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ローゼ様、お客様です、と言われ出ていくと、そこには久しぶりに会う夫・アンドレア様がいた。

「……探さないでと書いたはずです……」

「……すまなかった。が、ここにいたら命が危ない。屋敷に戻ろう。話はそれからだ」

アンドレア様に強引に腕を捕まれ、馬車に押し込まれ公爵家に連れて行かれた。

「……あんまりです、アンドレア様……」

単なるお飾り妻のはずが、王太子妃に睨まれ命まで狙われる。一体私が何をしたのだろうか?

「……今すぐ離婚して下さい!」

「……それは無理だ。離婚はしないっ!」

「……なら、なんで結婚したんですかっ!分かるように説明して下さいっ!」

私の剣幕に押され、アンドレア様が渋々話始めた。

「………つまり、昔から私のことを慕って下さっていて求婚した、ということですか?」

信じられなかった。
あんなに女性と浮き名を流していたアンドレア様が?ただ、夫の表情からは嘘とは思えなかった。

「……そうだ。それすらも告けずに……すまなかった。何せ焦っていたんだ。殿下がローゼとの婚約を認めない、と言い出して……」

「……それで、殿下とあんな契約を……?」

何て愚かなんだろう。

あんなにアンドレア様に執着しているリーゼロッテ様が私を解放するはずがないし、ましてやアンドレア様を手放すはずかない。

(……私は近い将来、消されてしまいそうね)

私は契約である二人の子供が産まれたら人質としては無価値だからーーー。

(はぁ……。お飾り妻にされたかと思ったら、愛人に嫉妬されて殺される運命なんて……)

ちっとも愛してもいないアンドレア様のために、私は命すら差し出さなければならないのね……。
切なすぎる……!!!
裏切らないのは、ラブリーナだけだわ……!

(これが、本当に愛した人ならまだしも……ねぇ)

もはやため息しか出ない。
余命あと三年?
いやいや、あのリーゼロッテ様のことだ。
何度も刺客を遣わすだろう。
長くて三年かあ……。

せめてラブリーナの製品化を見届けたい。
今はそれだけだった。

「……アンドレア様。私は長くて余命三年……でしょうかねぇ……」

「……!!何を言い出すんだ、ローゼ!」

「……リーゼロッテ様があと一人、お子様を産まれたら、私と言う人質は王家からしたら不要では?実際、リーゼロッテ様は、執拗に私を狙っていますし……。はぁ……切なすぎます……」

殿下はリーゼロッテ様の味方だ。隣国の王女でもあるリーゼロッテ様を蔑ろには出来ない。

(……子供が産まれたら、更にアンドレア様を独占するんだろうなあ。まあ、構わないけど……。でも、本当に無関係な私を巻き込むのはやめて欲しい)

離婚も出来ない。
自活も打ちきり。
もはや、公爵家で生き地獄?

そして、その日の夜にまたとんでもないことになるなんてその時は知るよしもなかった。

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