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77話 サン・フォックの過去
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「サン..........」
エルダード・ワーフ王は、去っていくサン・フォックの背中を見つめながら呟いた。
そして、深く椅子に腰掛けたワーフ王にラクレスが少し躊躇いながらも尋ねた。
「何があったんですか?」
聞きづらい話題だと感じつつも、前に進むためには避けられないとラクレスは思い、質問を投げかけた。
しばしの沈黙の後、ワーフ王は口を開いた。
「...............分かった。そなた達には話すとしよう。彼の、いや彼らの過去について。」
王の言葉に促され、ラクレスたちは椅子に腰掛け、ワーフ王の話に耳を傾けた。
「あれは.....まだサンが小さかった頃だ。サンと私は学び舎の同級生でな、いつも遊んでいたんだ。私は王家の人間だったのもあって、中々絡んでくれる同級生はいなかった。しかし、サンは違った。彼だけは身分関係なく接してくれたんだ。そして、いつの頃からか私とサンは親友になっていた。お互いの悩みを打ち明け、弱い部分を見せあえる仲にまでなっていた。」
「この話のどこにサンさんが怒る部分があるのよ?」
リーネがぽつりと呟いた。
すると、
「いや、この後だ。サンの家は代々刀鍛冶をやっている家でな。当時から腕前はドワーフ1とまで言われていた。しかし、事件は起きた。あれはもう私たちがある程度大きくなっていた頃だ。国の宝12神竜剣の1つでもある『アジ・ダハーカ』が盗まれたんだ。国はすぐに捜索し、犯人を突き止めようとした。」
「まさか?」
「あぁ、フォック家が犯人に仕立て上げられた。」
「仕立て上げられた?」
「あぁ、国は何の取り調べもせずにフォック家を犯人にしたんだ。」
「そんな...........そのあとはどうなったんですか?」
「それなんだが...........」
エルダード・ワーフ王は少し口を詰まらせた。そして、次第に顔色も悪くなっていった。
「言いにくかったら言わなくても........」
ラクレスは気を遣う様に言った。
しかし、
「いや、大丈夫だ........そして、犯人に仕立て上げられたサンの父親、母親が公開処刑されたんだ........そして、その事件がきっかけで妻までも...........」
その言葉に部屋の空気が一瞬にして重くなった。
「そして、サンとまだ幼かった息子のムーンは国外に追放されたんだ...........」
「なぜ、奥さんは亡くなったんですか?」
ラクレスは戸惑いながらも、声を震わせて聞いた。
「それについてはだな...............いわゆる、欲って奴だよ。」
「欲?」
「あぁ、サンの妻スータ・フォックは国一番の美女でな........元々死刑だったサンとムーンを生きらせる代わりに当時の権力者たちに使い果たされたんだ。それで、精神が死んでしまってそのまま...........」
「........そんな......身代わりだなんて........」リーネは小さく呟いた。
「その後、真の犯人が見つかった。なんとそれは当時の大臣だったのだ。その大臣の父親も刀鍛冶をしていてな.....どんどん地位と名声を上げていくフォック家に対して嫉妬と恨みを抱いていた大臣が、計画的に剣を盗み、自分の罪をフォック家に擦り付けたんだ。」
「だからって、そんなこと...........」
「その大臣は当時の王、つまり私の父が全幅の信頼をおいていた人だったんだ........だから父もその大臣に事件の処理を任せてしまったんだ..........」
「...............」
三人の口数は次第に減っていった。
「その事件の全容が明らかになり、父が責任を取って退任し私が王になった。私はすぐにその大臣を粛正し改革した。そして、幾度かの話し合いの末にサンは戻ってきた、大きくなったムーンと共にな...........だから、サンの言っていること、思っていることも理解できる........すべては我らが王家の責任だ...........私がいくら罪の償いをしたところで、限界はある。だから、そなたたちにお願いをする。特にラクレス、君には特別な何かを感じる。君ならどうにかしてくれると..........だからお願いだ。サンを救ってくれ。スータの死を無駄にはしないでくれっ。」
ワーフ王の切実な願い。だが、ラクレスはすぐに答えることができなかった。
「...........あったばかりの俺たちが、そんな大役を果たせるのでしょうか?」
「そなたたちだからお願いしているんだ。サンがあんなに笑ったところを、声を荒げたところを久しぶりに見た。だから、お願いだ。どうか、彼を救ってくれ。これが、私にできる償いだ。」
「........分かりました。出来る限りのことはやってみます。」
そうして、ラクレスはワーフ王の願いを受け入れた。
「ありがとう。そうだ、ラクレスにはこれを託す。」
「これは?」
「スータの手紙だ。当時、精神が死ぬ前に私に渡した手紙だ。サンとムーンの分がある。」
「こんな大事なものを何で俺なんかに?王自ら渡せばいいじゃないですか?」
「私には無理だ........当時の皇太子として何もできなかった私に渡せるはずがない...........」
涙を流すワーフ王。その姿を見たラクレスは、手紙をしっかりと受け取った。
そして、ラクレス、リーネ、ロッド・ゲルマンの三人は一度用意された部屋に戻った。
「で、どうすんだ?何か考えでもあるのか?」
ロッド・ゲルマンがラクレスに言った。
「何もない。」ラクレスが素直に答えると、リーネとロッド・ゲルマンは呆れた顔をした。
「はぁ?なんで受け入れたのよ?」リーネが突っ込む。
「いや........でも、やらなきゃならない。まずはサンさんと話をしてみよう。」
「........ったく、仕方ないな。」二人も不満そうではあるが、ラクレスの提案に従った。
そうして、三人はサン・フォックの所へ向かうことにした。
エルダード・ワーフ王は、去っていくサン・フォックの背中を見つめながら呟いた。
そして、深く椅子に腰掛けたワーフ王にラクレスが少し躊躇いながらも尋ねた。
「何があったんですか?」
聞きづらい話題だと感じつつも、前に進むためには避けられないとラクレスは思い、質問を投げかけた。
しばしの沈黙の後、ワーフ王は口を開いた。
「...............分かった。そなた達には話すとしよう。彼の、いや彼らの過去について。」
王の言葉に促され、ラクレスたちは椅子に腰掛け、ワーフ王の話に耳を傾けた。
「あれは.....まだサンが小さかった頃だ。サンと私は学び舎の同級生でな、いつも遊んでいたんだ。私は王家の人間だったのもあって、中々絡んでくれる同級生はいなかった。しかし、サンは違った。彼だけは身分関係なく接してくれたんだ。そして、いつの頃からか私とサンは親友になっていた。お互いの悩みを打ち明け、弱い部分を見せあえる仲にまでなっていた。」
「この話のどこにサンさんが怒る部分があるのよ?」
リーネがぽつりと呟いた。
すると、
「いや、この後だ。サンの家は代々刀鍛冶をやっている家でな。当時から腕前はドワーフ1とまで言われていた。しかし、事件は起きた。あれはもう私たちがある程度大きくなっていた頃だ。国の宝12神竜剣の1つでもある『アジ・ダハーカ』が盗まれたんだ。国はすぐに捜索し、犯人を突き止めようとした。」
「まさか?」
「あぁ、フォック家が犯人に仕立て上げられた。」
「仕立て上げられた?」
「あぁ、国は何の取り調べもせずにフォック家を犯人にしたんだ。」
「そんな...........そのあとはどうなったんですか?」
「それなんだが...........」
エルダード・ワーフ王は少し口を詰まらせた。そして、次第に顔色も悪くなっていった。
「言いにくかったら言わなくても........」
ラクレスは気を遣う様に言った。
しかし、
「いや、大丈夫だ........そして、犯人に仕立て上げられたサンの父親、母親が公開処刑されたんだ........そして、その事件がきっかけで妻までも...........」
その言葉に部屋の空気が一瞬にして重くなった。
「そして、サンとまだ幼かった息子のムーンは国外に追放されたんだ...........」
「なぜ、奥さんは亡くなったんですか?」
ラクレスは戸惑いながらも、声を震わせて聞いた。
「それについてはだな...............いわゆる、欲って奴だよ。」
「欲?」
「あぁ、サンの妻スータ・フォックは国一番の美女でな........元々死刑だったサンとムーンを生きらせる代わりに当時の権力者たちに使い果たされたんだ。それで、精神が死んでしまってそのまま...........」
「........そんな......身代わりだなんて........」リーネは小さく呟いた。
「その後、真の犯人が見つかった。なんとそれは当時の大臣だったのだ。その大臣の父親も刀鍛冶をしていてな.....どんどん地位と名声を上げていくフォック家に対して嫉妬と恨みを抱いていた大臣が、計画的に剣を盗み、自分の罪をフォック家に擦り付けたんだ。」
「だからって、そんなこと...........」
「その大臣は当時の王、つまり私の父が全幅の信頼をおいていた人だったんだ........だから父もその大臣に事件の処理を任せてしまったんだ..........」
「...............」
三人の口数は次第に減っていった。
「その事件の全容が明らかになり、父が責任を取って退任し私が王になった。私はすぐにその大臣を粛正し改革した。そして、幾度かの話し合いの末にサンは戻ってきた、大きくなったムーンと共にな...........だから、サンの言っていること、思っていることも理解できる........すべては我らが王家の責任だ...........私がいくら罪の償いをしたところで、限界はある。だから、そなたたちにお願いをする。特にラクレス、君には特別な何かを感じる。君ならどうにかしてくれると..........だからお願いだ。サンを救ってくれ。スータの死を無駄にはしないでくれっ。」
ワーフ王の切実な願い。だが、ラクレスはすぐに答えることができなかった。
「...........あったばかりの俺たちが、そんな大役を果たせるのでしょうか?」
「そなたたちだからお願いしているんだ。サンがあんなに笑ったところを、声を荒げたところを久しぶりに見た。だから、お願いだ。どうか、彼を救ってくれ。これが、私にできる償いだ。」
「........分かりました。出来る限りのことはやってみます。」
そうして、ラクレスはワーフ王の願いを受け入れた。
「ありがとう。そうだ、ラクレスにはこれを託す。」
「これは?」
「スータの手紙だ。当時、精神が死ぬ前に私に渡した手紙だ。サンとムーンの分がある。」
「こんな大事なものを何で俺なんかに?王自ら渡せばいいじゃないですか?」
「私には無理だ........当時の皇太子として何もできなかった私に渡せるはずがない...........」
涙を流すワーフ王。その姿を見たラクレスは、手紙をしっかりと受け取った。
そして、ラクレス、リーネ、ロッド・ゲルマンの三人は一度用意された部屋に戻った。
「で、どうすんだ?何か考えでもあるのか?」
ロッド・ゲルマンがラクレスに言った。
「何もない。」ラクレスが素直に答えると、リーネとロッド・ゲルマンは呆れた顔をした。
「はぁ?なんで受け入れたのよ?」リーネが突っ込む。
「いや........でも、やらなきゃならない。まずはサンさんと話をしてみよう。」
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