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結婚式と初夜

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翌日の結婚式は盛大に行われた。

アレクは文句なしに格好良かった!
(……一人で見惚れてしまった…!!)

姉も王太子殿下と参列してくれ、両親はとても得意気な顔をしていた。

(……はぁ、疲れた)

結婚式後の披露宴でもひたすら微笑むアレクはずっと招待客と談笑していた。

一方私は精神的にも、肉体的にも限界を感じた頃にシリカが『御召しかえのお時間です』と迎えに来てくれた。

(……ありがとう!シリカ!)  

窮屈な衣装を脱ぐと湯船に浸かりのんびりと初夜の準備を始めた。

(……今日からアレクの妻に…!)

嬉しくて。
恥ずかしくて……。

湯船の中で一人悶える私。

背中の傷はまだ残っている。

けど、アレクなら受け入れてくれるはず……。

私は期待に胸を膨らませ、シリカが用意した夜着に着替え、初めて夫婦の寝室に足を踏み入れた。

30分程待っただろうか?

湯浴みを済ませ、夜着に着替えたアレクが部屋を訪れた。

私は緊張しすぎてアレクの顔を見ることが出来なかった。

「……待たせたね、リリアナ。少し話をしたいのだけれどいいかな?」

私はゆっくりと頷いた。

「……リリアナ。今日から君は私の書類上の妻になった。だから、世間的には良い夫婦を演じたいと思っているよ。君を妻にしたのは命の恩人の頼みだったからね……」

「……はぁ」

正直、あの事件の書類に我が公爵家との間でどんな話になったか聞いていなかった。今のアレクの話から推測するに、アレクを庇って傷モノになった私が両親に泣きついてアレクの婚約者になったーーと言うことなのだろう。

「……それに、私には愛する女性がいる。ベッドを共にしたいのはその女性だけなんだ。済まない」

「……は?」

ーーそれは、愛人がいます。白い結婚でお願いします、と言うこと?

「……済まない」

「……つまりは、愛人がいて、身体の関係も既にあり私はお飾りのお情け妻になる、と?」

「……そうなるな。が、愛人ではない。愛する人だ」

「……なぜ今頃その話を?」

「ミリアーヌから、可哀想な妹の面倒を見てほしいと言われたからね」

ーー姉に言われたから?
ーー可哀想な妹?

私はだんだんと腹が立ってきた。

「子供はどうするのですか?その愛する人が産むのですか?」

「いや、それはないよ。愛する人には婚約者がいるし、結ばれることはないからね。養子でも探すつもりだから安心して」

……養子?
……安心?

意味が全然分からなかった。

分かったのは、私はここでも無価値で必要とされていない人間であることだけだった。

(……何で結婚しちゃったんだろう?)

涙すら流れなかった。

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