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第1獣

怪獣1-12

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 蘭と秀人の体は光に包まれると、渦のようになって流れて行く。その中で二人の体は一つになる。初めて変身した時は、知らないうちにゴリアスの体になってその場に立っていて、いつ変わったのか全く分からなかったが、今回は体の部分がゆっくりと、変わって行くのを感じている。
(凄い……、見る見るうちに変わっているんだ……)
 光の渦が流れる空間の中、二人の腕と足は太く大きく、怪獣のごつごつした皮膚へと変わって行き、胴体が鎧のような分厚くなって、ゴリアスの体に置き換わる。
(全部が変わっている……、ゴリアスと一つになるんだ……)
 渦の中で、ゴリアスの頭の中に蘭と秀人の意識が入り込んでいく。
(二人共準備はいいか……?)
 ゴリアスの問いかけに二人は頷いた。
(いいよゴリアス、いつでもいいさ!)
(僕もだよ、さぁ怪獣を止めよう!)
 ゴリアスは、二人の意識を感じて一つになって、目を開けた。
 光の塊が、網走湖の真ん中あたりに現れ、消えて行った。完全に光が無くなると、そこには、ゴリアスに変身した蘭と秀人が立っていた。
「久々だな……! あいつを倒すぞ!」
「蘭……。それよりもこれを見てよ……」
 秀人の言葉に蘭は絶句する。そこには地面を巨大な爪でえぐったかのような跡が、線を引くようにいくつも作られている。そして煙が立ち上り、破壊された網走市が広がっていた。
「なんだよ……。これ……」
「あいつがやったんだ」
『今、あいつの気配を探す。少し待っていろ……』
 ゴリアスの言葉を聞きながら、ゆっくりと灰となった網走市を見渡す。
 観光スポットだった北海道立オホーツク公園は、地面がへこんだ巨大なクレーターと化しており、北海道立北方民族博物館も穴の中に消えていた。
「博物館、無くなっている……!」
「僕らが修学旅行で行ったところだよ……、怪獣に破壊されたんだ……」
「こんなことになるなら、もっと真剣に見学すればよかったな……」
 蘭の声には後悔の念が籠っていた、勉強嫌いとは言え文化財や歴史が無くなるのは、思うところがあるのだろう。
(父さん、悲しいだろうな……)
 学者をしている、父親の顔が蘭の頭の中をよぎった。
「ここもなんだ……」
 秀人の声に気づくと、破壊されてしまった網走監獄を見ていた。
 歴史ある網走監獄は瓦礫の山と化しており、ここに監獄の歴史があったことなんて、誰にも分からなくなっている。
「よくもこんなことを……」
「北海道開拓と受刑者を絡めたのに……、それも全部消えてしまった……」
 秀人は沈痛な面持ちで、呟く。
 それだけではなく、網走市に暮らしていた人々の家、学びの場であった学校、生活の場だった商業施設も完全に破壊され、瓦礫の山と化していた。所々では火災も起こっていたが、消防車も立ち向かう人の姿もなく、炎の燃える音しか聞こえてこない。
「ゴリアス! どうなんだ! あいつはどこに居やがる! 俺があいつをぶち殺してやる……」
 蘭の声には怒りが籠っていた。それまで平穏に暮らしていた人々の暮らしを一変させ、破壊と恐怖のどん底に落とした存在が憎い。その思いが秀人の頭にも伝わってきた。
「蘭、落ち着いてよ……。相手を見極めてね……」
「そんなこと分かってる! でも、あの怪獣が憎いんだよ!」
 蘭が感じている怒りは、秀人にも同様に湧き上がっている。
 お互いに怪獣が憎いのだ。平和な暮らしを壊し、恐怖と破壊の底に落とした怪獣が。
『駄目だ……。あいつの気配を全く感じない……』
「気配を感じていないって、どうしたんだ? ゴリアス!」
 ゴリアスの言葉に、蘭が聞き返す。
『全く気配が感じられないんだ……。どこに行ったのかさえも分からない……』
「そんな……。消えたのか?」
「ゴリアス! 風の流れとは分からないかな?」
「風? 秀人、それがどうしたんだ?」
「ふっと思ったんだ、もし気配を感じられないのなら、風か何かであいつの痕跡を掴めることが出来ないかなって……」
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