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身体が揺さぶられる感覚がする。
微かに聞こえた声色が自分の片割れだと気付いた。

「侑?起きて…ねぇ」

「んん…」

ふふ、かわいい


柔らかく発せられた、心地いい声が耳に届く。とろとろとした甘い何かが溶けるような感覚に もうちょっと 、そう無意識に自分の口から漏れれば、ふふっと笑った声がしたのと同時に、優しく頭を撫でてくれる。



………はっ!!


「ゆ、悠??!?ごめん、寝てた…」

「大丈夫だよ、おはよう侑」


そう言いながら、にこにこと微笑んでくれている。悠は優しい。

つい先程まで膨大な量の前世を思い出していた僕は泣きながら寝てしまったみたいだった。


「あれ、今何時…?」


「もうすぐお昼だよ」


「え」


訂正。つい先程まで、では無く昨日の夜だったみたいだ。そっか…。え、寝坊した?


「大丈夫だよ、疲れてるみたいだから寝かせておいてあげようって母さんと話してたんだ」


「あぁ…うん。ありがとう」


母さんも悠も、優しいな。
そっか、そっか…、そっか…僕に、家族がいるんだ。
暖かい…。母さんも父さんもいて、双子の弟までいるなんて、前世じゃ考えられなかった。

あぁ、どうしよう。嬉しくて、でも、寂しくて視界がぼやけてきた。
                            
「うっ…ふ…っ…」

「ど、どうしたの?侑?!あぁ、目を擦らないで…赤くなっちゃうよ…」


いきなり泣き始めた兄を世話する弟とは何事だと思われてしまう。ましてやもう、高校生になるのに。


「ごめっ…」


目が痛くならないように服の袖口で、涙を拭ってくれて、落ち着くまでそっと寄り添ってくれた。


「大丈夫、怖い夢でも見たの?」

「ぅん……そんなところかも」


怖い夢を見て泣くだなんて、ものすごく恥ずかしいけれど、前世で自分は孤児だったから家族がいて嬉しくてとは言えないから。

「あのさ、侑」

「ん、なに…どうしたの」

真剣な表情で声色で…。

「侑。俺はね、侑が大好きだよ。だから、怖いことがあったり、辛いことがあったら1番に頼って欲しいな。」

「だから、家族なんだし、双子なんだからさ、俺になんでも言ってね」

優しくて、優しくて優しい家族で、双子で、弟の悠は、どうしてこんなに眩しいんだろうか。かっこいい。

「うん、ありがとう」

心が優しさに触れて軽くなっていく感覚がじわじわと広がって、悠に思わず抱きついた。

「悠、あのね、僕も好きだよ、悠のことも家族のことも…だからありがとう」

「ふふ、いいえ!侑、お昼食べに行こう。母さんがパスタ作ってくれてるからさ」

そう言って手を引いてくれた悠に着いて行き、母さんと悠と3人で、パスタを食べた。

前世の僕だったら考えられないけれど、今僕は家族とご飯を食べてる。こんなに嬉しいことはない。


…そういえば、神様が覚えていたら会いに来てって言ってたけど…。

どうすれば会いに行けるのかな。



おまけ

「母さんおはよう」

「侑、おはよう。よく眠れた?」

「うん!」

にこやかな顔でこちらを見た、両手にパスタの乗った皿を運ぶ母…。
母は、逞しく勇ましい人だ。

思えば父と悠はイケメンで、母は美人だが、自分は大した容姿じゃない。
神様、そこはイケメンにしとくべきじゃないかな…なんて、少しだけ悪態をつく。

3人で他愛もない話をしながらふと思い、思わず言ってしまった。

「…今更すぎるけど、僕も父さんや悠みたいなイケメンだったら良かったのに」

「侑?!どうしたの急に…侑は母さんに似て美人だよ」

美人じゃないでしょ、どう見ても。僕に美形も美人という言葉も似合わないんだから、そんなお世辞いいのに。

「可愛い顔してるから十分でしょう?世の中イケメンばっかりじゃ女の子も大変だから、少しくらい可愛い顔の男子がいたっていいのよ~」

え、母さん。それ、結構悪口だよね?!!!!!母さん!!!(泣)


「パスタオイシイです…」

「そう?良かった」

悲しくなったから、心で泣きながらパスタを食べ終えた。









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