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第1獣
怪獣1-1 それぞれの償い
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太陽の光が地上を照らし、夏特有の暑苦しい空気を地上に立ち込めさせる。サウナのような外気は、瓦礫と化した住宅街で作業をしているボランティアや作業員達の作業服やTシャツをたちまち汗ばませ、ゴーグルや防具メガネも白く曇っていた。
「ふう……、今日も暑いな……」
「もう少しで休憩だ、あとちょっと頑張ろう!」
そう言いながら、スコップやつるはしを振るい、瓦礫の破片や砂埃が舞う中を、瓦礫を猫車と呼ばれる一輪車で撤去したり、細かくした瓦礫を布袋に入れて、クレーンでトラックに運んだりと、一心不乱に働いている。
「蘭ちゃん、転ばないでよ!」
「はーい!」
その中で黒く日焼けした姿に、ゴーグル、防塵マスクをつけた少女が元気よく返事をする。
筋骨隆々とした、鋼の鎧のような上半身と漆黒の黒髪と太い二の腕、陸上選手顔負けのどんな距離でも走れそうな下半身をして、どんなスポーツもできて男顔負けの活躍をしてきたからか、男言葉で話す豪快な性格になった。
「気を付けて運びなよ、怪我したら大変だからな!」
少女とボランティアたちは威勢のいい掛け声と共に、瓦礫の詰まった布袋を持ち上げ、トラックの荷台に乗せる。砂ぼこりで曇ったゴーグルを皮手袋でぬぐい、彼らのうちの一人が、五島蘭と宝田英人に声をかける。
「ご苦労だったな二人共、もう休憩していな。ずいぶん疲れただろう」
「はい! ありがとうございます!」
「わかりました……」
リーダーの声が、疲弊しすぎている少年、宝田秀人を現実に引き戻した。
蘭の幼馴染、宝田秀人。黒縁の眼鏡が似合う中性的な少年で、学校の成績は体育以外良い。体を動かして何かをするのは、からきしだ。
反対に蘭は体育の成績は良いが、それ以外はてんで駄目。対照的だ。
秀人は小さく返事をし、今にも倒れそうな足取りで蘭と二人で、休憩場所へ向かった。
(本当に二人は偉いな……、まだ高校生で友人とも遊んでいなくて、学校が終わってから遅くまで、ボランティアに打ち込んでくれる。親御さんたちも二人を応援していて、家族中がいいことも伝わって、本当に今どきしい人達だ……)
ボランティアリーダーは蘭と秀人、二人をとても気にかけていた。
蘭と秀人は昼間の学校が終わってから、他のボランティアに交じって、誰よりも多くの仕事をしている。働き具合は、蘭の方は体を鍛えているからか、どんな作業でも軽々とこなすも、秀人の方は体が小さい上に、運動や体を動かすことがてんで駄目だ。しかし何事にも真剣に向き合っているのが伝わっていた。二人共どんな作業でも二つ返事で取り掛かり、誰よりも丁寧に終わらせるので、評判は物凄く高い。
蘭は白い天幕のボランティア休憩場所へ行くと、タオルで汗をぬぐい、ペットボトルに入った冷えたスポーツドリンクを一口飲んだ。口の中にスポーツドリンク独特の甘みが広がった。その時小さな風が吹いて、汗に濡れた体を冷やす。蘭はこの瞬間がたまらなく好きだ。自分がどれだけ体を動かして、自分の体を喜ばせたのかが分かる。
秀人はゴーグルと防塵マスク、黒縁眼鏡を外して、大きく息を吐く。
「新鮮な空気はうまいな……」
そう呟く彼に蘭が冷えたスポーツドリンクを渡すと、秀人はむさぼるように飲んだ。
ひどく乾いた喉の中に潤いと、ほのかに甘い味が戻っていくと、秀人は完全に生気を取り戻した。
「あぁ。生き返った……」
「秀人、大丈夫か? 死んでいるんじゃないかと思って、冷や冷やしていたぞ!」
「蘭が瓦礫撤去のボランティアに連れ出すからだよ、このボランティアきつ過ぎる!」
「何言っているんだ! これが俺らなりの贖罪だろ!」
蘭の言っていることは最もだった、この瓦礫は蘭と秀人、そしてもう一匹によって作らされたと言っても過言ではない。
「ふう……、今日も暑いな……」
「もう少しで休憩だ、あとちょっと頑張ろう!」
そう言いながら、スコップやつるはしを振るい、瓦礫の破片や砂埃が舞う中を、瓦礫を猫車と呼ばれる一輪車で撤去したり、細かくした瓦礫を布袋に入れて、クレーンでトラックに運んだりと、一心不乱に働いている。
「蘭ちゃん、転ばないでよ!」
「はーい!」
その中で黒く日焼けした姿に、ゴーグル、防塵マスクをつけた少女が元気よく返事をする。
筋骨隆々とした、鋼の鎧のような上半身と漆黒の黒髪と太い二の腕、陸上選手顔負けのどんな距離でも走れそうな下半身をして、どんなスポーツもできて男顔負けの活躍をしてきたからか、男言葉で話す豪快な性格になった。
「気を付けて運びなよ、怪我したら大変だからな!」
少女とボランティアたちは威勢のいい掛け声と共に、瓦礫の詰まった布袋を持ち上げ、トラックの荷台に乗せる。砂ぼこりで曇ったゴーグルを皮手袋でぬぐい、彼らのうちの一人が、五島蘭と宝田英人に声をかける。
「ご苦労だったな二人共、もう休憩していな。ずいぶん疲れただろう」
「はい! ありがとうございます!」
「わかりました……」
リーダーの声が、疲弊しすぎている少年、宝田秀人を現実に引き戻した。
蘭の幼馴染、宝田秀人。黒縁の眼鏡が似合う中性的な少年で、学校の成績は体育以外良い。体を動かして何かをするのは、からきしだ。
反対に蘭は体育の成績は良いが、それ以外はてんで駄目。対照的だ。
秀人は小さく返事をし、今にも倒れそうな足取りで蘭と二人で、休憩場所へ向かった。
(本当に二人は偉いな……、まだ高校生で友人とも遊んでいなくて、学校が終わってから遅くまで、ボランティアに打ち込んでくれる。親御さんたちも二人を応援していて、家族中がいいことも伝わって、本当に今どきしい人達だ……)
ボランティアリーダーは蘭と秀人、二人をとても気にかけていた。
蘭と秀人は昼間の学校が終わってから、他のボランティアに交じって、誰よりも多くの仕事をしている。働き具合は、蘭の方は体を鍛えているからか、どんな作業でも軽々とこなすも、秀人の方は体が小さい上に、運動や体を動かすことがてんで駄目だ。しかし何事にも真剣に向き合っているのが伝わっていた。二人共どんな作業でも二つ返事で取り掛かり、誰よりも丁寧に終わらせるので、評判は物凄く高い。
蘭は白い天幕のボランティア休憩場所へ行くと、タオルで汗をぬぐい、ペットボトルに入った冷えたスポーツドリンクを一口飲んだ。口の中にスポーツドリンク独特の甘みが広がった。その時小さな風が吹いて、汗に濡れた体を冷やす。蘭はこの瞬間がたまらなく好きだ。自分がどれだけ体を動かして、自分の体を喜ばせたのかが分かる。
秀人はゴーグルと防塵マスク、黒縁眼鏡を外して、大きく息を吐く。
「新鮮な空気はうまいな……」
そう呟く彼に蘭が冷えたスポーツドリンクを渡すと、秀人はむさぼるように飲んだ。
ひどく乾いた喉の中に潤いと、ほのかに甘い味が戻っていくと、秀人は完全に生気を取り戻した。
「あぁ。生き返った……」
「秀人、大丈夫か? 死んでいるんじゃないかと思って、冷や冷やしていたぞ!」
「蘭が瓦礫撤去のボランティアに連れ出すからだよ、このボランティアきつ過ぎる!」
「何言っているんだ! これが俺らなりの贖罪だろ!」
蘭の言っていることは最もだった、この瓦礫は蘭と秀人、そしてもう一匹によって作らされたと言っても過言ではない。
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