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第2獣
怪獣2-5
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「ありがとうござ……」
「ありがとうございます! 鏑木さん!」
秀人がお礼を言う前に、蘭が病室全体に響き渡る大声でお礼を言った。
蘭の目はキラキラと輝いていて、何のアイスを食べることしか考えていないように、感じられた。
『秀人……』
呆れたように、ゴリアスが呟く。
「良いんだよ……。もう慣れたから」
秀人とゴリアスの言葉は、今の蘭の頭の中には聞こえていなかった。
「それよりゴリアス、あの怪獣の気配は感じられないのかい?」
秀人も少し落ち着いてきたから、ゴリアスに先程戦った怪獣の気配について尋ねた。
秀人はあの怪獣に、異様さを感じていた。ゴリアスや潜水艦という敵が現れたのに、何一つ関せず、無視するような感じで避けて行った、あの怪獣。どうして街だけを破壊して、戦おうともせず去って行ったのか? 秀人は知りたいことが山ほどあった。
『すまないが、全く感じない……。逃げたままだ……』
全く分からないことを、ゴリアスは秀人に謝る。
「大丈夫だよ。でも、いつでも変身できる心構えはしているからね」
秀人はゴリアスを責めず、いつでも変身出来るのを伝えた。
秀人の言葉を聞いて、ゴリアスは秀人が成長している事をしみじみと感じた。
「何やっているんだ秀人! 早く行くぞ!」
廊下から蘭の言葉が聞こえてきて、秀人は慌てて病室から飛び出した。
一口食べる毎にアイスの甘みが、口の中いっぱいに広がって消えて行く。
「どう? 美味しいでしょう?」
笑顔で聞いてくる。
「はい。とっても」
鏑木は秀人と同じように、マスクメロンのフレーバーをカップで注文していた。
「うーん。本当に旨いな、やっぱりサーティワンもいいな!」
蘭はワッフルコーンでストロベリーチーズケーキとロッキーロードをレギュラーダブルで頼み、一口でバクりとフレーバーを食べて、ワッフルコーンを金属でも噛みくように、バリバリと食べていた。
あまりにもワイルドすぎる食べ方に、思わず笑みをこぼす。それはまるで、お腹を空かせた、やんちゃ坊主が夕飯を元気よく食べている時に、その母親が見せる、笑みであった。
「蘭、少しは大人しく食べたらどう……」
見かねた秀人が注意する。
「大人しくって、俺は昔からこんな感じだろ」
確かに蘭は色々と豪胆だが、少しくらい時や場所をわきまえて欲しいと、秀人は常々思っていた。秀人や家族の前ならいいが、初めて会う人の前で豪胆な振る舞いをされると、一緒に居る秀人が恥ずかしい思いをする。今回がそれだ。
「良いのよ、秀人君。蘭ちゃんはいつも元気なのでしょう。元気な蘭ちゃんの姿を見ていると、こっちまで元気になってくるな」
「そうそう。せっかくそう言ってくれているんだからさ!」
そうは言っても、一緒に居る秀人としては良い気持ちがしない。
しかし今は、蘭の豪胆な態度に誰も関心を払っていなかった。
アメニティホールの利用者は、全員テレビに集中していて、蘭と秀人達に全く関心をもっていなかった。
テレビでは、怪獣に破壊された根室市と網走市の惨状、そして全滅した航空自衛隊を伝えていた。
報道ヘリコプターのカメラ映像からは、二つの市は跡形もなく破壊された様子を流していた。建物はすべて破壊され、瓦礫しかなくなった様子を伝えている。
市外から派遣された救助隊が現地入りしたものの、惨状にどこから救助活動をしていいのか。手が付けられない様子であり、網走市では生存者がいたが、根室市では市民全員が亡くなり、生存者はゼロだという。
ただ網走市も避難所となる学校、治療するための病院もほとんどが破壊され、避難も治療もままならないようだ。
どれも絶望的なニュースばかりなので、利用客の何人かはテレビを見るのを止めて、雑談に興じている。
「ありがとうございます! 鏑木さん!」
秀人がお礼を言う前に、蘭が病室全体に響き渡る大声でお礼を言った。
蘭の目はキラキラと輝いていて、何のアイスを食べることしか考えていないように、感じられた。
『秀人……』
呆れたように、ゴリアスが呟く。
「良いんだよ……。もう慣れたから」
秀人とゴリアスの言葉は、今の蘭の頭の中には聞こえていなかった。
「それよりゴリアス、あの怪獣の気配は感じられないのかい?」
秀人も少し落ち着いてきたから、ゴリアスに先程戦った怪獣の気配について尋ねた。
秀人はあの怪獣に、異様さを感じていた。ゴリアスや潜水艦という敵が現れたのに、何一つ関せず、無視するような感じで避けて行った、あの怪獣。どうして街だけを破壊して、戦おうともせず去って行ったのか? 秀人は知りたいことが山ほどあった。
『すまないが、全く感じない……。逃げたままだ……』
全く分からないことを、ゴリアスは秀人に謝る。
「大丈夫だよ。でも、いつでも変身できる心構えはしているからね」
秀人はゴリアスを責めず、いつでも変身出来るのを伝えた。
秀人の言葉を聞いて、ゴリアスは秀人が成長している事をしみじみと感じた。
「何やっているんだ秀人! 早く行くぞ!」
廊下から蘭の言葉が聞こえてきて、秀人は慌てて病室から飛び出した。
一口食べる毎にアイスの甘みが、口の中いっぱいに広がって消えて行く。
「どう? 美味しいでしょう?」
笑顔で聞いてくる。
「はい。とっても」
鏑木は秀人と同じように、マスクメロンのフレーバーをカップで注文していた。
「うーん。本当に旨いな、やっぱりサーティワンもいいな!」
蘭はワッフルコーンでストロベリーチーズケーキとロッキーロードをレギュラーダブルで頼み、一口でバクりとフレーバーを食べて、ワッフルコーンを金属でも噛みくように、バリバリと食べていた。
あまりにもワイルドすぎる食べ方に、思わず笑みをこぼす。それはまるで、お腹を空かせた、やんちゃ坊主が夕飯を元気よく食べている時に、その母親が見せる、笑みであった。
「蘭、少しは大人しく食べたらどう……」
見かねた秀人が注意する。
「大人しくって、俺は昔からこんな感じだろ」
確かに蘭は色々と豪胆だが、少しくらい時や場所をわきまえて欲しいと、秀人は常々思っていた。秀人や家族の前ならいいが、初めて会う人の前で豪胆な振る舞いをされると、一緒に居る秀人が恥ずかしい思いをする。今回がそれだ。
「良いのよ、秀人君。蘭ちゃんはいつも元気なのでしょう。元気な蘭ちゃんの姿を見ていると、こっちまで元気になってくるな」
「そうそう。せっかくそう言ってくれているんだからさ!」
そうは言っても、一緒に居る秀人としては良い気持ちがしない。
しかし今は、蘭の豪胆な態度に誰も関心を払っていなかった。
アメニティホールの利用者は、全員テレビに集中していて、蘭と秀人達に全く関心をもっていなかった。
テレビでは、怪獣に破壊された根室市と網走市の惨状、そして全滅した航空自衛隊を伝えていた。
報道ヘリコプターのカメラ映像からは、二つの市は跡形もなく破壊された様子を流していた。建物はすべて破壊され、瓦礫しかなくなった様子を伝えている。
市外から派遣された救助隊が現地入りしたものの、惨状にどこから救助活動をしていいのか。手が付けられない様子であり、網走市では生存者がいたが、根室市では市民全員が亡くなり、生存者はゼロだという。
ただ網走市も避難所となる学校、治療するための病院もほとんどが破壊され、避難も治療もままならないようだ。
どれも絶望的なニュースばかりなので、利用客の何人かはテレビを見るのを止めて、雑談に興じている。
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