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強引にアンドレア様に公爵家に連れ戻されたその晩。元自室に戻ると、荷物を置いてきたことに気がついた。

(……今頃気がつくなんて。仕方ない。ナタリーにお願いして寝間着だけでも用意してもらわなくては)

そう思い、自室を出るとアンドレア様が待ち構えていた。

「!!……アンドレア様」

「……驚かせてすまない。ローザの部屋はここだとマルクスに聞いて……」

「……はぁ。何のご用でしょうか」

遠回しに、早く帰れと伝える。

「……それより、何か用事があったのではないか」

「……ええ。急に引き上げてきたため、その…。荷物を置いてきたしまい、寝間着もなくて……。ナタリーに準備してもらおうかと……」

「……そもそもこの部屋は客人用で公爵夫人の部屋ではない。部屋を移らないか?」

「……」

まだ公爵家では、夫人の扱いですらない。

が、これで夫婦の営みでもして子供でもできたら、今度は子供が狙われるのではないか?そんな気がしてならなかった。

アンドレア様は私のことを愛している、と言う。
全く実感はない。

愛人との情事を見せつけられ、命を狙われ……。
本当にこの人と夫婦でいる必要があるのかすら疑問だった。

だから私はその場を無言で立ち去った。
それが答えなのだから。

が、またしてもアンドレア様はどうしてこうも短絡的で、自分勝手なんだろうか。

いきなり腕を捕まれたかと思うと、アンドレア様の部屋に連れ込まれた。

「……ローザ、初夜のやり直しをしよう」

「……アンドレア様。私は白い結婚を願います。どうしてもアンドレア様がそれをよしとしないのであれば、仕方ありません。私の命と引き換えだと思って下さい……」

「……何でそんなことを言うんだ!私が君を守る……!」

「……その言葉には全く説得力がありませんよ、アンドレア様?」

それでもいいのですか?と聞くと同時に私はベッドに押し倒され。

強引に衣服を剥ぎ取られ、まるで犯されるみたいな形で初夜が終わった。涙も出なかった。

体の痛みと、心の痛みと。
何て残酷な現実なんだろう。

(……ああ、これで白い結婚ですらなくなってしまった……!)

アンドレア様は一方的に何度も何度も私を求めた。でも、私は何も感じなかった……。

目を閉じればいつまでも焼きついて離れないアンドレア様とリーゼロッテ様の営み。

心が壊れそうだった。

朝起きたらアンドレア様はもういなかった。
ベッドからよろよろと起き上がり、身を清めようとベッドから降りると、全く足に力が入らずもたついで前のめりに転んでしまった。

周囲には脱ぎ散らかされた私の洋服……。
洋服を手にすると、何故だか涙が止まらなかった。

◇◇◇
そして、やはり現実は残酷で。

殿下に用意してもらった新居は引き揚げることになり、使用人たちもそれまでとなった。
殿下の息がかかった人たちは信用できないらしい。

私はアンドレア様にどうか公爵家でラブリーナの製品化をしたい旨を訴え、ようやく許可が出たものの、公爵家が営む商会から人が派遣され、その人物と取り組むことになった。

何とかラブリーナを早く製品化したいーーー。
その思いだけで毎日を生きる。

夜になると、アンドレア様が毎日私を抱いた。
初夜からあんなに乱暴だったのだ。
愛情がどこにあるのか良くわからないが、もうされるがままにしていた。

きっと、リーゼロッテ様が妊娠中ということもあるのだろう。

でも、毎日リーゼロッテ様の香りをまとって帰宅してくるアンドレア様に嫌悪感しか抱けなかった。

公爵家から出ることも許されない私は、ラブリーナのことだけに心血をそそいだ。

そんな毎日に、私はどんどん疲弊していった。

そんな時、リーゼロッテ様が第一子である女の子を出産された。

金髪碧眼の夫に良く似た女児だった。
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