう思って、また歩みを進める。
(だけど……、何か変……)
普段、通っている道なのに、今晩に限って遠く感じられた。夜空には、雲が出ていて月を覆い隠して、夜の暗さが余計に強く感じられた。闇の力に惑わされているのだろうか。
足取りは早く、周囲を注意深く見渡すように歩く。早くセイコーマートに行きたかった。行けば店員もいるし、万が一不安なら事情を話して、誰か助けを呼べばいい。まだ守衛は残っている。
(きっと、大丈夫よね……)
自分の言い聞かせるようにして、セイコーマートの明かりが見えてきた。後少しで安全な場所に行ける。そう思って急いで店に入ろうとすると、ふわりと空中に浮かぶものが見えた。
「あれって……」
歩みが止まり思わず言葉が漏れる。
数メートル先に見えたのは、赤い火の玉だ。
暗闇の中に浮かび上がり、北大博物館の周りを漂っていた。まるで、入口でも探すように。
「信じられない……」
赤い火の玉は窓の一つにあった、わずかな隙間を発見し、すぅーと伸びて薄い板状になって、隙間から入って行った。
「待って!」
思わず叫んで、北大博物館に向かっていた。怖くないといえば嘘になる。でも、好奇心が勝った。
入り口前に行くと、一瞬開いているのだろうか? と思う。
まさかという持ちで、入り口のドアに手をかけると、ギィィと軋みながら空いた。本来なら、閉館時間で鍵がかかっていうのに、まるで、最初から鍵がかかっていなかったようだ。何かによって導かれている気がした。
(どうして……? 一体何なんだろう……)
意を決し、博物館の中に入る。もし怖い思いをしたら、守衛室に駆け込めばいい。
だが、その守衛室は何も電気がついておらず、暗闇に包まれていた。
「すいません。どなたか……」
不審に思い、守衛室を覗いて驚い 中に居るはずの夜間警備員が全員、倒れているのだ。
「どうしました!? 大丈夫ですか!? しっかりしてください!」
必死に呼びかけるも、何も反応がない。
体をよく見ると、小さな膜の様な物で体を覆われていた。
「何なのこれ……?」
何が起こっているのか分からず、目を疑った。もしかしたらパニックになっていて、何か見間違えているのかもしれない。そう思って、近くに転がっていた懐中電灯の明かりをつけて、確かめるも、やはり膜のようなもので、覆われている。
(こんな時間まで集中力が続いたの、これが初めてだな。2時間くらいで集中力が無くなるのに……)
喉の渇きを覚え、アイスコーヒーでも飲もうと思うと同時に、空腹を感じる。
何か食べる物は無いかと近くを探すが、何もなかった。大学構内にある、セイコーマートは24時間営業だ。気分転換も兼ねて、何か買いに行くことにした。
文学院の研究棟を出て歩くと、今やっている資料制作を忘れ、今日博物館を案内した、蘭と秀人の事を思い出す。
(話通りの二人だったな……、まるっきり対照的な二人が息ぴったりに行動していて、見ていて、何かのキャラクターみたいで、もし、今度会ったら裏にある収蔵室も見せてあげよう……、蘭ちゃんと秀人君、今日以上に面白いだろうな……)
二人のことを考えながら歩いていると、生暖かい風が肌を撫でた。
(なんだろう……、この感じ……?)
夏の夜に吹く風、本来なら心地よいのだが、どこか不気味だった。まるで生物の息のように感じられる、不気味さに足を止めて、息を飲む。辺りを見渡すも何も無い。
(思い違いかな……?)
普段から、資料作成や研究発表ばかりにかまけていて、プライベートの時間を取るのもままならないから、変な妄想をしてしまうのだろう。そう思って、また歩みを進める。
(だけど……、何か変……)
普段、通っている道なのに、今晩に限って遠く感じられた。夜空には、雲が出ていて月を覆い隠して、夜の暗さが余計に強く感じられた。闇の力に惑わされているのだろうか。
足取りは早く、周囲を注意深く見渡すように歩く。早くセイコーマートに行きたかった。行けば店員もいるし、万が一不安なら事情を話して、誰か助けを呼べばいい。まだ守衛は残っている。
(きっと、大丈夫よね……)
自分の言い聞かせるようにして、セイコーマートの明かりが見えてきた。後少しで安全な場所に行ける。そう思って急いで店に入ろうとすると、ふわりと空中に浮かぶものが見えた。
「あれって……」
歩みが止まり思わず言葉が漏れる。
数メートル先に見えたのは、赤い火の玉だ。
暗闇の中に浮かび上がり、北大博物館の周りを漂っていた。まるで、入口でも探すように。
「信じられない……」
赤い火の玉は窓の一つにあった、わずかな隙間を発見し、すぅーと伸びて薄い板状になって、隙間から入って行った。
「待って!」
思わず叫んで、北大博物館に向かっていた。怖くないといえば嘘になる。でも、好奇心が勝った。
入り口前に行くと、一瞬開いているのだろうか? と思う。
まさかという持ちで、入り口のドアに手をかけると、ギィィと軋みながら空いた。本来なら、閉館時間で鍵がかかっていうのに、まるで、最初から鍵がかかっていなかったようだ。何かによって導かれている気がした。
(どうして……? 一体何なんだろう……)
意を決し、博物館の中に入る。もし怖い思いをしたら、守衛室に駆け込めばいい。
だが、その守衛室は何も電気がついておらず、暗闇に包まれていた。
「すいません。どなたか……」
不審に思い、守衛室を覗いて驚い 中に居るはずの夜間警備員が全員、倒れているのだ。
「どうしました!? 大丈夫ですか!? しっかりしてください!」
必死に呼びかけるも、何も反応がない。
体をよく見ると、小さな膜の様な物で体を覆われていた。
「何なのこれ……?」
何が起こっているのか分からず、目を疑った。もしかしたらパニックになっていて、何か見間違えているのかもしれない。そう思って、近くに転がっていた懐中電灯の明かりをつけて、確かめるも、やはり膜のようなもので、覆われている。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
琥珀と二人の怪獣王 二大怪獣北海道の激闘
なべのすけ
SF
海底の奥深くに眠っている、巨大怪獣が目覚め、中国海軍の原子力潜水艦を襲撃する大事件が勃発する!
自衛隊が潜水艦を捜索に行くと、巨大怪獣が現れ攻撃を受けて全滅する大事件が起こった!そんな最中に、好みも性格も全く対照的な幼馴染、宝田秀人と五島蘭の二人は学校にあった琥珀を調べていると、光出し、琥珀の中に封印されていた、もう一体の巨大怪獣に変身してしまう。自分達が人間であることを、理解してもらおうとするが、自衛隊から攻撃を受け、更に他の怪獣からも攻撃を受けてしまい、なし崩し的に戦う事になってしまう!
襲い掛かる怪獣の魔の手に、祖国を守ろうとする自衛隊の戦力、三つ巴の戦いが起こる中、蘭と秀人の二人は平和な生活を取り戻し、人間の姿に戻る事が出来るのか?
(注意)
この作品は2021年2月から同年3月31日まで連載した、「琥珀色の怪獣王」のリブートとなっております。
「琥珀色の怪獣王」はリブート版公開に伴い公開を停止しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅
シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。
探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。
その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。
エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
--
プロモーション用の動画を作成しました。
オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ

びるどあっぷ ふり〜と!
高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。
どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。
ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね?
※すでになろうで完結済みの小説です。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる